働き方が多様化している時代。自由な働き方を求めて脱サラを決断する人も増えています。そうはいっても、サラリーマンを辞める前に、万が一のこともしっかり考えておかなければ、遺された家族を苦しめてしまうことも……。本記事では、FPオフィスAndAsset代表の前田菜緒CFPが、石原由美さん(仮名・40歳)の事例とともに遺族年金の注意点について解説します。
年収800万円・46歳の脱サラ夫逝去…40歳妻が受け取る「遺族年金」、サラリーマン時代との差額「2,350万円」の悲劇【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

46歳の夫逝去も…遺族厚生年金が1円も支払われない!?

石原由美さん(40歳)は昨年、当時46歳だった夫の真司さんをガンで亡くしました。亡くなった当時は小学生の子2人を1人で育てていかないといけないというプレッシャーで悲しむ余裕はなかったそうです。由美さんは、電子部品メーカーで正社員として働いていますが、年収は400万円、夫の逝去時の年収は800万円、収入が激減してしまうことにより、子ども2人を1人で育ていくには不安で仕方がなかったと言います。

 

そして、そんな不安に追い討ちをかけたのが、「遺族年金」でした。国の年金制度では、年金制度加入者が亡くなると、残された家族に遺族年金が支給されます。遺族年金には、遺族基礎年金遺族厚生年金の2つがあり、真司さんは厚生年金を19年納めてきました。しかし、由美さんに遺族厚生年金が支給されることはなかったのです。一体どうしてこのようなことになってしまったのでしょうか?

 

由美さんが「遺族厚生年金」を受け取れなかったワケ

遺族厚生年金を受け取れなかったのは、真司さんの働き方が変わったためでした。真司さんは、亡くなる2年前に中小企業を応援したいと会社を退職し、中小企業の経営コンサルタントとして独立しました。独立には自分の好きな仕事で充実した毎日を送れるメリットがある反面、社会保険の適用が小さくなるデメリットもあります。

 

今回、由美さんが遺族厚生年金を受け取れなかったのは、公的年金の保障範囲が小さくなったことが原因です。年金制度において、会社員は国民年金と厚生年金の2つの制度に加入しますが、個人事業主が加入するのは国民年金のみです。

 

しかし、個人事業主だからといって厚生年金からまったく年金が支給されないわけではありません。過去、厚生年金に加入していれば老後の年金は厚生年金の加入記録に基づいて支給されますし、遺族厚生年金も要件に当てはまれば支給されます。しかし、真司さんのケースはその要件に当てはまりませんでした