治療目標
膿疱性乾癬(GPP)の治療においては、患者さんごとの症状、ライフスタイルに合った治療法を選択し、患者さんが抱えているさまざまな悩みの解決と生活の質(Quality of life;QOL)を高めることが目標となります。
GPPは治る?
GPPは症状の改善と悪化を繰り返す病気ですが、近年の治療法の進化により、症状がほとんど出ない状態(寛解状態)を維持することができるようになってきています。
症状が改善されている状態を長く維持するためには、患者さんが前向きに治療に取り組むことがなによりも重要です。納得して治療に取り組めるよう、気になることや不安がある場合には、遠慮せずに主治医に相談してみましょう。
治療の種類1)
GPPは症状の種類や強さに幅がある病気です。症状が強く生命に関わるような状態(急性期)の治療においては全身の炎症反応への対応が優先されます(プライマリーケアと呼ばれます)。
全身の炎症反応に対するプライマリーケアは患者さんの症状に応じて、「Ⅰ.心・循環系・呼吸不全に対する治療」、「Ⅱ.皮膚症状に対する治療」、「Ⅲ.関節症状に対する治療」に分けられます[図表1]。
治療法は大きく「全身療法」、「外用療法(ぬり薬)」、「光線療法」に分けられます。ここではそれぞれの治療法に用いられる薬剤や特徴について説明します。
全身療法
全身療法には、内服薬(飲み薬)、生物学的製剤(注射薬)、顆粒球単球吸着除去療法(かりゅうきゅう・たんきゅう・きゅうちゃく・じょきょ・りょうほう)があります。
■内服療法(飲み薬)2)
GPPの治療に用いられる飲み薬には、皮膚に作用するお薬、原因となる免疫に作用するお薬、関節に作用する薬などがあり、用いられています。
■生物学的製剤(注射薬)2)
外用療法や内服療法で十分な効果がみられない患者さんには生物学的製剤による治療が行われます(関節症状がある患者さんでは、日常生活に支障が出る前に関節破壊の進行を抑制する必要があるため、早期からの使用が考慮されます)。
生物学的製剤はバイオテクノロジーによって生み出された薬剤で、症状が出ている部位に大量に存在する炎症性サイトカインに直接働きかけ、過剰な免疫反応を抑えることで乾癬の症状を改善します。
生物学的製剤にはいくつか種類があり、TNF-α、IL-17、IL-23などそれぞれターゲットとするサイトカインが異なります。治療効果、投与間隔、治療費などがそれぞれ異なり、投与方法も静脈注射(点滴)と皮下注射があります。皮下注射の薬剤のなかには、病院やクリニックで指導を受けることで、患者さんご自身で注射を打つ(自己注射)ことができるものもあります。
生物学的製剤は高い治療効果が期待できる一方で、免疫反応を抑える働きがあることから感染症などの副作用が起こることもあり、予防と対策が必要になります。
そのため、生物学的製剤の使用は、日本皮膚科学会が認めた病院やクリニック(生物学的製剤使用承認施設)に限られています。生物学的製剤使用承認施設は、日本皮膚科学会のホームページで確認できます。
■顆粒球単球吸着除去療法3)
顆粒球単球吸着除去療法は炎症に関わる白血球を選択的に取り除く治療法で、GPPに対する治療において保険適用が認められています。静脈から抜き出した血液を円筒状の装置に通し、装置のなかで炎症に関わる白血球のみを選択的に取り除くことで炎症を抑えます。炎症に関与しない白血球は体内に戻ります。
外用療法(ぬり薬)2)
外用療法は急性期を乗り越えた慢性期の患者さんに対して選択される場合があります。外用療法では免疫の働きを抑え炎症を鎮める「ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用薬」が主に用いられます。
光線療法2)
光線療法は、紫外線のもつ免疫の働きを抑える作用を利用した治療法です。急性期を乗り越えた慢性期の患者さんに対して選択される場合があります。
紫外線にはいくつか種類がありますが、GPPの光線療法では、長波長紫外線(UVA:ウルトラバイオレットA)と中波長紫外線(UVB:ウルトラバイオレットB)が用いられます。
UVAを用いる光線療法を「PUVA(プーバ)療法」、UVBを用いる光線療法を「UVB療法」といいます。副作用として日焼けや色素沈着などがあらわれる ことがあり、また、週に1、2回の通院が必要になります。