(※写真はイメージです/PIXTA)

これまで富裕層でブームだった減価償却を活用した節税対策や相続対策に待ったがかけられるケースが増えてきました。減価償却の活用は、富裕層にとっていまや常識ともいえる節税対策です。どのような仕組みなのでしょうか。

【Jグランドの人気WEBセミナー】
税理士登壇!不動産投資による相続税対策のポイントとは?
<フルローン可>「新築マンション」×「相続税圧縮」を徹底解説

減価償却で税負担を大幅に軽減できる

富裕層の間でブームとなっている減価償却を活用した節税とはどのようなものなのでしょうか。

 

減価償却費が発生する資産を保有し、個人や法人の所得と損益通算することで節税します。減価償却の活用は、富裕層にとっていまや常識ともいえる節税対策です。

 

10万円以上の価格で購入した資産は、原則として所得税法で定められた年数に応じて毎年少しずつ経費にしなければなりません。これを「減価償却」といい、減価償却で計上される費用を「減価償却費」といいます。そして、所得税法で定められた年数を「耐用年数」といいます。

 

たとえば、600万円の自動車を新車で購入した場合、耐用年数は6年なので、毎年の減価償却は次のようになります。

 

・新車の減価償却費=600万円÷6年=100万円

 

しかし、同じ600万円の自動車でも4年を経過した中古車なら、2年分の減価償却費を一括して計上することができます。

 

・4年経過中古車の減価償却費=600万円÷2年=300万円

 

このように、耐用年数が短い資産を持つことによって、短期で減価償却費を計上することで、損益通算して所得を圧縮し、税負担を軽減することが可能となります。

 

ただし、減価償却の基本的な注意点として、次の2つが挙げられます。1つは、事業に使ってはじめて減価償却資産として認められること、もう1つは時間の経過に伴い価値が減価しない資産は減価償却資産として認められないことです。

 

1番目の要件では、個人がマイホームを買った場合は、その不動産の減価償却費は発生しませんが、投資(不動産賃貸業など)で購入した不動産は減価償却費を計上することができます。2番目の要件で例を挙げると、土地は時間がいくら経過しても価値が減ることはありませんが、建物は事業用に供していれば減価償却資産となります。

 

不動産関連では、海外不動産を対象とした節税策、タワーマンションを使った節税がブームになりましたが、税務当局の待ったがかかったことで沈静化しています。

 

2020年(令和2年)度税制改正大綱では、それまで数年間問題視されてきた海外中古不動産を利用した節税スキームにメスが入りました。日本と比較して不動産価格に占める建物の比率が高い点に注目した手法で、短期でより多額な減価償却費を計上できる手法として富裕層の人気を集めました。しかし、個人のみを対象に、税制改正により国外中古建物の減価償却費により生じた損失は損益通算を認めないとされました。

 

また、タワーマンション節税は実勢価格と固定資産税評価額との乖離に目を付けて相続税を大幅に削減する手法でしたが、2022年4月19日の最高裁判決で国税側の勝訴が確定。いきすぎた節税スキームには当局のメスが入る状況となっています。

美術品や高級車も減価償却の対象に

減価償却を活用した節税法として、変わり種では美術品があります。2014年12月に通達が改正され、それまでは時価20万円までだったのが、2015年以後取得する美術品について100万円以内であれば減価償却が認められるようになりました。

 

ただし、100万円以上の美術品であっても「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は減価償却資産として取り扱うことができ、逆に取得価額が100万円未満であっても「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」は減価償却資産に該当しないものとして取り扱われます。

 

改正通達によると、「時の経過によりその価値が減少することが明らか」で減価償却資産として認められるのは、例えば、①会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く)、②移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなもの、③他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況からみて美術品等としての市場価値が見込まれないもの、のすべてを満たす美術品が挙げられています。

 

法人としての利益を減らして税負担を抑えたい経営者にとって美術品は選択肢の一つとなります。事業に使うために、会社の受付や応接室に設置すればよいわけです。

 

なお法定耐用年数は、美術品等が「器具及び備品」の室内装飾品に該当する場合には、①室内装飾品のうち主として金属製のものは15年(金属税の彫刻等)、室内装飾品のうちその他のものは8年の法定耐用年数となります。

 

富裕層の代名詞ともいえる高級車も、単に乗るだけ、ステータスだけのためのものではありません。富裕層の多くは、高級車を耐久消費財であり、かつ資産とも捉えています。

 

高級車の資産価値は、価値が目減りしにくい点にあります。新車で購入した場合は耐用年数が6年で、6年に分けて減価償却費を計上することになります。これに対して、中古車を購入した場合は購入時までに償却した年数を引いて減価償却費を計上しますが、4年を経過した資産は残り2年分の減価償却費を一括して計上することができます。

 

なお、国税不服審判所の過去の裁決で、減価償却に関する事例があります。消費者金融会社が法人名義で「フェラーリ」(社長の通勤用)と「クルーザー」(福利厚生用)の減価償却費を計上したところ、税務当局が否認。採決を求めたところ、フェラーリの減価償却は認められ、クルーザーは認められませんでした。

 

このケースでは、クルーザーについては福利厚生の社内ルールや使用記録を税務署に提示できなかったこと、フェラーリに関しては社長が他に通勤手当を支給されていなかったこと、ガソリン代の領収書など通勤で使用した記録が残っていたことなどが決め手とされています。

 

そして、富裕層にとって王道と言えるのが不動産を活用した減価償却による節税です。年間所得が4000万円以上の場合は、所得税で所得の税率は45%で半分近くを持っていかれます。超累進税率に対抗するためには、減価償却を活用することで、個人の税金(所得税、住民税など)を減額することができます。

 

先に挙げた、海外不動産、タワマン節税など行き過ぎた対策にならないことが重要だと考えられます。

【Jグランドの人気WEBセミナー】
税理士登壇!不動産投資による相続税対策のポイントとは?
<フルローン可>「新築マンション」×「相続税圧縮」を徹底解説

TOPへ