老後2000万円問題で国会が紛糾したり、高校の授業でお金の勉強が始まったりした背景には、国が「国民を養えない」と感じているという現実があります。本記事では、スティーブ金山氏が著書『18歳になったら、必ず押さえておきたいFIRE黄金法則』(彩流社)にて紹介している「これからの日本経済が厳しい理由」10項目のうち3項目について解説していきます。
年金財政は「国民の犠牲」なくして成り立たない…日本社会に訪れる恐ろしい“これから” (※画像はイメージです/PIXTA)

年金財政、「民間がやったら詐欺」だが…

【3】年金財政のいびつさ

 

高齢化により生産年齢人口が50%に近くなるということは、世の中の半分の人たちが、残りの半分の人たちを養っているという状況になると前述しました。それがまさに年金財政に反映されます。

 

年金というのは、支給額の70%は、後から入った人たちの支出から充当されています。これは、ポンジスキームとまったく同じしくみです。

 

ポンジスキームは、詐欺の手法のひとつとして有名です。民間がやったら犯罪ですが、おかしなことに国なら許されるようです。それどころか、年金を支払わない(納付しない)という選択肢がなく、強制加入であり、長期間未納が続くと強制徴収により財産差し押さえになります。

 

年金支給額の20%は税金からの歳出で、残りの10%を年金積立金(年金財源)からの支出でまかなっています。その年金財源も、2051年には国民年金の積立金、55年には厚生年金の積立金が枯渇する可能性があるとの試算を日本総合研究所の主席研究員である西沢和彦氏と、中田大悟創価大学准教授が示したと、2018年10月5日付けの日経ビジネス電子版に書かれています。

 

ただし、その年金積立金の総額は、株式市場による運用によって増えてはいます。

 

(出所)年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
[図表3]市場運用開始後の累積収益額(2001年度~2021年度第3四半期) (出所)年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)

 

[図表3]のように2001年の運用開始から100兆円まで増やしているという結果が発表されています。しかし、これはまやかしです。図をみるとリーマンショック以降増えていて、特に2012年と2020年に伸び率が上がっています。

 

このグッと上がっている時期は、黒田バズーカに代表される、日銀の量的緩和の影響です。日銀は量的緩和を行い、日銀が年金の株式運用先である日経平均のETFを大量に買い入れている時期と合致します。国がお金を刷って、日本企業の株式を購入し、それによって株価が上がっているため、本来の企業価値が反映された株価ではありません。

 

そのまやかしの株価で年金財政が保有している株式の価値を換算したら、100兆円になったというだけの話です。

 

さらに、平均年齢が男女とも10歳以上延びると予測されていることから、年金支給開始年齢も現状の65歳から70歳に変わろうとしています。契約期間中に支払開始時期を遅らせるというのは、民間では、重大な契約違反です。

 

しかし、これも国がやると許されるようで、実際に過去60歳からの支給開始が65歳に延長されています。これが70歳になるということは、そのうち75歳、80歳と繰上されていくだろうと考えるほうが自然です。

 

そして、年金支給開始が遅くなる分、政府は企業に定年を延ばすように要請しています。しかし、これからの企業がその受け皿になることは、まずないでしょう。

 

つまり、あなたが年金を受け取るのは、ずっと先になるということですし、それまでの間、あなたは収入源がまったくない数十年を過ごすかもしれないということです。しかも、寿命が延びているといっても、あくまでも平均寿命の話です。