“カリスマ美容師”はひと握り…多くは「キツいのに低賃金」
美容師が直面しているもうひとつの問題として、「低い年収」が挙げられます。
実際、厚生労働省の賃金構造基本統計調査※7によると、2022年の理容・美容師の賃金(決まって支給する給与額)は26万7,500円となっており、これに年間の賞与などを加えても年収は330万1,400円にとどまります。
これは、2020年の329万9,800円をわずかに上回り、これまでの最高額を更新しているものの、他の職業の平均額(一般労働者:31万1,800円)を下回っています。
さらにパートなど短時間労働の理容・美容師の時給は1,319円(一般労働者1,367円)※8と、傾向としては緩やかに上昇しているものの、昨今急増する物価高などを考えると、決して高い時給でないことがうかがえます。
勤続年数は全産業平均の「約2分の1」
また、美容師はなかなか定着しない職業としても知られています。厚生労働省が公表している「令和2年賃金構造基本統計調査※9」によると、美容師・理容師の平均勤続年数は5.2年とされています。
全産業の平均が11.9年(男性13.4年、女性9.3年)であることを考えると、美容師の勤続年数は他の職業の勤続年数の半分以下となっています。ほかの職業と比べても、美容師は離職率の高い仕事であることがわかりますね。
このように離職率が高く、さらに施術を行う際はその年のトレンドを押さえるなど「センス」も問われる美容師は、年収もいわゆる「年功序列」とはなっていません。先述の厚生労働省の統計でも、「理容・美容師の年収は30〜34歳までは上昇するが、それ以降はほぼ横ばいに推移し、55〜59歳は大きく落ち込む」とされています。
ただし、なかには店長や「トップスタイリスト」となって、年収800万円〜1,000万円以上稼ぐ“カリスマ美容師”もいます。また、独立してトップスタイリストとなると、有名人とのコネクションが多くなる人も。
そういう意味で、美容師は「夢のある職業」といえるかもしれません。
◆まとめ
理髪店の入り口に看板としてくるくる回る赤・青・白の三色のサインポール。赤は動脈、青は静脈、白は包帯を表し、世界共通のマークとなっていますが、髪を切るのが仕事の美容師はその昔、人体を切る外科医が兼業して行っていたといわれています。
健康リスクや低賃金などさまざまな問題を抱えるなか、古くから有資格者として尊敬すべき職業であった美容師。かかりつけの美容師さんがいたら、ぜひ一度感謝の言葉を伝えてみてはいかがでしょうか。
秋谷 進
東京西徳洲会病院小児医療センター
小児科医