「偏りすぎ」なのかどうか
また、金持ちになりたければ金持ちの真似をしろ、とはよく言われることです。
米国には「金持ち=株をたくさん持っている」という現実があります。その人たちは株価の上昇、投資のリターンによってより一層金持ちになっています。
それは世界的超大企業の創業・経営者だけでなく、バフェット氏のように投資で大成功した人もいます。そうした社会に身を置いていれば、金持ちになりたければ株を買う。誰から何を言われなくとも「現金を持っているより株を買ったほうがいい」という考え方が中間層にも浸透するでしょう。
元読売ジャイアンツの投手でメジャーリーグでも活躍した高橋尚成さんがデーブ大久保さんのYouTube チャンネルに出演したときに話していたのですが、「日本人が『貯金をするのが当たり前』のように、アメリカ人は“金融”に投資するのが当たり前と思っている」そうです。
メジャーリーグでは球団側が選手の年俸の一部を株で運用しているとのことで、それも当たり前なのでしょう。「アメリカでは、お金が生活を豊かにしてくれる。お金がお金を生んでくれると、みんなそう考えている」と言っていました。
そうした社会の風潮も、家計金融資産における現預金の比率が低く、投資の比率が高い一因になっていると思われます。
日本にはまずもって米国のような超大富豪がいません。また、日本で金持ちのイメージと言えば、おそらく「株をたくさん持っている」ではないでしょう(「金持ち=地主」ではないでしょうか)。たとえばファーストリテイリングの柳井社長兼会長が3兆円もの資産がある、その資産の大半は2200万株保有している自社株だと聞いても、金持ちになるには株をたくさん持つことだ、とは考えないと思います。
前年トップだったソフトバンクの孫正義氏が今回3位に落ちたと聞けば「投資でやられたからだろう」、イーロン・マスク氏の資産額を知れば「テスラの株価が10%下がったら2兆円以上も吹き飛ぶのか」と、投資のリスク面に目を向ける人が多いのではないでしょうか。
つまり、株、あるいは投資に対して、米国人はリターンを重視する、日本人はリスクを重視する。
そうした感覚を持たれやすい社会になっていることが、家計金融資産の構成比率に現れているのだと思います。投資のリスクとリターンは表裏一体ですから、どちらが正しいも間違っているもありません。リスクを重視する日本人は現預金が5割。リターンを重視する米国人は株・投資信託が5割。
それぞれの社会がそうした選択に導いているのであれば、それを「偏りすぎ」だと言ったところで仕方がありません。
前回の反省を踏まえて“次”の機会にも是非ご参加を
そもそも、一体何ゆえの「貯蓄から投資」なのでしょうか。いまの時代、安全性重視で貯蓄ばかりしていたら資産はつくれない、リスクを覚悟で投資をしなければ将来お金に困るようになる、という忠告の意味があるだろうことは理解できます。
しかし、どうもそうとは思えない「貯蓄から投資へ」の推奨もあるようです。たとえば、貯蓄は「すぐに使うお金」で流動性のある預貯金、「すぐに使わない、増やしておきたいお金」は投資を勧める記述を時折目にします。
子どもの教育資金は後者だそうです。
確かに増やしたいのはヤマヤマですが、肝心の大学受験の年になったら減っている、場合によっては大幅に減っているかもしれません。それでもいいのでしょうか。そのときはそのときで、進学は諦めて就職しろ、とでも言うのでしょうか。
子どもの進路を相場頼みにしてまで「貯蓄から投資へ」を推奨する意図は何だろうかと、リスク重視の日本人からすると、かえって敬遠されるのではないでしょうか。
もし、将来の資産形成のために「貯蓄から投資へ」を推進したいのであれば、それこそ世界同時株安で株式市場が大暴落したときに、期間限定で「この期間中に買った株式は売却時期を問わず1000万円まで非課税」といった特別措置を講じてはどうかと思います。
そうすれば、貯蓄は投資のほうへ、おそらく一気に向かいます。
と同時に、これは株式市場という国富の劣化を食い止める一助にもなり、そして個人の資産形成にも役立ちます。いいことずくめの、極めて効果の高い「貯蓄から投資へ」の促進策ではないでしょうか。
以上はいかにも現実味の薄い話で期待しても無駄だと思いますが、それはさておき、現金を多く持っていては将来お金に困る、ということはありません。その現金は、これから訪れるであろう数々のチャンスに使うことができます。現金が多いほど、その選択の幅は広がります。
ローリスク・ハイリターンを目指すバーゲンハンティングはその選択肢のひとつです。一度バーゲンに参加した人は、是非、現金を増やして“次”の機会にも参加してください。
現金を多く持っていれば、間違いなく、より有利に、より自由に立ち回ることができます。前回の反省を踏まえて、超格安で拾う銘柄の範囲を拡げる、買う数量を増やす、買うタイミングを分散する回数も増やせます。将来に向けての資産形成はこれでさらに大前進です。