20代~30代の大卒会社員「低所得」で奨学金も返せず…
経済的に厳しい学生生活。奨学金を利用する人も多いでしょう。日本学生支援機構の奨学金は、自宅通学か、自宅外通学かで月々の支給額が変わり、貸付額も変わります。国公立大学の学生が4年間「第一種奨学金(利息無し)」を利用した場合、自宅通学であれば月1万2,857円を14年間で、自宅外通学なら月1万3,600円を15年間で返還します。私立大学では、自宅通学なら1万4,400円を15年で、自宅外通学なら1万4,222円を18年で返還します。
大学卒業後18年といったら40代。そのころ、本当に学生生活から卒業できた、と実感することになるのでしょうか。そんなにも長く返済が続くなら……そんな後悔をしている人も多いかもしれません。もちろん繰り上げで返還することも可能なので、すべての人がそんなに長く学生生活を引きずるわけではありません。ただ、現実はなかなか厳しいものがあります。
大卒で手にする給与は20代前半で平均24万9,600円。手取りにすると19万円ほど。20代後半では平均29万4,200円で手取りで22万円。30代前半では平均33万6,300円で手取り25万円、30代後半では平均38万2,700円で手取りは28万円ほど(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より)。
大卒なので、全会社員の平均よりは多くの給与を手にし、年齢があがるごとに増えていきます。しかし余裕のある生活がかなうかといえば、平均値では難しいというのが正直なところ。しかも30代ともなると、結婚し家族が増えて、教育費に住宅ローンに支出が劇的にアップ、というタイミング。月々1.2万~1.5万円の奨学金の返還さえも厳しく感じます。
日本学生支援機構の調査によると、2019年度末、返還金の回収額率は88.9%。1割は回収できていません。それだけ奨学金の返還ができないケースがあるということ。延滞者へのアンケート調査では、返還できない理由として最も多かったのが「本人の低所得」で64.0%と経済的理由を挙げています。
そもそもの日本の奨学金、その多くが給付型ではなく貸付型であることに問題があるという意見も。日本学生支援機構では、2018年から新しい奨学金制度「給付型奨学金」をスタートし、2020年には対象学生の増枠や支給金額のアップなど、より便利にリニューアルされました。このような流れが進めば、40歳近くになっても奨学金の返還に疲弊するという事態は少なくなりそうです。