2020年から長く続いたコロナ禍は、さまざまな社会の変化をもたらしました。デジタルデバイスを用いた新しい働き方やサービスといえば「リモートワーク」や「オンライン診療」といったものが挙げられますが、教室に行かなくても授業が受けられる「リモート教育」にいま注目が集まっています。本記事で詳しくみていきましょう。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
前時代的な教育システムを根本から変える…“すべての子どもに最適な教育”が叶う「エドテック」の全貌 (※写真はイメージです/PIXTA)

「入試」も不要に!?…エドテックが広げる「自由」の可能性

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

エドテックが広く普及すれば、「試験」のシステムにもイノベーションが起こるでしょう。

 

たとえば、オンラインの個別学習が当たり前になり生徒1人ひとりに単元ごとの理解度テストが行えるようになれば、学期末に一斉に行う定期テストが不要になります。

 

さらに、大学入試のような「受験制度」も不要になるかもしれません。先述の「学習ログ」によって高校生のリアルタイムの学力がわかれば、そのログに基づいて大学入学の資格を与えたり、合否を決めたりすればいいわけです。

 

公務員試験や企業の入社試験、国家資格試験といった能力テストの仕組みも、エドテックによって様変わりするかもしれません。

 

もしかすると、「偏差値ヒエラルキー」もなくなるかもしれません。1つの学校に固執する必要がなくなり、たとえば高校生であれば、教科ごとの学力に応じて全国共通のオンライン授業を受けたあと、地域別・クラブなどでリアルの高校を選ぶ、といった将来像も考えられます。

 

まとめ

特許庁の調査によると、世界の教育ICT市場は、学校教育関連ソフトの成長などをテコに、2025年までに1,812億6,400万米ドルに拡大すると予測されています。

 

そうしたなか、日本の教育ICT産業の推定市場規模は、2025年時点で936億5,000万円にとどまっています。これは米ドル換算すると約6億8,600万ドル(2023年5月1日現在の米ドル為替レート1ドル=136.8円)です。すなわち、世界の教育ICT市場に比べ日本の教育ICT産業の推定市場規模は0.4%程度にとどまっていることが分かります。

 

とはいえ、国と地方を合わせた文教費の年間予算は、約23兆円にも達しています。公的教育サービスのデジタルシフトは今後加速すると想定され、日本のエドテック産業の潜在的な成長可能性は、非常に大きいといえます。

 

 

野澤 正毅

1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在はビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。