子どもが生まれると、教育費をはじめ、多くのお金がかかります。そのお金を効率よく準備するには、何よりも家計管理が重要です。では、どのようにすればよいのでしょうか。子どもを2人育てながら1億円を貯めた経験をもつファイナンシャルプランナーの寺澤真奈美氏と作家の寺澤伸洋氏の夫妻が、著書『NISA、保険、助成金もスッキリ分かる 子どもにかかるお金大全』(光文社)から、「家計の穴」を見つける方法を解説します。
「贅沢していないのに…」30代夫婦・世帯年収700万円の「子育て世帯」から“月7万5,000円”が消えていた「家計の穴」とは【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「贅沢していないのに教育費が貯まらない……!」ワケ

筆者は日々、さまざまな家庭の家計についてご相談を受けていますが、そのなかでも、お子さんを持つご家庭の場合は、次のような思いが相談をするきっかけになっています。

 

「子どもが大学へ行くまでの教育費を着実に貯めるプランを知りたい」

 

「教育費は何とか出せても、その後の老後資金が足りるか心配」

 

そもそも、ファイナンシャルプランナーへ相談をしようと考える人たちですから、お金に対する一定の知識を持ち、投資や貯蓄意識も高い傾向があります。

 

その一方で、「贅沢していないのに、なかなか教育費が貯まらない……」という不安を抱えて、筆者のところへやってくる人も少なくありません。

 

贅沢品を買っているわけでもなく、外食や旅行を頻繁にしているわけでもないのに、なぜか生活が苦しい。貯金も思ったように増えない……。理由が分からないので不安もどんどん膨らみ、「一度プロに相談してみよう」という流れです。

 

そうした人たちが持つ不安はまさに的中しており、たいてい家計には大きな穴があいています。そこからとめどなくお金が流れ出ているため、必然的に教育資金は増えていきません。

 

やっかいなのは、本人たちにはこの「家計の穴」がまったく見えていないこと。

 

「あって当たり前の出費」と思い込んでいるため、どこをどうやって削ればいいのか

分からないのです。

 

ここでは、そんな「家計の穴」があいてしまっていたケースについて紹介します。

 

住宅ローンに家計が圧迫されているAさんのケース

・家族構成 夫:30代(会社員) 妻:30代(専業主婦) 長男:3歳 次男1歳

・世帯収入 夫700万円

・貯金額 600万円

[図表1]

 

◆「住宅費は手取りの3割」神話に苦しむ家は多い

Aさんが都内に家を購入したのは、3年ほど前のこと。住宅メーカーの営業から「家賃より安いローンが組めますよ。返済額が収入の3割程度であれば、健全なローンです」というすすめを受け、頭金ゼロで住宅を購入。住宅ローン、管理費、修繕積立金、固定資産税を入れて月々17万円、年に204万円の35年返済で住宅ローンを組んでいました。

 

しかし、家を購入後まもなく、「自由に使えるお金が少ない」という実感を抱き、貯金もイメージどおり増えていかず、「将来的に子ども2人の教育費が出せるの?」という不安から、筆者のところへご相談にやってきました。

 

Aさんは、筆者がご相談者の改善プランを提案するのに苦しむ、典型的なケースでした。Aさんの世帯年収は700万円。一見、余裕がありそうに思えるのですが、その3割強が、住宅ローンで占められている状態でした。

 

家計を健全化しようとするとき、最もネックになるのが、高すぎる住宅ローンです。

 

多くの場合で20〜30年間、ときには35年間という長期にわたり、絶対に支払わなければいけない固定費となってしまうためです。

 

先のとおり、「住宅費は収入の3割なら大丈夫」といわれています。筆者に言わせれば、それは根拠の薄い“神話”であり、それを信じてローンを組んで、あとから苦しんでいるケースは枚挙にいとまがありません。

 

特に、Aさんの場合は年収700万円に対して約3割(29%)にあたる204万円の住宅費であったために、筆者は正直、頭を抱えてしまいました。年収700万円から社会保険料を引いた手取りは約540万円です。つまり、実際には手取りの約4割が住宅ローンでロックされている状態だったのです。

 

筆者は子どもの教育費を考慮したとき、住宅費は手取り収入の2割までが健全だと考えています。

 

Aさんのように、子どもの教育費がかからない「今」だけの判断で「これぐらいなら払える」と判断し、ローンを設定してしまうと、いざ教育費がぐんぐん増えてきたときにパンクしてしまうのです。返済額は「今」だけではなく、5年後、10年後、15年後を見据えて慎重に設定するのが正解です。