意外と多い「ゴルフ中の突然死」
医学博士の吉原紳氏が、1994年に近畿地方131ヵ所のゴルフ場で実施したアンケート調査によると、ゴルフ場では1年間に5件の死亡事故があったそうです。これにより、ゴルフのプレー中に起こる突然死は、全国で年間76件になるであろうと推測されています。
また、東京都監察医務院の2002年の統計では、日本で起きた534例のスポーツ中の突然死について、ランニングが118件と最も多く、次いで水泳66件、野球42件、ゴルフ40件となっており、激しい運動を伴わないはずのゴルフであっても、他のスポーツと同じように突然死が起こっているということが浮き彫りになりました。
激しい動きのイメージはないが…ゴルフ中の突然死が発生する理由
ついさっきまで、元気だったのに……激しい動きのないゴルフで「突然死」が起きるのはなぜなのでしょうか。
まずひとつめの理由として考えられるのが、ゴルフをプレーする人の年齢層です。
ゴルフ人口の年齢で最も多いのは60〜70代(50%)となっています。ゴルフは安全なスポーツとして若い人から高齢者まで普及しており、その結果中高年のプレーヤーも多くなっています。
高齢になればなるほど心臓に異常のある人は増え、また心筋梗塞のリスクとなる生活習慣病(糖尿病高血圧脂質異常症肥満)を持つ人も多くなります。そのため激しい運動やコンタクトを伴わなくても突然死が起こりやすいのです。
そして、突然死の原因となる心筋梗塞は起床後2~3時間ほどの間に起こることが多いと言われています。ゴルフは、早朝にスタートすることがほとんどです。つまり発症しやすい時間帯とプレーがちょうど重なっているのです。
さらに、ずっと激しい運動をしているわけではありませんが、ショットの際は瞬間的に全身の力を振り絞ることになります。この時、ほんの僅かな時間ですが、心拍数や血圧は急上昇します。
ショットのたびに心拍数と血圧が乱高下することになるので、心臓や血管に大きな負担をかけることになるのです。
他のスポーツは運動中心拍数が早いものの、大きくアップダウンすることはありません。一方ゴルフでは、平均の心拍数は低いものの心拍数のアップダウンが激しく、実はそれなりに心臓に負担があることがわかっています。
そして、ショットのたびに体力を使い、その後グリーンに上がり、高度な集中力を必要とするパットで緊張感が高まり、息を止めて集中するというような状況で、ストレスや酸素欠乏の状態も引き起こされます。
このほか、ゴルフ中は汗をかき、水分摂取を怠りがちです。加えて、お昼どきにはクラブハウスでお酒を楽しみ、アルコールの利尿作用も相まって血液粘調度が上昇……心筋梗塞や脳卒中のリスクが一気に高まる。危険なフラグがいっぱいです。
この様な背景があり、ゴルフでは最初のショットのタイミングや、グリーン上での突然死が発生しているのです。