乾癬ってどんな病気?1)
乾癬とは、私たちの体を守る免疫システムが過剰に活性化することで引き起こされる慢性的な⽪膚の病気です。乾癬の原因は今のところ明確になっていません。
乾癬の代表的な症状は免疫システムの過剰活性による⽪膚の炎症症状(⽪疹)で、症状の現れかたによっていくつかの種類にわけられますが、患者さん個々によって症状に違いがあり、関節の痛みや発熱‧倦怠感といった全⾝症状がみられることもあります。
ここでは、乾癬患者さんの数や症状、原因、種類、診断などについてご紹介します。
患者数や性差、発症年齢は?
乾癬は世界的に存在する病気ですが、乾癬患者さんの数は国や地域、⼈種によって差があります。欧⽶⽩⾊⼈種では⼈⼝の約2〜3%、アフリカの黒⼈やアジア⼈では低く2)、⽇本では⼈⼝の約0.3〜0.4%、約43万〜56万⼈と推計されています3)4)。
日本における男⼥⽐では男性の⽅がやや多く、患者さんの約65%が男性です5)。乾癬はあらゆる年代に発症しますが、男性では30代、60代、⼥性では20代に発症のピークがあります6)。
どのような症状がどこに現れる?
乾癬の典型的な症状としては、⽪膚が赤くなる「紅斑(こうはん)」、⽪膚が盛り上がる「浸潤‧肥厚(しんじゅん‧ひこう)」、その表⾯を覆う銀⽩⾊の細かいかさぶた「鱗屑(りんせつ)」、鱗屑がボロボロと剥がれ落ちる「落屑(らくせつ)」があります7)。
⽪疹の見た目や現れる場所は⼈によってさまざまですが、頭⽪や髪の⽣え際、背中、ひじ、ひざ、腰回り、臀裂部(お尻の割れ目)など、⾐類と擦れたり、⽐較的外からの刺激を受けやすい部位に症状が出やすいという傾向があります8)。
かゆみの程度には個⼈差があり、乾癬患者さんの約半数の⽅でかゆみを伴うといわれています5)。また、2〜4割の患者さんでは⽪膚症状だけでなく⽖にも症状が現れます9)。
乾癬患者さんの⽪膚では何が起きている?
⽪膚の⼀番外側の層は表⽪と呼ばれ、この表⽪の⼀番奥の層では新しい⽪膚の細胞が作られ続けています。古い細胞は新しい細胞によって⽪膚表⾯に押し出され、最終的に垢となって剥がれ落ちていきます。この⽪膚の⽣まれ変わりのサイクルを「ターンオーバー」と呼び、通常は約45⽇で繰り返されます。しかし、乾癬患者さんの⽪膚では、このターンオーバーが4〜7⽇と極端に短くなっているので、⽪膚の細胞が異常に増えて積み重なり、最終的にボロボロと剥がれ落ちてしまうのです10)。
原因は?
乾癬の発症原因は今のところ明確になっていませんが、遺伝的素因と環境因⼦の相互作⽤により、からだの免疫システムに異常が⽣じることで発症すると考えられています。免疫システムとは本来、細菌やウイルスなど異物の侵⼊を防ぐ重要なシステムですが、なんらかの原因により異常が起きると異物がないのに活性化してしまい、その結果として炎症が起きてしまいます1)。
遺伝的素因とは乾癬を発症しやすい体質のことをいい、環境因子としては感染症、薬剤の使⽤、気候、精神的ストレス、睡眠不⾜‧⾷事などの外的な因⼦と、糖尿病や脂質異常症、肥満などの内的な因⼦などがあります。この遺伝的素因に環境因子が加わることで乾癬が発症‧悪化すると考えられています1)。
乾癬の発症‧悪化要因
外的な因子
●感染症
⾵邪や扁桃炎などの感染症が原因で発症したり、乾癬の症状が悪化することがあります。なかでも溶連菌という細菌の感染症の後に滴状乾癬を発症することが多いです11)。
●薬剤の使⽤
乾癬の治療薬以外の薬の使⽤をきっかけに、乾癬を発症したり、乾癬の症状が悪化することがあります12)。
●気候
紫外線を浴びると症状が改善しやすく、肌が乾燥すると悪化しやすくなるといわれています。そのため、紫外線が多く⽇が⻑い夏は症状が改善する傾向にあり、⽇が短く空気が乾燥する冬には悪化しやすい傾向があります1)12)。
●精神的ストレス13)
精神的なストレスは乾癬を悪化させる原因です。かゆみなどの⽪膚症状もストレスになり、乾癬の症状がさらに悪化することもあります。
●睡眠不⾜
睡眠不⾜などの不規則な⽣活習慣は乾癬に⼤きく関わっていると考えられています。
●⾷事
⾁類や脂肪分の多い⾼カロリーの⾷事は、乾癬を悪化させる原因となります。また、アルコールや⾹⾟料の強い⾷事も、かゆみが起きて症状が悪化することがあります12)14)。
内的な因子
●糖尿病、脂質異常症、肥満
乾癬の発症は糖尿病、脂質異常症、肥満と関係するといわれています15)。
これらの病気が悪化すると乾癬の症状も悪化する可能性があります16)。
最近の研究から、乾癬患者さんの免疫システムの異常に「炎症性サイトカイン」という物質が重要な役割を果たしていることがわかってきました。サイトカインとは、細胞間の情報伝達を担う物質で、そのなかでも炎症を引き起こすものを炎症性サイトカインといいます。炎症性サイトカインにはいくつかの種類があり、TNF-α、IL-17、IL-23、IL-36などのサイトカインが乾癬の発症に関わっていると考えられています。
乾癬患者さんの⽪膚に集まった樹状細胞やT細胞などの免疫細胞からこれらの炎症性サイトカインが過剰に⽣み出され、表⽪細胞に作⽤することで、表⽪が異常に増殖し厚く積み重なっています。そしてこの厚く積み重なった表⽪が、鱗屑となって剥がれ落ちていきます。
また、この過剰に⽣み出された炎症性サイトカインが新たな⾎管の形成にかかわることで、⽪膚が⾚くなる紅斑が起きると考えられています1)。乾癬患者さんにみられる関節の痛みも、この炎症性サイトカインによって、関節の破壊や変形などが起こることによります。