「国の公的年金だけでは月々の収支が約5万円不足し、老後の約30年間で2,000万円が不足する」という「老後2,000万円問題」が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。これは逆にいうと「2,000万円以上退職金や貯蓄があれば老後も安泰」ということになりそうですが、どうもそうではないようです。退職金2,000万円のエリート会社員が陥った老後破綻の危機について、FP office STORY代表の尾﨑佳奈氏が解説します。
退職金2,000万円のエリート会社員…「勝ち組確定」と思いきや一転、「老後破産」の危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後破綻危機回避へ…FPが提案した3つの解決策

実際に筆者が行ったAさんへの提案は次の3点です。

 

1.新興国債券の売却
2.毎月の支出をあと5万円抑える
3.運用利回りが3%程になるような、新興国以外の債券等を交えた運用

 

まず新興国債券については売却を提案しました。そのうえで、毎月の外食代や固定費(保険や通信費など)の見直し等により、毎月の支出をなんとかあと5万円ほど抑えていただきました。

 

すると毎月の取り崩し金額が月10万円になり、2,500万円の資産を取り崩すと、運用利回り0%の場合85歳まで資金寿命が持ちます。さらに、現在保有の株式と、新興国以外の債券等を合わせて全体の運用利回りが3%程度になるようにポートフォリオの見直しをすることで、資金寿命は97歳まで伸びることがわかりました。

 

まとめ…老後破綻を防ぐための家計診断は必須

いかがでしたでしょうか。退職金2,000万円は日本では多い方になりますが、無計画に取り崩したり、目的が明確でない状態で運用をしてしまったりすると大変危険です。

 

ここからの退職世代は退職金も少しずつ減少していくにもかかわらず、生活水準をなかなか下げられないバブル世代にあたります。一層老後破綻するご家庭が増えてしまう懸念があるため、それを防いだうえで退職してからの30年安心して豊かに過ごすために、しっかりとした資金計画を持つことをおすすめします。

 

 

尾﨑 佳奈

FP office STORY

代表