皮膚だけではない…「GPP(膿疱性乾癬)」の症状は全身に
Q.GPPの症状は、尋常性乾癬(もっとも一般的な乾癬)とどう違うのでしょうか。
尋常性乾癬は、身体のいたるところに鱗屑(皮が剥けてカサカサした状態)が広がるという特徴があります。一方、GPPは全身に広がる膿疱(膿をもった水ぶくれ)に加え、発熱、関節痛などの全身症状が急に現れることが特徴です。
GPPの発症にはもともと尋常性乾癬をもっていてその症状が移行するパターンと、尋常性乾癬の既往がなく急に症状が現れるパターンの大きく分けて2つのパターンがあります。
いずれのパターンも原因は明らかではありませんが、当院の経験ですと、尋常性乾癬から移行する方のなかには尋常性乾癬の治療が不適切または過剰であったり、日光に当たりすぎたことなどの外部要因が原因と考えられる方もいました。
尋常性乾癬の既往がなくGPPを発症した方は、原因がわからないこともあり、急な発熱や全身に広がる膿疱に驚かれてしまう方も多いと思います。
Q.患者さんが悩まれる具体的な症状にはどういったものがありますか。
GPPの急性症状の種類や程度には幅がありますが、訴えが多いのはやはり皮膚症状です。皮膚の赤みや膿疱だけでなく、かゆみや痛みに悩まれる方が多いですね。また、関節痛や発熱に伴う身体の消耗も患者さん苦しめてしまう要因となります。
それから、GPPは似たような症状を呈する別の疾患との鑑別が難しく、診断まで時間がかかってしまう場合があります。そうした場合、確定診断までは対症療法で様子をみることとなり、患者さんの精神的なストレスとなってしまうこともあります。
そのような心身の負担を軽減するためにも、GPP の診療実績のある皮膚科専門医による早期診断・早期治療が大切になってきます。
もしかしてGPPかも…と思ったら「大きい病院の皮膚科」へ
Q.GPPのような症状が出てきてしまった場合、どの病院、診療科を受診すればいいのでしょうか。
大きい病院の皮膚科を受診していただくのがいちばんの近道です。
ただ、新型コロナウイルスなどの感染症の流行が終息していない状況では、発熱があると皮膚科を受診できない場合があります。そのような場合では、診療科が多くそろっている病院で受診していただければいいと思います。
実際のところ、救急外来や内科を受診後に、院内や近隣の皮膚科に紹介され、さらに比較的大きい病院に紹介となるケースも多くあります。早期から治療を開始できるよう、市民病院や大学病院など、大きい病院を受診するといいと思います。
Q.初診時に患者さんから医師に伝えたほうがいいことはありますか。
先ほどお話ししたように、GPP診療においては鑑別診断が重要です。似たような症状を呈する疾患の可能性を排除するため、
・ご本人や血縁者の尋常性乾癬の罹患歴(ある場合は発症年齢や治療内容)
・別の病気で治療中の場合は治療内容
・直近で風邪やなんらかの感染症にかかったかどうか
・関節に痛みがあるかどうか
・高血圧や糖尿病の治療中であるか
・女性の場合は現在妊娠をしているか
などの情報は重要です。些細なことでも遠慮せずお伝えいただければと思います。
Q.GPP診療を円滑に行ううえで大切にしていることはなんでしょうか?
GPP診療においては、できるだけ早い段階で診断・治療が可能な施設にご紹介いただくことが重要となります。そのため地域クリニックや市中病院の先生方との連携に注力しています。
コロナ禍の現在、直接お会いするのはなかなか難しいものの、web面談の形で連携をとるようにしており、
実際に顔がみえる関係になると、ざっくばらんに相談していただくことが増えてきました。今後もこのようにご相談いただけるような体制作りを心がけていきたいと思っています。
Q.GPP患者さんにメッセージをお願いします。
GPPは心身の負担が大きい疾患であり、重症化を防ぐためにも早期診断、早期治療が重要です。私もGPP診療に携わる医療者として、可能な限り早くに診断し、患者さんに合った治療を行うことを心がけています。
以前はなかなかコントロールが難しかったGPPも、最近では治療選択肢も増え、ほとんどの方が安定してコントロールできるようになってきています。
皮膚の赤み、膿疱、関節痛、発熱といったGPPが疑われる症状が当てはまる方は、ぜひ1度、大きな病院の皮膚科専門医にご相談いただければと思います。