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クーデター騒動が示唆するプーチン政権の弱体化
2023年6月23日、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループがウクライナ侵攻に関してプーチン政権および正規軍を批判し、武装蜂起しました。翌24日には政権中枢のあるモスクワへ向け進軍したものの、25日にベラルーシ大統領のルカシェンコ氏の取りなしで進軍停止に合意。ワグネルの創設者のプリコジン氏はベラルーシへ亡命したとみられています。
収束までの期間だけを見れば小さな騒動にも思えてしまいますが、実際にはこの反乱は世界情勢を考えるうえで大きな意味を持ちます。なぜならこれは、誰もが認めるロシアの最高権力者であるプーチン大統領の影響力がゆらぎつつあることを示しているからです。
プーチン大統領は、2000年から現在まで、2期通算で約20年もの長きに渡り大統領(途中、2008年から2012年までの首相)を務めました。この期間中、アメリカの大統領はビル・クリントン、ジョージ・ブッシュ、バラク・オバマ、ドナルド・トランプ、ジョー・バイデンと5人が交代していることを考えると、プーチン政権がどれほど強大な権力を持ってきたかが想像できます。その権力のほころびを示唆した今回の騒動。世界経済にはどのような影響を与えるのでしょうか?
短期視点:エネルギー価格高・ルーブル安・軍需産業株安
短期的な変化としては、エネルギー価格の混乱です。実際に、ベンチマークとされるブレント原油およびウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)は即座に反応。1バレルあたりの価格はブレント原油が0.5%上昇し74.18ドルに、WTIも0.3%上昇し69.37ドルとなりました。各国の備蓄が進んだことで安定しつつあったエネルギー価格ですが、乱高下する要因が再投下された格好です。
また、ロシアの法定通貨ルーブルの価格も一時1ドル87ルーブルまで下落し、ウクライナ侵攻開始直後以来15ヶ月ぶりの安値を記録しました。
欧米の軍需産業株の下落も目立ちました。これは、プーチン政権の目が内政統治に向くことで、ウクライナ紛争が中断または終息するのではと考えた投資家の判断によるものと思われます。軍需産業は、ウクライナへの支援(兵器提供)による特需で潤っており、紛争が早く終息するとその需要がなくなってしまうためです。
長期視点:紛争終結・一部物品の価格安定・周辺国経済の活性化
より長い目線で考えると、期待されるのは紛争の終結です。先述の通り、プーチン政権の影響力は低下しており、国民を納得させながら戦線を維持し続ける期間には限界があります。プーチン大統領の選択肢はもはや少なく、ほぼ2択に絞られています。敗色が濃厚になる前に一方的な”勝利宣言”をして侵攻を自らやめるか(最低限の体面を取り繕うには、なるべく早くこの選択をするのがいいでしょう)、紛争を停止したい勢力から選挙やクーデターによって大統領の座から引きずり降ろされるかです。いずれにせよ、紛争は終結へと向かいます。
※もう1つ、核使用により戦局を一変させようとすることも考えられますが、その後の処理を考えれば現政権にとっても利は少なく、実行される可能性は低いでしょう。
ウクライナ紛争の終結による世界経済への影響として考えられるのが、物品価格が安定へと向かうことです。原油やガスなどのエネルギーはもちろん、小麦や海産物などの食品、セメントや木材などの建築資材、希少鉱物などの工業材料など、ロシアおよびウクライナが主要な輸出国を占める物品は、価格が安定します。実際の供給が安定するまでには時間を要する物品もありますが、価格は先行して下がりはじめるでしょう。
また、ウクライナへの復興支援に大規模予算が投じられるのは確実です。このとき、ウクライナ国内の企業がダメージを受けていること、資材の不足も著しいことから、周辺国の企業が復興特需で潤うだろうと言われています。具体的には、チェコ、ハンガリー、ポーランドへの恩恵が大きいと予想されており、これらの国々の企業は急成長を遂げる可能性があります。
当初予想された以上に長期化しているウクライナ紛争。その解決までの道筋が見えはじめています。