(※画像はイメージです/PIXTA)

大きな収益をあげられる一方で、当然リスクもついてくる不動産投資。そして、「土地から新築一棟物件を建てる」場合、投資家は建物が建ってからのリスクは想定しても、その前に大きなリスクが潜んでいるとは思ってもいないだろう。しかし、実は建物を建てている最中にこそ、最大のリスクが潜んでいると言う。そして、連載の3回目となる今回は、「土地から新築」の最大のリスクである建設会社破産の回避方法について、100 棟以上の高収益賃貸住宅を施工した実績を持つ株式会社めぐるで経営推進室長を務める、青木瑛里氏が解説する。

建設会社の破産リスクを見極め、回避するには?

(※画像はイメージです/PIXTA)
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建設会社が破産する根本的な理由は、その低い粗利率。つまり、適正な利益を得られていないことから、原材料の高騰など想定外のことが起きるとすぐに資金繰りが悪くなることだと第1回で指摘した。また、第2回では建設中に建設会社が破産すると、個人投資家は大きな損失を被ることになると説明した。では、個人投資家はそうした事態に陥らないために建設会社の破産リスクを見極め、それを限りなくゼロにすることは可能なのだろうか。

 

青木「最初に投資家が見極めないといけないのは、潰れない会社なのかと品質を担保している会社なのかの2点です」

 

一般的に、ある会社の破産リスクを見極めるには、財務状況で確認することが考えられる。確かにその会社の経営状況をある程度は知ることができるだろうが、今年に入ってから破産したユービーエム株式会社の場合は、表向きの財務状況は健全だったという。つまり、粉飾されていた可能性が高いと考えられるのだ。

 

青木「ただ、仮に粉飾をしていたとしても利益率を見ることは可能です。粗利率が15%にも届かない会社、つまり、薄利多売の商売をしている会社は、破産リスクが高いといえるでしょう」

 

また、建物の品質の確認については、その建設会社が建てた物件を実際に見ることで、どれくらいのグレードの建物を作っている会社なのかが分かるという。加えて、自分の見積りと照らし合わせて、その金額で本当にその品質の建物が建てられるのかを確認する。特に、相見積もりを取りとにかく安い建設会社に発注すると、断熱材を省かれたり、ガス工事やそれに関する設備費用を節約するためにオール電化にしたりなど、目につきにくいところでコストダウンを図ろうとするケースは多くなるという。

 

低品質の賃貸住宅例(※画像はイメージです/PIXTA)
低品質の賃貸住宅例(※画像はイメージです/PIXTA)

たとえば断熱材を省いて何とか利益を確保しようとする建設会社がいたとしよう。数年後、結露で壁にはカビが発生。修繕費に莫大なコストが発生する。たとえ建設会社の破綻は免れたとしても、破綻リスクの高い建設会社が手掛けた物件は、保有リスクも高いのだ。

 

青木「設計書を見ている投資家でも​『1ルームで20平米だから、家賃はこれくらいに設定できるだろう』とそろばん勘定だけするケースが多いようです。このような確認だけだと、目に見えないところでコストダウンを図られる可能性があるので注意が必要です」

「土地から新築」のリスクに備える

(※画像はイメージです/PIXTA)
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では、「土地から新築」で個人投資家が失敗しないためには、どうすれば良いのだろうか。

 

青木「まず、設計図は全て提出させること。施工に関しては、工程表と専門業者一覧を手に入れておくことです​」

 

これらがあれば最悪、建設会社が破産してしまっても、工事を引き継げる可能性が高くなるという。また「土地から新築」の場合、一般的には着工、上棟、竣工の3回で建設会社への支払いは行われるが、これを工事の進捗に応じて支払うようにするという方法もある。

 

青木「建設会社が破産した時になぜ面倒なことが起きるのかというと、それは施主が先にお金を支払っている債権者だからです。もし債務者であれば、工事の進捗に対して足りてない金額を払うことが、所有権移転の交渉カードとして使えます。それに、そもそも建てた以上にお金を支払っていないので、ダメージが少なくて済みます。ただし、このような支払いスキームにするには、金融機関に協力してもらう必要があります」

 

株式会社めぐるでは、設計書や工程表、専門業者一覧などを施主に渡しているほか、金融機関が了承すれば、工事の進捗に合わせての支払いにも対応する。さらに、品質については実際の物件での説明はもちろん、ホームページに施工事例を掲載。粗利率については、20%を目標に15%を下回らないようにしているという。

 

青木「土地から新築は、建物が建たないのが最大のリスクです。そのようななかで、粗利は10%しか取らないものの破産する可能性がある会社よりも、施主に迷惑をかけないように粗利率20%を目指している会社のほうが、投資家にとってのメリットは大きいのではないでしょうか」

 

不動産投資、特に「土地から新築」で利益を得るには転売を大前提にし、それができる物件を建てることが大切だ。たとえば、不動産業者は他の業者から土地を購入しても、それが一般消費者に売れるから仕入れる。それは建物であっても同様で、不動産業をしている人は、転売できるものしか取り扱っていない。投資においても流動性のあるものを転売して利益を得るのが基本で、それは投資の基本形だといえる。しかし不動産投資については、保有して賃貸経営をすることで利益を得ることだけを考えている人も少なくない。

 

青木「本来、利益を確定しないと投資になりません。利益確定は、不動産の場合は売却です。物件の保有期間は人それぞれと思いますが、売却益を得られる物件を持ってこそ、本当の不動産投資といえるのではないでしょうか」