中国では、強烈な熱波に見舞われて、ビジネスに深刻な影響を及ぼしています。そのようななか、国としてとった対策とは。みていきましょう。

過去60年のなかでも強烈な熱波に見舞われる中国

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近年、大規模な洪水被害に苦しんでいた中国南部が、今年は真逆の気象災害に見舞われる事態となっています。中国南西部に位置する四川省中部から江蘇省沿岸にかけて、歴史的な熱波と干ばつが発生しているのです。現地の最高気温は、かれこれ2ヶ月以上にわたり40℃前後を記録し続けており、2022年8月18日にはこの地域を代表する大都市・重慶の気温が45℃に達しました。

 

加えて降雨量も減少していることが熱波の被害に拍車をかけており、一部の地域では例年の半分程度しか雨が降っていないため、川やため池、水田が干上がる事態に陥っています。2020年、2021年と連続して氾濫したアジア最長・世界3位の大河である揚子江ですら、水位が例年より5〜6mほども下がっているようで、その影響のほどが伺い知れます。

 

そして、こうした熱波による被害は現地の人々の生活のみならず、グローバル企業の企業活動にも影響を及ぼしています。

ビジネスや産業面にも深刻なダメージが発生

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四川省は中国最大の水力発電地として知られており、省内の電力の8割ほどを水力発電でまかなっていますが、今回の水不足によって発電所の貯水ダムで水が枯渇。例年の半分程度しか発電量を確保できない状況が続いています。

 

ここまで発電量が落ち込んでしまうと、電力が省内の需要に追いつかなくなるため、行政は民間に対して、エアコンの設定温度を26℃以下にしないよう呼びかけたり、公共交通機関の照明をオフにしたり、オフィス内でエレベーターではなく階段を使用するよう省職員に指導したりと、さまざまな節電協力を促しています。

 

加えて、オフィスビルに空調停止命令が出されたり、さらには計画停電のため6日間の工場閉鎖なども行われたりするなど、ビジネス・産業面へのダメージも深刻です。四川省は、インテルやテキサス・インスツルメンツ、オン・セミコンダクターなど、世界最大手クラスの半導体メーカーの工場が集う場所ですが、当局からの指示により、これらの工場も例外なく一時閉鎖されました。

 

トヨタのサプライヤーである台湾企業のフォックスコン社も工場閉鎖を遵守した企業の1つです。フォックスコン社はApple製品の組み立てや部品製造も担っているため、コロナ禍の影響で遅延していたApple製品の納期が今後さらに伸びる可能性も考えられます。あらゆる製品にコンピュータが組み込まれるようになった現代、半導体の製造が滞ることで生じる影響は計り知れないため、このような状態が続くと、需給バランスの崩れからさまざまな製品の価格高騰が起こる可能性も想定せざるを得ないでしょう。

クラウド・シーディングや施設移転も望みは薄い?

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こうした状況を受け、揚子江周辺の複数の省がクラウド・シーディングに取り組んでいます。クラウド・シーディングとは、人工降雨/人工降雪技術のことを指し、雲の水分を氷晶化するヨウ化銀や液体窒素などの化学物質をロケットで雲の中に散布することで、人工的に雨や雪を降らせようとしているのです。

 

しかし、乾ききった地域にはそもそも雲が少ないため、思うような効果にはつながっていない模様です。より長期的な視点で考えると、気候の安定した地域に工場を移設する手も考えられますが、大規模な設備を伴うだけに、そのコストと手間は並大抵ではなく現実性に欠ける部分も否めません。

 

近年、アメリカ西海岸でも熱波や干ばつが頻発しているように、世界各地で異常気象による被害が増加しています。このような気象災害が厄介なのは、その被害がいつまで続くのか、翌年以降も同じ場所で発生するのかといった予測が難しいこと。これからの時代の企業活動には、気候変動へのリスクヘッジも必要不可欠なのかもしれません。

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。