米国の利上げに日銀の金融緩和の出口戦略…金融を理解するには「金利」についての知識が不可欠です。今回は田渕直也氏の著書『教養としての「金利」』から一部を抜粋し、金利のルーツとそもそも「お金」とは何か、ということについて考えます。
穀物の借り賃は上限「33.3%/年」…古代メソポタミアで生まれた「金利」の概念

金利の歴史はメソポタミア文明から

 

金利には古い歴史があります。金利はお金の借り賃ですが、金利に相当する概念自体は、いわゆるお金が歴史に登場する前から存在しています。

 

ここでいうお金とは、「整形・刻印された金属」とか「金額が印刷された紙」といった、モノとしての価値にかかわらずに法律で価値を認められていたり、人々がその価値を信頼していたりすることで、物品やサービスを購入できる機能や、貯蓄などのように長期間にわたって価値を保存できる機能をもったもののことです。

 

お金が登場する前は、金や銀などの貴金属(加工されていないもの)、あるいは小麦など保存のきく農産物など、モノとしての価値をもち、長期間保存できる商品が取引を媒介する役割を果たしていました。これらは実物貨幣などと呼ばれているものです。

 

最古の文明とされる古代メソポタミアでは、こうした実物貨幣として銀や小麦が広範に使われており、さらにその貸し借りも可能だったことが知られています。有名なハンムラビ法典には、その際の借り賃の上限についての規定も記載されています。いわば法定上限金利ですね。ちなみに、その水準は、穀物の場合が年33.3%、銀の場合が20%だそうです。

 

ハンムラビ法典は、紀元前18世紀に成立しました。いまからざっと4000年ほど前のことです。メソポタミア文明は、近隣の多くの文明に影響を与え、多くのものを後世に伝えたまさに母なる文明です。当然のことながら、金利をはじめとする金融機能の多くも、他の文明に引き継がれていきます。たとえば古代ギリシャや古代ローマなどもそこに含まれます。

 

こうしてみると、お金、もしくはお金としての機能を果たすモノを貸し借りし、それに対して借り賃を支払うことは、黎明期から人類の文明に深く刻まれた基本的な経済行為といえそうです。

 

さて、金利は基本的にお金の借り賃のことですから、お金の歴史についても簡単に振り返っておきましょう。