公的年金に加入し保険料を支払わないと、老後に「老齢年金」がもらえなくなるだけでなく、家族を残して亡くなったときの「遺族年金」や障害を負って働けなくなったときの「障害年金」ももらえなくなります。しかし、何らかの事情で年金保険料を支払えなくなることはあり得ます。どうすればいいのでしょうか。経済ジャーナリスト荻原博子氏の著書『年金だけで十分暮らせます』(PHP研究所)より、一部抜粋してお伝えします。
公的年金の「保険料」が支払えなくなった…それでも「年金」を受け取れる方法【経済ジャーナリストが解説】

国民年金の「猶予」制度

国民年金には、「今は支払えないけれど、お金ができたら支払う」という人のために、「猶予」という制度もあります。この猶予には、2種類あります。

 

【国民年金の「猶予」の種類】

(1)学生対象の「学生納付特例制度」

(2)20歳から50歳未満の「保険料納付猶予制度」

 

猶予というのは、いずれ支払うということで保険料の支払いを待ってくれるもの。

 

保険料を滞納し、それが長く続けば、10年以上という保険の受給資格期間を満たせません。しかし、保険料を後納すれば、猶予期間中は、将来的に年金をもらうのに必要な受給資格期間に換算されます。

 

また、猶予の期間中は、「遺族年金」「障害年金」などももらえます。特に、(1)学生対象の「学生納付特例制度」については、大学生のお子さんを持つ方は覚えておいたほうがいいでしょう。

 

大学などに通う子供の学費を捻出するだけでも大変なのに、20歳を過ぎて支払わなくてはならない年間約20万円の国民年金保険料を、子供に代わって支払ってあげるのは大きな負担になります。ですから、とりあえず猶予の届け出をしておいて、大学を卒業してから本人に支払わせるようにするといいでしょう。

 

また、20歳から50歳の間には、リストラ、失業など思わぬ出来事に遭遇するかもしれませんから、こうした時も、支払えなかったら猶予してもらうことができます。それが(2)「保険料納付猶予制度」です。

 

ただし猶予は免除ではなく、あくまで支払えるようになるまで待ってくれるということ。支払える余裕ができた時に、過去分をさかのぼって納めてください(10年以内に限る)。

 

支払いが大変になっている人は、年金事務所などで相談してください。

 

 

荻原 博子

経済ジャーナリスト