(※画像はイメージです/PIXTA)

大きな収益をあげられる一方で、当然リスクもついてくる不動産投資。そして、「土地から新築一棟物件を建てる」場合、投資家は建物が建ってからのリスクは想定しても、その前に大きなリスクが潜んでいるとは思ってもいないだろう。しかし、実は建物を建てている最中にこそ、最大のリスクが潜んでいるという。そこで、「持って良し。売って良し」をコンセプトに100棟以上の高収益賃貸住宅を施工した実績を持つ株式会社めぐる 代表取締役の牛山貴瑛氏が、知られざる不動産投資のリスクについて解説する。

不動産投資「土地から新築」人気の理由

(※画像はイメージです/PIXTA)
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近年、個人投資家の間で人気を博している不動産投資。特に注目を集めているのが、投資家が自分で土地を購入した上で新築物件を建て、運用や転売して利益をあげる、いわゆる「土地から新築」だ。なぜ今、「土地から新築」が人気となっているのだろうか。

 

牛山「不動産投資をする人が多くなり、ストックが枯渇してきたことで、中古と新築の物件で価格差がなくなってきたからだと考えられます」

 

以前は高給を得ている会社員でも不動産投資を始めるという話は決して一般的ではなかった。しかし、最近では投資信託や株式と並び、不動産を資産運用のジャンルの一つとして受け入れられるようになったことで、市場に出回っているストックが少なくなったという。

 

牛山「結果として中古物件の値段が上がり、利回りが悪くなったことで、転売まで含めると収益性が高い『土地から新築』が人気を集めていると言えるでしょう」

 

ここで、「土地から新築」のメリットについて、もう少し詳しく見てみよう。まず、新築物件への投資を考えたときに、「①すでに建っているものを買う」「②土地と企画がセットになっている新築企画案件を買う」「③自分で土地を買って企画し、建物を新築する」、これら3つのパターンが考えられる。

 

牛山「既にできている新築物件をマーケットで購入してしまうと​、土地から新築するよりもかかる費用は2〜3割高くなり、すぐに転売はできません。新築企画案件は、既に完成している物件より取得費用は安くなりますが、デベロッパーの販売管理費などが上乗せされてしまうので、それほどの利益は見込めません。土地から新築するなら確かにリスクは高くなりますが、それに見合うだけのリターンが期待できるのです」

「土地から新築」完成前のまさかのリスクとは?

業種別倒産状況 出所:中小企業庁『倒産の状況』(2022年)
業種別倒産状況
出所:中小企業庁『倒産の状況』(2022年)

 

そこで気になるのが、「土地から新築」のリスクだ。

 

牛山「いちばん大きなリスクは、建設会社の破産です」

 

実際に国内における建設業の破産数は、サービス業に続いて2位と決して珍しいことではないが、それには明確な理由があると言う。

 

牛山「たとえば、公共工事の入札で許される粗利率は23.57~9.74%で、9.74%になるのは30億円を超える工事の場合です。私たちが手がけるような案件の多くは1〜2億円ですが、それでも粗利を10%も取れてない業者が多いのです」

 

特に、自社で営業して案件を取ってくるのではなく、設計会社からの紹介や相見積もりで案件を獲得しているような会社は価格決定権がないことから、構造的に低利益率で仕事を受注していることが多い。そのような会社は投資ブームが去り、不景気になって、案件が取れなくなっただけで破産する可能性が高いというのだ。さらに、近年では新型コロナウイルス感染症の流行や、鉄骨や木材、給湯器をはじめとした住設機器など多岐にわたる建設資材が不足。それにより価格が急騰したことで工事原価の上昇や、人手不足による人件費の高騰など悪条件が重なり、粗利が10%以下の建設会社の破産リスクは、ますます高まっている。

 

牛山「特に、受注総額がどんどん伸びている会社は、利益率が低くても見かけ上の資金が増えているように見えます。しかし、1年後にはどうなっているかわかりません」

実際に起きている建設会社の破産

(※画像はイメージです/PIXTA)
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建設会社が破産してしまうと、建設中の物件はどうなってしまうのだろうか。

 

2023年2月、江戸川区を中心に収益不動産の建設を行っていたユービーエム株式会社が破産した。同社は近年、投資用マンションのRC工事で急成長したが、1月31日に経営が危ないという噂が流れると同時に連絡が取りにくくなり、2月1日には工事もすべてストップ。建設会社が破産すると、工事の全体を把握し指示を出していた人がいなくなることから、専門業者も実際にどのような順番でどう仕事を進めれば良いのかわからない。材料の手配をしたり、現場の予算や進捗、品質などを管理したりする人もいなくなるなど、その時点で工事を進めたくても進めることができなくなってしまうのだ。

 

さらには、エアコンやポンプなどお金になるものが持ち出されることも少なくないが、現場は引き渡すまでは破産した会社のものであり、所有権を主張する人がいなくなることから、持ち出されても誰も文句がいえないという。

 

牛山「工事の現場を実際に取り仕切っていた人が丸々いなくなりますので、まさにカオスな状態になってしまうのです」

 

次回、「土地から新築」において、建設会社の破綻に遭遇した際に投資家が取ることのできる選択肢について考えていく。