急激なブレーキがかかっている中国の不動産業界。ようやく中央銀行が救済策を発表しましたが、どれほど有効なのでしょうか。みていきましょう。

16の救済計画

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11日に中国人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会が公表した救済計画は、不動産事業者はもちろん、不動産購入者や金融機関などのステークホルダーを対象とする16項目からなります。

 

1. デベロッパーの支援

金融機関に、国有私有の区別なく不動産デベロッパーを平等に扱うよう要請。(中略)健全なガバナンスを持つ企業を特にサポートする。

 

2. 個人の住宅購入者が借入しやすくするための支援

地方自治体が頭金の限度額と住宅ローン金利の下限を「合理的に(厳しくなりすぎないように、という意味か)」設定できるよう支援する。特に、新しく都市に居住しようとする人が買うスターター住宅の購入ルールを見直す。

 

3. 建設会社への支援

建設会社が「継続的かつ安定的に」資金調達できるようにする。

 

4. 債務超過危機にあるデベロッパーの支援

今後6ヵ月以内に返済期限が到来するデベロッパーの、未払いの銀行ローンと信託借入金の支払いを1年間延長可能にする。

 

5.社債を発行・返済しやすくするための支援

優良なデベロッパーによる債券発行をサポートする。債券の返済についても、延長または交換の交渉を可能に。

 

6. 特定の不動産プロジェクトを推進するための支援

信託会社に、デベロッパーの資金調達をサポートすることを奨励する。特に、合併や買収、賃貸物件や老人ホームの開発に関する資金調達を優遇させる。

 

7.未完成プロジェクトを遂行させるための支援

政策銀行である中国開発銀行と国立農業農村開発銀行に向けて、不動産プロジェクトを推進するための特別融資を「効​​率的かつ整然とした方法で」実施するよう通達。

 

8.住宅プロジェクトの完了を確実にするための追加支援

建設計画に遅れが発生している住宅プロジェクトについて、貸し手である金融機関から追加の財政支援を提供させる。

 

9.強いデベロッパーへの案件集約の支援

強力なデベロッパーが、弱いデベロッパーから不動産プロジェクトを買い取れるよう、銀行や資産管理会社がサポートするように通達。不動産プロジェクトの取得専用の債券を発行できるように。

 

10. 破綻や再編などの促進

破綻したプロジェクトや再編が必要なプロジェクトに対し、資産運用会社が破産管財人や投資家として関わり、再発信することを推奨。

 

11. 住宅購入者の住宅ローンの返済期限を延長

不動産購入契約が変更またはキャンセルされた場合、または新型コロナウイルスの影響で住宅購入者が失業している場合に、銀行は住宅ローンの返済を延長可能であると案内することを推奨。

 

12.住宅ローンボイコット者の信用保護

住宅未完成のためにローン支払いをボイコットした人に対し、信用スコアを低下させないようにする。

 

13. 銀行の不動産貸付に対する大幅な制限の緩和

銀行の財政健全化のために当局が課していた、不動産融資の制限を一時的に緩和。

 

14. 買収のための資金調達をより借り手に有利に

不動産プロジェクトの取得に関連する融資規則を一時的に変更。銀行や国営資産管理会社はより借り手に有利な条件で融資する必要あり。

 

15.賃貸不動産業事業の借入を有利に

賃貸不動産事業を所有する企業へのサポートを強化し、長期的な資金調達に積極的に対応するよう金融機関に要請。

 

16. 賃貸物件の資金調達方法を多様に

銀行に対し、賃貸物件の建設専用の債券を発行を許可。さらに、不動産投資信託(リート)の試行を推奨。

株価は一時急騰も、健全化までには課題が残る

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これらの計画が発表されると、中国不動産セクターの株価は一時急騰。11月14日、香港証券取引所のハンセン本土不動産指数(HSMPI)は13%高に。中国最大手デベロッパーの 一角を担う Country Garden は 36% 以上上昇し、同グループのドル建て債券のなかには 50% 近く急騰したものもありました。

 

市場は16の計画を好意的に捉えていることが伺えますが、ただちに中国不動産セクターの健全化に向かうと考えるのは危険です。例えば、借入や債券の返済期限が延長可能にする計画ですが、これは銀行による支払い能力審査をクリアした企業のみに適応されるとのことで、無条件に延長可能なわけではありません。また、社債発行をしやすくする計画については、中国不動産企業の債券が大量に売られている現在の市場を踏まえると、有効な資金調達手段とは言い難いでしょう。

 

不動産セクターのすべての企業が救済されることはなく、比較的ガバナンスが効いており、経営体力もある一部の企業のみが生き延びるという局面です。高騰する株価に誘われることなく、冷静な判断を下したいものです。

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。