老後2000万円問題で国会が紛糾したり、高校の授業でお金の勉強が始まったりした背景には、国が「国民を養えない」と感じているという現実があります。本記事では、スティーブ金山氏が著書『18歳になったら、必ず押さえておきたいFIRE黄金法則』(彩流社)にて紹介している「これからの日本経済が厳しい理由」10項目のうち3項目について解説していきます。
年金財政は「国民の犠牲」なくして成り立たない…日本社会に訪れる恐ろしい“これから” (※画像はイメージです/PIXTA)

「雇用が不安定になり、収入が途絶える可能性」のワケ

【2】高齢化と豊かさによる消費の減衰

 

人口構成比がピラミッド型から崩れ、少子高齢化が進むと、消費力が減ります。10代、20代のあなたは、スマートフォンやゲーム機など、新しいバージョンが発表されれば、お金が許せば欲しいと思うのではないでしょうか。レトロな昭和時代の雰囲気を好む人も最近は増えていますが、一人暮らしを始めれば、新しい家具が欲しいと思うでしょうし、新しくて便利な家電を知れば、手に入れたくなります。

 

一方で、年齢が上になればなるほど、そういったものに興味が湧かなくなります。それまでの経験から、モノでは心は満たせないことを知るからかもしれませんし、結婚してしまうと、異性に認めてもらおうというモチベーションが消えるからというのもあるでしょう。

 

[図表2]は、2015年の国勢調査の結果、総務省統計局が発表している統計ダッシュボードによる人口ピラミッドです。比較しやすいように、2020年と2045年の推計値を並べてみました。

 

出所:総務省統計局 統計ダッシュボード
[図表2]日本の人口ピラミッド(2020年推計値、2045年推計値) 出所:総務省統計局 統計ダッシュボード

 

2つのグラフを比較すると、明らかに消費欲が旺盛な年代の人数が減っていることがわかります。比較対象が25年後というのは、これまであなたが生きてきた年数と同じかそれ以上の年数が経過した未来となり、想像するのは難しいかもしれません。しかし、もしあなたが結婚して子どもを育てる未来を少しでも考えているのであれば、この頃がもっとも出費が多くなり、より多くの収入が必要になる時期です。

 

いまですら、消費力が旺盛な年代の人数が減っているために、モノが売れない現象が起きています。モノが売れない、客が来ないということは、会社はヒトを雇用することに消極的になりますし、給料もそれほど払えません。

 

日本が失われた20年間と呼ばれる1990年以降、デフレに陥り、正社員が減り、非正規雇用者の率が急増したのは、消費が旺盛な人たちの人口が減ったからです。そして、給料が上がらず、待遇が低くなると、ますます消費力は衰え、会社はますます渋くなり…悪循環に嵌ってきました。

 

先の人口ピラミッドは、この状態がますます続くことを予感させます。

 

ところで、モノが売れなくなっているのは、若者の数が減っているからだけではありません。世の中が豊かになったために、若者の物欲が減っていることも一因です。

 

ヒトは、豊かになり満ち足りていると、新たに欲しいと思うものがなくなってきます。さらには、高級車と言われているポルシェやBMWであっても、地方でさえも目にしない日がほとんどない状態では、当たり前の存在となり、憧れて欲しいと思うことは減っているでしょう。

 

このようにして、この先の日本における消費はますます先細り、雇用が不安定になり、収入が増えるどころか途絶える可能性がますます高まっていく、そんな未来が見えています。