(※写真はイメージです/PIXTA)

NPO法人東京乾癬の会P-PAT(以下P-PAT)は全国各地にある乾癬患者会の一つで、東京を中心に活動を行っています。膿疱性乾癬の患者さんを対象にした勉強会を定期的に開催するなどその活動内容や今後の展望について、理事長の添川雅之さんにお話を伺いました。

P-PATの活動目的と設立までの経緯

―P-PATの活動目的を教えてください

乾癬の正しい知識を発信することと、乾癬患者さんにコミュニケーションの場を提供することを目的に活動しています。主な活動内容は、乾癬を正しく学ぶためのイベントや交流会を開催しているほか、SNSを活用した患者同士が情報交換できる場の提供、また、社会に対する認知度向上に向けた啓発活動です。

 

インターネット上には誤った情報が掲載されていることもあるため、我々が情報発信することで、乾癬の情報を必要とする人に正しい知識を届けたいと思っています。

 

また、患者数が少ないことや乾癬の社会的な認知度が低いことから、患者は孤独になりがちです。乾癬患者さんが孤独に悩む状況を少しでも解消したいという想いから、患者同士の交流の場を提供しています。

 

NPO法人東京乾癬の会P-PAT理事長の添川雅之さん
NPO法人東京乾癬の会P-PAT理事長の添川雅之さん

 

―P-PATはいつ生まれ、またどのような人が参加しているのでしょうか

当会は2002年5月に設立しました。はじめは有志の団体でしたが、2010年にNPO法人格を取得し、より活動の幅を広げています。

 

乾癬患者さんはもちろん、その家族や友人など、サポートする立場の方もご参加いただいています。また、日本乾癬学会に所属している乾癬を専門としている先生方を中心に、相談医として協力いただいている医師が11名います。イベントでは医師と参加者とが直接話すことができる機会を設けています。

 

『先生と患者さんとの距離がこんなに近い患者会は珍しいですね』と言われるほど、近い距離で医療者の支援を受けられていることも当会の特徴です。

P-PATの具体的な活動内容とは

―まずは具体的な活動内容について教えてください

イベントや交流会、会報誌の発行やSNSでの活動の発信などを行っています。イベントとしては、『乾癬フォーラム』、『ウィメンズセミナー』、『乾癬ハート』、そして『乾癬性関節炎・膿疱性乾癬患者の集い』の4種類を開催しています。

 

また、現在は控えていますが、新型コロナウイルスの感染拡大前は、定期的にバーベキューや食事会など、参加者同士でざっくばらんに話せる交流会も開催していました。

 

―『乾癬性関節炎・膿疱性乾癬患者の集い』について詳しく教えてください

乾癬性関節炎・膿疱性乾癬の方を対象に、半日から1日かけて開催する勉強会で年に1度開催しています。

 

50~60万人ほどいる乾癬患者のなかで、乾癬性関節炎の方は約15%、膿疱性乾癬の方は1%程度しかいないといわれています。

 

そのため、通常の乾癬の勉強会などでは、乾癬性関節炎・膿疱性乾癬まで話がおよばず、これらの患者さんにとっては物足りないところもあります。そこで、乾癬性関節炎・膿疱性乾癬に特化した勉強会を開催すべきと考え、この集いを毎年1回開催することにしました。  

 

このイベントでは、参加者がお互いに意見交換ができるよう、グループディスカッションなどを実施し、知識の向上だけでなく同じ病気を抱えるもの同士のつながりも大切にしています。

 

『乾癬性関節炎・膿疱性乾癬患者の集い』の様子
『乾癬性関節炎・膿疱性乾癬患者の集い』の様子

 

―次に『乾癬フォーラム』とはどのようなイベントですか?

医師の講演に加えて、患者体験談やトークセッションを実施しています。また、医師が参加者からの質問に答える『乾癬Q&A』というセッションも設けています。

 

イベント終了後は、医師に直接悩みを相談できる『個別相談会』を開催しています。通常、なかなか会うことができない専門の医師と直接話すことができるため、参加者にとって非常に貴重な機会と好評です。また、セカンドオピニオンとして活用できるのもメリットです。

 

コロナ禍以降はオンラインと現地のハイブリッドで開催し、都内だけでなく全国各地からもたくさんの人にご参加いただいています。

 

『乾癬フォーラム』内『個別相談会』の様子
『乾癬フォーラム』内『個別相談会』の様子

 

―その他のセミナーのタイトルも興味深いですね。

はい、『ウィメンズセミナー』は、男性の前では話しづらい女性特有の悩みを、女性だけが集まって相談できる会です。

 

見た目の問題だけでなく、結婚、妊娠、出産など、女性の乾癬患者さんの悩みは多岐に渡ります。女性の医師にも参加してもらい、女性同士で自由に話ができる場として活用されています。

 

また、乾癬は見た目にもわかる病気だということもあり精神的に落ち込む患者さんが多くいます。そのため、メンタル面をサポートしたいという想いで、メンタルケアを中心とした『乾癬ハート』という少人数のイベントもスタートしました。

 

なかには、皮膚科医でありながら臨床心理士の資格も持っている先生がいるため、『乾癬ハート』ではそのような医師の協力も仰いでいます。治療内容の相談はもちろん、デリケートになりがちな精神的な問題をプライバシーが守られた状態で相談できる場所です。

P-PATが大切にしていること、目指したい未来

―P-PATが大切にしている想いや考えを教えてください

皆さんとの心の触れ合いを大切にしたいと思っています。乾癬の正しい知識を持つことは重要ですが、こちらからの一方的な説明では、受け手がなにを感じたかまでは把握できません。疑問に思ったことや、自分のことを聞いてもらいたいという気持ちがあるかもしれません。

 

そのため、我々は患者同士の交流の場として、バーベキューや飲み会などのレクリエーションイベントも大切に考えています。我々患者は、実生活のなかで、病気のことを吐き出せる場がなかなかありません。

 

自分と同じ病気の人たちと話すことで、はじめて「ひとりじゃなかったんだ」と孤独感から解放されるのではないかと思うのです。心を許し合って話せる場所を、これからも提供していきたいと考えています。

 

また、交流会には自分が使用している薬の効果や副作用についてあまり知識を持っていない方が参加することもあります。当会には薬や治療について詳しいメンバーもいますので、そのような人と話すことで、「自分も真剣に病気と向き合わなくては」と思ってもらえるのも、交流会の良さだと思います。

 

―P-PATの今後の展望を教えてください

患者会に参加した人からは、「行ってみたら楽しかった」という声を多数いただいています。我々は単なる病気についての知識を得る場というだけでなく、これからも面白さや楽しさも大切にしていきたいと思います。そうすることでより多くの方とつながり、乾癬を持つもの同士の輪が広がっていくことを願っています。

 

また、当事者以外にも乾癬が広く認知されるように、啓蒙活動にも力を入れて行く予定です。病気のことを周りに言えず、苦しい思いをしている乾癬患者さんは多くいます。周囲の理解が少しでも得られれば、精神的に随分と楽になるはずです。

 

乾癬患者さんを取り巻く問題は、数多く存在します。たとえば、医療環境格差の問題です。

 

都心とは違い、地方では治療の選択肢が少ないケースが散見されます。このような問題に対して、当会がどのように貢献できるかを考えながら活動していきたいです。

 

「患者さんが幸せになる」という目的を達成するために、医療者など関係者とお互いに協力しながら乾癬患者さんを取り巻く諸問題を少しでも解決していけるよう、これからも精一杯取り組んでいくつもりです。