痛くて寝返りも打てない…膿疱性乾癬(GPP)患者さんの声
Q1.膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)を発症された経緯について教えてください。
わたしが乾癬を発症したのは、14歳のときでした。最初は肩に小さい直径1cmほどの皮疹が1個ぽつんとあるだけで、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)と言われたのですが、大変な病気だという意識はまったくなかったです。
大学生だった22歳のときに症状が全身に広がって、当時はいまほど治療の選択肢もなかったのでなかなかよくならず、28歳のときに「膿疱性乾癬」と診断されました。
Q2.診断されたときの状況を詳しく教えてください。
当時かかっていた病院でさまざまな治療を施していましたが、なかなか満足のいく回復がみられず、徐々に皮疹が膿疱化して、倦怠感とか、あるいは発熱の症状が出始めました。
それで、まだやったことのなかった治療を行うためにやむを得ず病院を転院して、それまでやっていた治療から切り替えたところ、大変な状態になってしまいました。
入院して病院のベッドに寝たままの状態で、痛くて寝返りも打てないんです。それに加えて全身の関節痛もあって、入院中のうち数ヵ月間はほぼ寝たきりの状態でした。
皮疹の症状だけでなく、高熱、吐き気、それから震えなどにも襲われた状態で、本当につらかったです。
Q3.その後、生活はどのように変わりましたか。
1年間の入院ののち、全身のどこにも症状のない状態になりました。
そのときに、「たとえどんなにひどい乾癬でもよくなる可能性があるんだ」と、生きる喜びや将来の希望を取り戻したような気持ちになったことを、いまでもよく覚えています。
この気持ちを、現在症状に悩んでいる多くの患者さんに伝えたい――
その想いが、現在わたしが患者会に携わる原点になっています。
当時とは違い、いまは治療も進化しています。きちんと治療を続けることで安定した状態を保つことができるかもしれません。
膿疱性乾癬は「再燃」も少なくない
ただ膿疱性乾癬は、いったん症状がおさまっても繰り返しあらわれることも多いようで、わたしも実際に再燃を経験しました。
尋常性乾癬とは違い炎症が強くて、急に高熱が出るなど、全身にさまざまな症状があらわれます。わたしの場合は、風邪をひいたときに乾癬の症状がぶり返したこともあったので、そのあたりに注意しつつ、いまはこの病気とうまく付き合いながら生活しています。
ギターやピアノを弾いたり、バイクでツーリングに行ったりするのが好きなんですが、いまでも日常的に倦怠感があったり、関節が痛くなったりすることがあるので、体調と相談しながら楽しんでいます。
Q4.治療中に経験したことやお考えになっていたことを教えてください。
からだに皮疹があることを人に知られるのは非常に嫌なもので、顔や手など人目につくところに出た場合は、ほんとうに見られたくないという気持ちで、真夏でも長袖長ズボンで隠すようにして歩きました。
周囲からの言葉に傷ついたことも、何度かあります。タクシーに乗った瞬間に、運転手さんからいきなり「なんだお前、皮膚病か。乗車拒否できないから乗せてやるけど、できれば皮膚病患者は乗せたくないんだ」と言われたときは、若かったこともありまして、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。
「乾癬は決して人にうつらない」が、誤解も多い
乾癬は決して人にうつる病気ではないですが、そこを誤解している人も多くいます。病気についてもっと正しい理解が広がることが大切だと思っています。
それから、治療のために7年近いあいだ入退院を繰り返す生活が続いたことで、結局そのあいだ4年半くらいは会社を休んだのですが、仕事や人生に大きな遅れが出たと感じました。
全身から症状がなくなったときは、やっと社会に戻れると意気揚々としましたが、待っていたのは厳しい現実でした。
久しぶりに友人に会うと、みんな20代のころとはまるで変わっていて、仕事で肩書がついていた、結婚した、家を買ったなど、自分とはまるで違うステージに立っていることが、非常にコンプレックスになりました。
自分はなにをやっているんだ、自分の存在意義はなんだろうと考え込んでしまい、いわゆる抑うつ状態になってしまったこともありました。
つらい状況を悲しむより“いまを楽しむ”
でも、そのときに「いまがもしどん底なら上がるしかない」と思ったら開き直れたんですね。仕事も納得のいくようになり、成功体験が大きな自信につながりました。
たとえどんなに打ちのめされても未来がある、想いをもって挑むかどうかで結果は変わるんだと実感しました。
Q5.膿疱性乾癬の患者さんへメッセージをお願いします。
つらい状況を悲しむよりも、いまできることを楽しもうと伝えたいですね。わたしもつらいこともたくさんありましたが、この病気になって悪いことばかりではなかったと思っています。
自分が病気でつらい思いをしたことで、少しは人の気持ちを考えたり、人に優しくなれた気がします。自分の体験を生かして少しでも社会に貢献できればと思い、東京の乾癬の患者会などでほかの患者仲間と活動をしています。
そしてなによりも、悲しみも喜びも分かち合えるような患者仲間や、心ある医療者の人たちと出会うことができたのは、わたしにとって人生の宝といっても過言ではないと思っています。
この10年くらいで、乾癬の新しい治療薬が次々と出てきたことで、膿疱性乾癬の患者さんをとりまく環境はよくなってきました。それでも、まだ安定的に症状を抑えられなかったり、満足しきれない状況もあるかと思います。
でも、たとえ乾癬を抱えていても、みんな幸せに生きる権利があると思います。決して諦めず、主治医の先生と一緒にご自身に合った治療法を見つけて、少しでも人生を楽しんでほしいと思います。