2000年にロシアの大統領に就任して以来、なにかと話題に上がることが多いプーチン大統領ですが、実は愛犬家であるという意外な一面もあることをご存じでしょうか。現在のウクライナ戦争からも垣間見える「冷徹」な印象のプーチン大統領ですが、そんな彼を虜にする愛犬は一体どのような犬たちなのか気になるところです。
本記事ではプーチン大統領が飼っている犬を詳しく紹介していきます。また愛犬だけではなく「プーチン大統領の犬と呼ばれる人物」についても紹介していますので、最後まで是非ご覧ください。
1. プーチン大統領に贈られた秋田犬「ゆめ」
プーチン大統領が飼っている犬のなかに、日本でも人気のある秋田犬の「ゆめ」という犬がいます。
「ゆめ」という名前にも日本らしさを感じますが、由来は日本語の「夢」とのこと。言葉の印象がよいということでプーチン大統領自身が名付けました。
1.1.【贈呈経緯】東日本大震災の被災支援のお礼
2013年に東日本大震災が起きた際、ロシアからの被災地支援のお礼として東北地方代表で当時の佐竹秋田県知事よりプーチン大統領に贈呈されたのがゆめでした。また、この贈呈にはプーチン大統領就任のお祝いの意味もあったそうです。
佐竹知事はロシアとの貿易拡大を目指していたこともあり、これをきっかけにロシアとよい関係を築いていきたいと願っていました。
1.2.【海外の反応】ロシアは秋田犬ブームに!
プーチン大統領がゆめを飼い始めたことでロシア国内ではあっという間に秋田犬が大人気になりました。ロシアの愛犬家たちの間で「大統領と同じ秋田犬を飼いたい!」とペットショップに秋田犬を探す人が殺到するというムーブメントが起こったほどです。
「ゆめと同じ色の秋田犬を売っています。」と宣伝するペットショップもあり、2016年当時の最高額は8万ルーブル。日本円にして約15万円ほどでした。現在でもロシアでは秋田犬が人気犬種ランキングのトップ10入りを果たしており、とても人気があります。
女子フィギュアスケートの金メダリストであるアリーナ・ザギトワ選手にも秋田犬の「マサル」が贈られたのは記憶に新しいです。
1.3.【幻の2頭目】2016年に2頭目贈呈の計画だったが…
2016年12月に日本政府側からゆめのお婿さんとして、秋田犬をもう1頭贈呈する申し入れをしましたが、最終的にロシア政府側より断られてしまったということがありました。
愛犬家であるプーチン大統領がなぜ2頭目を断ったのか? 理由は公表されていませんが、すでに馬や犬、猫など多くの動物を飼っていたプーチン大統領はこれ以上飼うことができないと判断したのでは、といわれています。
それに加え、最も濃厚だといわれた理由が北方領土問題でした。日本がロシアに対して北方領土の返還を要求していることもあり、友好ムードを築いてはいけないという政治的判断から2頭目の贈呈を断ったのではと推測されています。
こういった経緯があり、ゆめのお婿さんとなるはずだった秋田犬は幻の2頭目となったのです。
1.4.「秋田犬ゆめがかわいそう」という声もある
プーチン大統領に可愛がられているという報道がある一方、ゆめが可哀想だという声も多く上がっていました。
その理由の1つ目は最近ゆめが公の場に姿を現さなくなったことです。
現在どのように暮らしているのか、とゆめの安否を心配する声があります。
2つ目の理由は「リニ」という秋田犬の存在です。
リニはウクライナの首都キーウ近郊の町で、ずっと飼い主を待ち続けていたというのです。
残念ながら飼い主の女性はロシアの侵攻による攻撃で亡くなってしまいましたが、リニは玄関先で今は帰ってこない主人の女性を待ち続け、ボランティア団体が保護をしようとしても嫌がったそうです。
その姿がネット上でも「心苦しい」と拡散され反響を呼びました。そしてこの話題と共にゆめへの同情の声が再度あがったようです。
そして最後の理由は、ゆめの元飼い主がプーチン大統領に対して「情けない」と発言していることにあります。
生後3ヵ月までゆめを育てた男性は「どんな理由があっても軍事行動を起こすことはよくない。ゆめを贈ったのは交流のためだった。」とインタビューに答えています。
また、「夢」が由来である名前をつけたのに、名前に込められた想いとは異なる状況が起きてしまっていることに対して「一刻も早くこのような軍事侵攻を止めてほしい。」と訴えていました。
2. プーチン大統領が飼っている犬は何頭?犬種も調査
これまで秋田犬のゆめに焦点を当ててきましたが、プーチン大統領が飼っている犬は他にもいます。
現在に至るまでプーチン大統領は一体何頭の犬と生活をしてきたのでしょうか? 歴代の愛犬たちの犬種や年齢について紹介します。
1頭目:ラブラドール「コニー」
プーチン大統領の最初の愛犬であるラブラドール・レトリバーのコニー。
コニーは救助犬として訓練をするサイノロジーセンターの生まれで、2000年にロシアの政治家であるショイグ氏から贈られました。
プーチン大統領はコニーを大変可愛がっており、各国の首脳会談にも同席させていたのは有名な話です。コニーが病気の日は公務を休んだり、自宅の庭で愛馬とコニーと共に戯れたりする姿も見られました。
たくさんの愛情を受けて育ったコニーですが、残念ながら2014年に天寿を全うし亡くなっています。
2頭目:ブルガリアン・シェパード「バフィー」
バフィーもまた、2010年に当時ブルガリアの首相だったボリソフ氏から贈られた犬でした。
ブルガリアン・シェパードは成長すると体重が45kgほどまで大きくなる大型犬ですが、贈呈された当時はまだまだ子犬。バフィーに頬擦りし、嬉しそうな笑顔を見せたプーチン大統領が印象的でした。現在推定11歳です。
また「バフィー」という名前はロシア国内で募集をして決定しました。命名したのはなんと当時5歳の男の子。プーチン大統領の愛犬の名付け親ということでも注目を浴びました。
3頭目:秋田犬「ゆめ」
ゆめは先述したように、日本人にも馴染みがある秋田犬ですが、秋田犬はかつて絶滅の危機に陥ったこともあります。
社団法人秋田犬保存会の方々により絶滅の危機を免れ、現在は天然記念物に指定されている大型犬です。
ゆめは2022年の現在、推定で10歳になっているはずです。
プーチン大統領はゆめの贈呈のお返しとして、佐竹知事にシベリア猫の「ミール」を贈っています。「ミール」という名前はロシア語で「世界」「平和」を意味しています。
ミールは知事公舎にて飼育されているとのことです。
秋田県公式サイトでも現在も元気なミールの写真が定期的に更新されています。
4頭目:アラバイ犬「ヴェールヌイ」
ロシア語で「忠実」「信頼」という意味を持つヴェールヌイですが、この犬はトルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領から贈呈されました。
アラバイ犬というあまり聞きなれない犬種ですが、日本では手に入れることは難しい希少種であり、手入れも大変といわれています。
贈呈元のトルクメニスタンでは古くから牧羊犬として生活を共にしていた歴史のある犬種です。
現在は推定5歳です。
5頭目:シャルプラニナッツ犬「パシャ」
そして2019年にセルビアを訪問したプーチン大統領に対して、誕生日プレゼントとして贈呈されたのがパシャです。
パシャはシャルプラニナッツというセルビアやアルバニア原産の軍犬用として活躍している犬種です。プーチンに贈呈された当時は生後3ヵ月の子犬で愛くるしい姿でした。現在は推定3歳です。
3. プーチン大統領と会談した某大統領の犬の持ち方が話題に
このようにプーチン大統領は様々な国の首相から犬を贈呈されています。
その度にプーチン大統領と子犬の愛らしいショットがメディアで取り上げられてきました。
しかし、ヴェールヌイが贈られたときに一瞬ヒヤリとする出来事が起こりました。
なんとヴェルディムハメドフ大統領がまだ子犬だったヴェールヌイをケージから出し、首ねっこを掴んだのです。
3.1. 犬の首を掴む持ち方に表情が曇るプーチン大統領
ヴェルディムハメドフ大統領がヴェールヌイの首根っこを掴み、高く持ち上げましたが、その光景を見て険しい顔をするプーチン大統領。
そして椅子から立ち上がったプーチン大統領は、すぐさまヴェールヌイを自分で抱きかかえキスをして、首元を優しく撫でたのです。
3.2. そのあとのプーチン大統領の行動が評価された
愛犬家であれば、犬の首根っこを掴むというのが危険な行為であることは知っていると思います。
ヴェールヌイの身を案じ、すぐさま抱きかかえて安心させたこのプーチン大統領の行動はメディアでも取り上げられネット上でも拡散されました。
「彼は本当に犬を愛している!」
「さすが愛犬家だ。」
「プーチン大統領が優しく見える!」
など称賛され、話題となったのです。
ただ、ヴェールヌイを贈呈したヴェルディムハメドフ大統領もわざとこのような行動をしたのではなく、子犬に対する知識がなかったため、周りを驚かせる結果になってしまったのだそうです。
4. 他にもある、プーチン大統領の犬好きが確認できるエピソード
このようにプーチン大統領は犬を贈呈されることが多く、各国の政治界でもプーチンが犬好きであるということは広く知られていることがわかります。
その他にもプーチン大統領が見せた、愛犬家らしいエピソードを紹介していきます。
4.1. 首脳会談の場に犬を連れていく
様々な公の場所に愛犬を同席させていたプーチン大統領ですが、そのなかでも世間を騒がせたのが当時のドイツの首相、メルケル氏との首脳会談でした。
実はメルケル氏は犬に噛まれたことがあり、犬がとても苦手だそうです。しかし、この会談にプーチン大統領はわざわざコニーを同席させたのです。
部屋を歩き回るコニーを見つめ表情が強張るメルケル氏でした。この行動に対して「陰湿ないじめだ。」と批判もありました。
それに対しプーチン大統領は「メルケル首相を楽しませようとしただけで、怖がらせるつもりはなかった。犬が嫌いと知って謝罪した。」とコメントしています。
4.2. 秋田犬「ゆめ」に芸を披露させる
2016年に日本のマスメディアに向けて行われた記者会見では、大きくなったゆめがプーチン大統領と一緒に登場しました。
登場するやいなや興奮した様子で記者団に吠えるゆめ。たくさんの知らない人に囲まれて警戒してしまうのも無理はありません。
プーチン大統領はそんなゆめに対して「私の警護をしている」と発言していました。
また、プーチン大統領がゆめの前に手のひらを出すと、きちんとおすわりをして、二本足で立ち上がる芸も披露します。芸を披露したあとは、プーチン大統領からおやつをもらってもぐもぐと食べ、普段から懐いている様子がうかがえました。
4.3. 秋田犬の箸置きをわざわざ持ち帰る
日露首脳会談が日本で開催された際、プーチン大統領は山口県のある温泉宿に宿泊しました。そのとき注目を集めたのは秋田犬をモチーフとした箸置きです。
愛犬家のプーチン大統領のために、旅館の女将が私物である箸置きを花と共に食卓に添えました。プーチン大統領はこの秋田犬の箸置きが気に入ったようで、食事を終えたあと持ち帰っていたのです。
プーチン大統領が思わず持ち帰ったほど可愛い秋田犬の箸置きに注目が集まり、ネット上では「どこで売っているの?」と商品の特定が始まりました。
製造元であるソラマメ商店には「在庫はありますか?」という問い合わせが殺到したそうです。しかし、現段階で小売はしていないとのことなので、個人で手に入れるのは難しいかもしれません。
5. プーチン大統領は犬好きであることを政治に利用している?
愛犬と戯れる写真の数々を公表しているプーチン大統領ですが、わざわざ世界にこういった写真を発信するには政治家としての思惑があるともいわれています。
「自分はペットを愛している心優しき指導者である」というイメージを国内外へアピールしているというものです。
また、会談や重要な会議にも愛犬を同行させることで場を和ませたり、自分にとって思わしくない状況を有利に運ばせることができたりするというのも理由のひとつだといわれています。
先に述べたメルケル元首相との首脳会談でも、相手より優位に立つためにコニーを利用したのではないかという意見もありました。
愛犬家でありながらも、2014年のソチオリンピック準備期間中に観光都市の美化を目的として野良犬を殺処分するように命令を出したことがあります。
ただ単に犬好きということではなく、政治家という側面から非情とも思える判断を下したこともあるのです。
6. 犬だけじゃない「プーチンの犬」と呼ばれている人物
現在でもロシアで高い支持率を維持し続けているプーチン大統領ですが、なぜこれほどまでに強固な政権を築けたのでしょうか?
その背景には「プーチンの犬」と呼ばれている人物たちの存在がありました。
6.1. ロシア|メドベージェフ前大統領
プーチン大統領と同じレンニングラード大学の出身で、後輩でもあるメドベージェフ氏です。プーチン大統領とは政治のうえでも長い付き合いで、2008年にはプーチン大統領より後任者として指名され大統領に就任しています。
同時にプーチン氏が首相となり、メドベージェフ大統領との二本柱の政治が始まりました。
しかし、実際には任期上限に達したプーチン氏が大統領として復帰するまでの間、大統領のポストを守る役割であり、首相であるプーチン氏の指示のもと動いていたのです。
またロシアによるウクライナ侵攻後、極端に愛国主義を主張するようになり、メッセージアプリ上でも「あいつら(ウクライナ)のことが憎い。」などと投稿し、突然ウクライナを猛批判したことがありました。
プライベートでもプーチン大統領から支援を受けて裕福な生活をしていることもあり、プーチン大統領には頭が上がらないといわれています。
その様子から「プーチンの犬」と比喩されています。
6.2. ベラルーシ|ルカシェンコ大統領
ベラルーシのルカシェンコ大統領は「欧州最後の独裁者」と呼ばれるなど、長年にわたって強大な権力をふるってきました。しかし2020年に行われたベラルーシの大統領選挙でルカシェンコ大統領は大苦戦を強いられ、その座を危ぶまれました。
しかし、プーチン大統領の支援表明の助けもあり、なんとか当選を果たしました。
ロシアのウクライナ侵攻においても、ルカシェンコ大統領は「同盟国を助ける」と発言しており、欧米などから経済制裁を受けるロシアへ協力する意向を見せました。
また、ベラルーシがウクライナ国境に近いジャブロカ空域をロシアに明け渡し、ロシアは制空権を手に入れたとも報道されています。
欧米諸国から関係を断ち切られたルカシェンコ大統領は「プーチン大統領のいいなりである」といわれながらもプーチン大統領にすがるしかない、まさに飼い犬状態であるといわれています。
まとめ
本記事ではプーチン大統領が愛犬家でもあり、また政治家も飼いならすというエピソードを紹介しました。
現在は愛犬たちの姿がメディアに出ることが少なくなりましたが、犬好きに心から悪い人はいないと信じたいところです。
今後もプーチン大統領の動向には注目です。