自然保護NGOの遺贈担当者が、遺贈寄付の専門家に遺贈や相続財産寄付の基礎知識、今すぐ役立つ準備の進め方のポイントを聞きました。第7回目は「遺言書」にまつわる疑問について回答します。

Q.遺言書には、いくつか種類があるのでしょうか。

A.私はこれまで数多くの遺言作成や相談に携わってきた中で、さまざまな遺言書を見てきましたが、一般的に使われているのは「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類です。それぞれに作成方法やかかる費用が異なります。

 

 

公正証書遺言は、証人を2名立て、公証人が遺言者の意思を聞き取った上で、証人立ち会いのもと遺言書を作成する方法で、遺言書の原本は公証役場で保管されます。公正証書遺言は専門家が作成するので、自筆証書遺言に比べると形式不備や偽造等のリスクが低く、より確実性が高い遺言と言えます。また、病気などで文字が書けない状態でも遺言書を残すことができます。

 

一方、自筆証書遺言はその名のとおり、遺言者本人が自筆・押印して作成します。用紙や筆記具に指定はなく、遺言書としての形式を守っていれば有効です。費用もかからず、自分で作成・保管できる気軽さが大きな特徴です。

 

その反面、形式や言葉遣い、文言の訂正方法を間違えていたり、解釈が分かれかねない曖昧な表現を使っていたりすると、せっかく書いた遺言が無効になってしまうケースもあります。また、自筆証書遺言を自宅で保管していると、紛失や改ざん、死亡時に発見されない、場合によっては相続人が遺言書を隠してしまうなどの恐れがあります。そうした問題を解消するため、2020年7月から全国の法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が設けられました。

 

Q.「自筆証書遺言の保管制度」を利用するメリットはどんなことでしょうか。

A.この制度を使えば、遺言書の紛失や改ざんを防げるほか、保管申請の段階で遺言書の形式チェックも受けられます。また、希望しておけば、遺言者が死亡した際、あらかじめ指定した人に遺言書の存在を通知してもらえるしくみがあり、遺言書が未発見で終わる心配がありません。法務省の発表によると、制度ができた当時は2,600件ほどだった保管申請件数が、2023年5月には54,000件超と20倍以上になり、どんどん利用者が増えているようです。

 

ただし、法務局で遺言書の形式はチェックしてもらえても、内容のチェックまでは行っていないため、内容があいまいで、その解釈をめぐって争いごとが起きてしまうケースは少なくありません。これは公正証書遺言にも言えることですが、財産が多数に及んだり、共有財産があって権利関係が複雑な場合などは、相続にくわしい弁護士・司法書士や信託銀行などに相談することをおすすめします。

 

遺言の内容をどうするかは、財産の状態や家族・親族関係などによって大きく異なります。便利な制度や専門家の助けを借りながら、未来のために財産を役立てたいという想いを確実に叶えられる遺言書を作成してほしいと思います。

 

「自筆証書遺言書保管制度のご案内」(法務省民事局)より
「自筆証書遺言書保管制度のご案内」(法務省民事局)より

 

****************************************

日本自然保護協会の自然を守る活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられ、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。

 

大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活等の専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。

 

日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。お気軽に遺贈資料のご請求、ご相談お問い合わせください。

 

日本自然保護協会への遺贈・遺産からのご寄付について資料請求・お問い合わせはこちらから