子どもを産む際、「できるなら遅生まれであってほしい」と考えている人も多いのではないでしょうか。迷信のように謳われる「早生まれは損」という言説は、本当なのか、ガセなのか……。東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師が、国内外の論文をもとに、早生まれの子どもの特性とその影響について解説します。
親「早生まれって、子どもにとって“損”ですか?」…小児科医の明確な回答 (※写真はイメージです/PIXTA)

論文から考える「早生まれ」の特性

論文などでは、いまだ解明されたわけではありませんが、児童精神科で問題となってくるのは、早生まれの子どもは、学校で「注意欠如多動症(ADHD)」や「自閉スペクトラム症(ASD)」であると評価されることが多いということです。

 

ADHDは多動衝動性、自閉スペクトラム症はコミュニケーションが症状の中核であるため、それらの症状は年齢による成長が最も影響されます。

 

たとえば、落ち着き、集中力やコミュニケーション能力は1年違えばまったく違います。とはいえ、その学年で習得していなければならない行動面の能力がなければ、学級運営に支障が出てしまうため、非常に難しい問題です。

 

そのようななか、早生まれの子どもが同い年のほかの子に比べて少し落ち着きがなかったり、集中力が続かなかったりするだけで、通常学級では就学が難しいと判断されてしまうことがあるのです。

早生まれの子を勇気づけるための「NGワード」「OKワード」

では、早生まれの子どもの自尊感情や自己評価が健やかに育つためには、どうすればいいのでしょうか。それは、周りが支えてあげることです。

 

学校で評価がされないのであれば、自宅で子どものことを認めることが肝要です。児童精神科では、家での工夫や心理カウンセリングもしています。子どもに自身の話を聞くだけでもだいぶ不安は解消されますし、親や大人が自分のことを見てくれている、話を聞いてくれたということは、子どもにとって自信となります。

 

子どもに言ってはいけない言葉は次のようなものがあります。

 

「周りに負けないように頑張りなさい」
「できないね」
「しっかりとやりなさい」

 

こんな言葉を投げかけられた子どもは、たちまち自信をなくしてしまいます。

 

反対に、子どもに言うことで、子どもが嬉しいと感じる言葉は次のようなものです。

 

「頑張っているね」
「できているよ」
「前よりできるようになっているよ」
「3月生まれなんだから、周りと比べるなら下の学年の4月生まれや5月生まれと比べてみなよ」

 

こんな言葉を投げられた子どもは、自分で考える力を身につけられるようになります。

 

早生まれは「得」か「損」かでいうと、どうしても損が多いと考えます。だからこそ、そんな子どものために、手をかけて育ててほしい。子どもの自尊感情や自己評価のため、児童精神科医として、そして子を持つ父親としてもそう思うのです。

 

 

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医