「楽器演奏が趣味」という人はどれぐらいいる?
総務省の統計局が2016年に行った「社会生活基本調査」によると、10歳以上の国内推定人口約1億1330万人に対し、約11%にあたる約1,240万人が楽器演奏を楽しんでいることがわかりました。単純に計算しても、10人に1人という水準です。
また一般社団法人のヤマハ音楽振興会が2022年に発表した調査によると、20~50代の働く男女500名のうち「今後、楽器を始めたい」と考えている人の数は、全体の約43%にも上ることが明らかになっています。コロナ禍でおうち時間が増加したこともあり「新たな趣味を開拓したい」と考える人が増加したのではないでしょうか。
ひとりで地道に練習できる楽器として連想しやすいのは、ギターやピアノ。また音楽サークルでの活躍に結びつきやすいバイオリンにも人気が集まります。幼少時代に習い事のひとつとして始めた経験のある楽器に「いま一度トライしてみたい」と考える人も多いようです。
意外と古い!?「電子楽器」のヒストリー
ピアノやバイオリン、そしてアコースティックギターなどは楽器本体さえあればその場で演奏ができます。そのため生楽器には非常に長い歴史があり、世界中でさまざまな音楽文化を形成してきました。
一方、19世紀の電気の発明から約300年後にあたる20世紀初頭のロシアで「テルミン」という電子楽器が発明されます。微弱な電流を帯びたアンテナの間に手をかざすことで演奏するこの楽器には、独特の幽玄な響きがあり、いまなお人気です。
しかし本格的な電子楽器の開発は、第二次世界大戦後の1950年代にスタートしました。ピアノと同じ鍵盤を有する電子オルガンを経て、1952年にアメリカのコロンビア大学がシンセサイザーを発明。電子回路を活用し、一台でさまざまな音を電子的に合成するシンセサイザーが、1960年代に販売開始されたのです。
シンセサイザーを活用したポップスは60年代の試行錯誤を経て、70年代に本格化します。その後もディスコブームやパンクロック以降のニューウェーヴシーンで積極的に採用された電子楽器は、よりダイナミックなグルーヴを獲得し一般化していきます。
また90年代にオーバーグラウンド化し、現在に至るブラック・ミュージックはもともと、ミュージックシーケンサーやドラムマシンなど、電子楽器を活用したアレンジが基調となっていました。さらに近年、世界中で巨大な市場と化しているダンスミュージックの現場では、DJがプレイする楽曲はほぼすべてPC上のソフトウェアで製作されています。現代において、電子楽器は楽曲制作に必要不可欠となったのです。