「国の公的年金だけでは月々の収支が約5万円不足し、老後の約30年間で2,000万円が不足する」という「老後2,000万円問題」が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。これは逆にいうと「2,000万円以上退職金や貯蓄があれば老後も安泰」ということになりそうですが、どうもそうではないようです。退職金2,000万円のエリート会社員が陥った老後破綻の危機について、FP office STORY代表の尾﨑佳奈氏が解説します。
退職金2,000万円のエリート会社員…「勝ち組確定」と思いきや一転、「老後破産」の危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金2,000万円を投資へ…「破産」の未来が見えた65歳Aさん

大手企業を退職された65歳男性Aさん。60歳で定年退職を迎え、その後は勤めた会社で業務委託として週に2日ほどのペースでゆっくりと働きながら、奥様と2人でセカンドライフを満喫されていました。

 

ゴルフや旅行が趣味のため、もともと一般家庭よりも支出が多く、月々ご夫婦で約35万円程度の支出がありました。退職後はご主人の所得と、貯金を切り崩して生活をしていました。

 

退職金は2,000万円あり、その他預貯金や株式などの資産がありましたが、いまの取り崩しの生活を考えると「少しでも運用の金利収入を得られるといいのでは?」と考え、もともと取引のあった証券会社に相談をされたそうです。

 

そして62歳のとき、利回りの高いある新興国債券への投資を勧められたAさんは、退職金の2,000万円を投資。しかしながら、投資してから新興国通貨が下落し、数年であっという間に2,000万円あった資産が半分になってしまいました。

 

その後、運用の不安を抱えながら過ごしていらっしゃいましたが、年金をもらい始めた65歳を機に今後どのように資産を守りながら生活をすればいいか悩まれた末、当事務所にご相談に来られました。

 

ご相談にお越しいただいた時点でのAさんの資産は、預貯金1,000万円と株式500万円。そして下落してしまった新興国債券1,000万円の合計2,500万円でした。

 

冒頭でお伝えした通り、Aさんは現役時代と変わらず外食、ゴルフ、旅行、趣味等にお金をかけていたため、毎月の支出が約35万円。一方年金等の収入が約20万円ということで、差額の15万円を毎月取り崩して生活していくことになります。

 

仮に現在の資産約2,500万円を月々15万円ずつ取り崩していくと、このままでは78歳のときに底をついてしまう計算です。