昨今、VRを使用したオンライン茶室や茶道のために開発されたロボットを通じて茶道に関心を持つ人が増えています。今回は、新たなテクノロジーと茶道を掛け合わせることによって生まれる可能性について解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
VR、AIロボット……テクノロジーで進化した「ネオ茶道」!伝統芸道の魅力を未来へ (※写真はイメージです/PIXTA)

新しい空間体験

 

茶会×DX「CYBER CHAKAI(サイバー茶会)」

富士通が最新技術を駆使して同社の研究所に開設した茶室で、電通のクリエイティブチームとコラボレーションして開催されたインタラクティブな茶会体験です。

 

茶室の白壁には映像を映し出すことができ、掛け軸や風光明媚な四季の景色などで参加者を茶の湯の世界へと導きます。畳にも映像が投影でき、参加者は表示された「右に茶碗を3回回す」などのメッセージを確認しながらお茶をいただくことができるので、茶道に馴染みのない人でも安心して楽しめます。

 

・サイバー茶会

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000082501.html

 

京都にできたデジタル技術融合の茶室「寂隠(じゃくいん)」

ソニーコンピュータサイエンス研究所京都研究室と、学校茶道教材の販売や、茶道普及ツールの企画制作を行う株式会社ミリエームの茶美会(さびえ)文化研究所が開設した、新しい茶室です。

 

茶室内には数々のセンサーが配置されており、手元の繊細な動きや身のこなしといった作法をキャプチャー(捕獲)できます。この3Dデータを活用することで、茶道文化の保存・継承に貢献します。

 

そのほか、過去約500年の茶会で使用した道具や食事を記録した「茶会記」を3Dデータで保存したり、障子扉の透明度をプログラミングによって制御したりといった試みも。茶の湯文化を通じ、デジタルとリアルの融合を研究する貴重な茶室となっています。

 

茶の湯はこれからも進化し続ける

伝統や歴史に裏付けられた茶道。しかし一方で、これまでも時代に合わせてさまざまな変化を遂げてきました。テクノロジーを取り入れて変わっていく、時代の変化に適応できる懐の深さがあるからこそ、伝統として継承され、求められつづけてきたと言えるのかもしれません。

 

茶道に敷居の高さを感じていた人こそ、まずは「ネオ茶道」からはじめてみてはいかがでしょうか。

 

<出典>

・東京都「東京大茶会 TOKYO GRAND TEA CEREMONY」

https://tokyo-grand-tea-ceremony.jp/index.html

 

・ソニーコンピュータサイエンス研究所「Sony Computer Science Laboratories, Inc.」

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230228-2603354/

https://chizaizukan.com/news/4l1mB0yC9EQ7QP7rYxQ7ba/

 

 

[プロフィール]

小沼 理

企画から執筆・編集まで多彩なメディアのコンテンツ制作に携わる編集プロダクション・かみゆに所属。得意ジャンルは日本史、世界史、美術・アート、エンタテインメント、トレンド情報など。