金利の歴史を知ることは、経済構造の変遷の歴史を知ることにほかなりません。今回は田渕直也氏の著書『教養としての「金利」』から一部を抜粋し、世界的な金利変動の中心地・アメリカの金融政策の歴史を軸に、金利のトレンドについて考えます。
1960年代からの日米の金利推移を比較…40年続いた金利低下トレンドに転換の兆し

世界的な金利変動の中心地・アメリカ

 

そして2022年、一転して金利は急上昇し、もしかすると約40年続いた長期的な金利低下トレンドがついに反転したのではないか、というのが昨今の状況です。もしそうであれば、それは世界経済の新たな構造変化を示唆するものとなるでしょう。

 

いずれにしても、金利変動の大きなトレンドの背後には、経済構造の大きな変化が必ずともなっています。ですから、金利の歴史を知ることは、経済構造の変遷の歴史を知ることにほかなりません。

 

ちなみに金利は、国、通貨によって水準が違いますが、変動の方向性という意味では、世界中で連動して動く傾向が強くみられます。そして、その中心がアメリカの金利です。アメリカを起点とする世界的な金利変動のうねりに各国独自の要因が加わって、それぞれの国の金利水準が動いていくことになります。

 

日本も、基本的にはここ40年ほどのあいだ、長期的な金利低下トレンドを経験してきました。

 

そしてそこには、日本独自の事情も反映されています。日本は1990年代にバブルが崩壊し、以後、経済成長率が大きく低下しました。また、バブルの崩壊にともなう株や不動産など資産価格の下落といった要因も加わって、ディスインフレを通り越してデフレ危機に直面することになります。

 

それに対して金融当局はバブルやインフレ圧力の再燃を恐れ、そのために金融緩和が後手後手に回り、それがいわゆる「失われた20年」などと呼ばれる経済の長期停滞を招く原因のひとつになったといわれています。

 

その間、金利は日本経済の長期停滞を危惧するかのように大きく下がっていきます。ただし日本の場合は、もともと金利水準が低いこともありますが、比較的早い段階で金利がゼロ%近辺にまで下がったため、そこからはなかなか下がりにくくなっていきます。

 

一方で、直近のアメリカの金利上昇に対しても、日本の金利はあまり大きくは追随していません。

 

日本の金利水準は、アメリカを起点とした世界的な金利変動と軌を一にして動きながらも、そこに日本独自の要因が加わっていくことで形成されていきます。したがって、日本の金利を理解するには、その両面からみていくことが必要になるのです。