都心に林立するタワーマンション。最近は郊外や地方に建てられることが多く、購入者層は一般へと広がりつつあります。主な購入者層として世帯年収の高いパワーカップルは知られていますが、「終の住み処」として購入する高齢者も多いといいます。みていきましょう。
タワマンは「終の住み処」になりえるのか?新宿区・タワマン住まいの高齢者、不安の声 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者にとって脅威となる「タワマン」ならではのリスクとは?

終の住み処を念頭に、自宅(戸建て)をバリアフリー化する動きは増加傾向にあります。一方で維持・管理の手間を考えて、マンションの購入に踏み切る高齢者も珍しくありません。

 

国土交通省『2021年度住宅市場動向調査』によると、分譲住宅購入世帯のうち世帯主が60歳以上は40.5%。さらに現役を引退し、年金受給者となっている割合は6.8%にもなります。さらに昨今、分譲マンションのなかでも人気が高まっているのが、タワーマンション、いわゆるタワマンです。

 

人気の理由はいくつかあり、まずは利便性。駅前(再)開発とセットで語られることの多いタワマンは、マンションを出てすぐに駅と言うことも珍しくなく、移動が公共交通がメインとなる高齢者にとってはこれ以上の立地はないでしょう。さらにスーパーや医療モール、公共施設などと一体となっているケースも多く、周辺部だけで生活が完結するのも、高齢者には嬉しい限り。またセキュリティー面でも通常の分譲マンションに比べて高いことは、高齢者にとっても安心です。

 

一方でタワマンにおいて「高齢者だから心配」という点も。新宿区が行った『タワーマンション実態調査報告書』からリアルな声を聞いてみましょう。

 

報告書では「65歳以上の高齢者がいる世帯」に対して、現在の心配事の有無を尋ねています。それによると、「特に心配はない」が38.4%、「現在心配がある」が12.8%、さらに「現在はないが、将来的に心配がある」が48.8%でした。

 

心配事で最も多かったのが「災害時の避難等の対策」で59.0%。「独居・昼間独居の心配」が43.5%、「身近に日ごろの会話や相談のできる人の少なさ」が28.2%、「日々の安否や買い物等」が26.1%でした。

 

今年、東京・品川区の44階建てタワマンで起きた火災では、多くが屋外へ避難したものの、下まで降りることを諦め、自室に留まった高齢者がいて大きなニュースになりました。これは災害時のタワマンの脆弱性ではなく、取り残された高齢者に誰も気づくことなかったという、希薄なコミュニティが引き起こしたことと話題になったのです。実際にタワマンに住む高齢者も、そのことを実感しているのでしょう。将来的に「孤独」を心配する声が多く聞かれます。

 

抜群の利便性を誇る一方で、「孤立化」が心配されるタワマン。「将来的にどう孤立化を防ぐことができるか」という視点でタワマンを選ぶのも、ひとつの選ぶ方かもしれません。