ドローン物流の社会実装に向けて、日本では国土交通省が2018年度に全国5地域で検証実験を実施。2020年からはドローンに関する航空法改正により、機体認証制度や運行管理のルール、ドローンの国家資格(操縦ライセンス制度)といった法整備が行われてきました。2023年現在では官民一体となった実証実験が全国各地で行われ、レベル4飛行(有人地帯における目視外飛行)も解禁されるなど、実装に向けてより本格的に動き出しています。この記事では、過疎地・離島/都市部における実証実験例を紹介しつつ、ドローン物流の有効性や課題についてまとめます。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
「物流2024年問題」で期待が高まるドローン物流。その可能性と課題を実証実験から探る (※写真はイメージです/PIXTA)

事例②都市部でのドローン物流(新潟県・新潟市)

※画像はイメージです
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次にご紹介するのは、2021年6月、新潟市中央区に本社を置くTOMPLA株式会社と新潟市が連携して行なった実証実験です。

 

新潟駅南口エリアで行われたこの実験は、日本初の試みとなる「人工集中地区(DID)でのドローン物流の可能性を探る」目的で行われました。駅前商業施設「プラーカ新潟」内に入居する店舗で調理されたパスタをドローンに搭載し、飲食店の利用客役を務める中原八一市長のもとへ届ける一連の流れが検証されました。

 

実験ではまず、中原市長が専用のアプリでパスタを注文。注文を受けて調理されたパスタはドローンに搭載され、「プラーカ1」の屋上を離陸したのち、「プラーカ2」上空で地上の安全を確認。その後、約200m離れた「プラーカ3」の屋上に着陸しました。市長のもとに届いたパスタはソース等のこぼれもなく、温かい状態のままだったと言います。

 

新潟市では、航空機産業の集積地となることを目指し、官民一体となって「NIIGATA SKY PROJECT」を推進しています。本実験もその一環に位置づけられ、実現が望まれる人工集中地域でのドローン活用に向けて道筋をつけるものとなりました。

ドローン物流最大の課題は「収益性」

 

主に離島・過疎地を中心に実証実験が進められるドローン物流ですが、国土交通省「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会」での資料をみると、実用化に向けてはいくつかの課題があることが指摘されています。

 

  • 収益性の課題

1フライト当たりにかかるコストがかなり高額であり、別途機体の損料や保険料を加えると、さらなるコストがかかります。そのため、ドローン物流単体で収益を上げていくことは現状困難です。

 

  • 技術面の課題

中山間地では電波障害が起きやすいというドローン自体の問題と、悪天候時にスケジュールの柔軟な対応が必要という管理面の問題があります。他にもサイバー攻撃により、ドローンの撮影データや通信データを窃取されるといったリスクも考えられます。

 

  • 制度面の課題

25キロ以上の機体は、パワーがある分、国交省の審査が通常より厳しくなります。また、実用化試験局制度の手続き簡素化は進んでいますが、それでも依然コストと時間を要します。

 

  • 利用客・受け入れ地域の課題

対象地域の理解が得られるかどうかは重要な問題です。また、過疎地域においてドローン配送が必要な方は高齢者が多く、注文の方法、インターフェース等に課題が生まれやすくなっています。

 

このうち、とくに収益性については事業の持続性に直接関わってくるところです。国土交通省の資料の中でも「トラックとのハイブリッド配送」などが可能性として挙げられているように、ドローン物流単体としてではなく、配送ビジネス全体の一助としてドローン活用を考え、収益を上げるようなビジネスモデルの構築が、ドローン物流実現のカギを握るといえそうです。

 

(文=長谷川寧々)