将来に備えて貯蓄を行うなかで「今の貯蓄額で十分だろうか」「同年代の人はどれくらい貯蓄しているのだろう」と気になることがあるかもしれません。コツコツと貯蓄を続けるためには、貯金額の目安を作ることが大切です。
本記事では、金融中央広報委員会の「令和3年(2021年)家計の金融行動に関する世論調査」の結果を基に、年代別の貯金額について解説していきます。
1. 年代別の貯金平均額
金融中央広報委員会の「令和3年(2021年)家計の金融行動に関する世論調査」では、年代別の金融資産保有額に関する調査が行われました。「2人以上の世帯」と「単身世帯」別の平均額の結果は、以下の通りです。
なお、ここでいう「金融資産」とは「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のため又は将来に備えて蓄えている資産で、事業や日常生活のための資金、不動産などの現物資産は除いたもの」と定義されています。
年代 |
金融資産保有額(平均) |
|
2人以上の世帯 |
単身世帯 |
|
20代 |
212万円 |
179万円 |
30代 |
752万円 |
606万円 |
40代 |
916万円 |
818万円 |
50代 |
1,386万円 |
1,067万円 |
60代 |
2,427万円 |
1,860万円 |
全体 |
1,563万円 |
1,062万円 |
(参照:金融中央広報委員会「令和3年(2021年)家計の金融行動に関する世論調査」)
2人以上の世帯、単身世帯どちらも年代が上がるにつれて、金融資産が増加していることがわかります。
しかし、平均額の結果を見て「思ったよりも多いな」と感じた人もいるのではないでしょうか。このような調査では、突出して資産の多い人が平均額を引き上げるため、中央値も確認することでより現実的な数値が把握できます。
2. 年代別の貯金中央値
ここでは、各年代の金融資産保有額の「中央値」を確認しましょう。中央値とは、資産の少ない人から順番に数えたときに、ちょうど真んなかに位置する値のことです。
年代 |
金融資産保有額(中央値) |
|
2人以上の世帯 |
単身世帯 |
|
20代 |
63万円 |
20万円 |
30代 |
238万円 |
56万円 |
40代 |
300万円 |
92万円 |
50代 |
400万円 |
130万円 |
60代 |
810万円 |
460万円 |
全体 |
450万円 |
100万円 |
(参照:金融中央広報委員会「令和3年(2021年)家計の金融行動に関する世論調査」)
貯蓄平均額と比較すると、中央値はグッと引き下がることがわかります。
本調査では「金融資産を保有していない」と回答した人も含まれているため、平均額と大きく乖離した結果となっているのです。同年代の貯蓄額を参考にする場合は、こうした中央値も併せて確認するようにしましょう。
3. 毎月どれくらい貯蓄に回すべき?
金融中央広報委員会の「令和3年(2021年)家計の金融行動に関する世論調査」では、「年間手取り収入からの貯蓄割合」に関する調査も行われました。以下の表に年代別の結果をまとめています。
年代 |
2人以上の世帯 |
単身世帯 |
20代 |
17.0% |
20.0% |
30代 |
14.0% |
16.0% |
40代 |
12.0% |
16.0% |
50代 |
12.0% |
12.0% |
60代 |
10.0% |
9.0% |
全体 |
11.0% |
14.0% |
(参照:金融中央広報委員会「令和3年(2021年)家計の金融行動に関する世論調査」)
年間手取り収入に対する貯蓄割合では「2人以上の世帯」「単身世帯」どちらも20代が最も高い結果となりました。20代の2人以上の世帯では、手取りの17.0%を貯金へ回しているため、仮に手取り年収が300万円とすると、毎年約50万円を貯金に回している計算です。月額でいうと、毎月約4万円を貯金していることになります。
もちろん手取り収入のどれくらいを貯金に回せるかは家族構成などによっても異なりますが、およそ手取りの10~15%ほどを目安にするようにしてください。
4. 計画的な貯蓄・投資方法
計画的にお金を貯めるためには、貯蓄や投資方法に工夫をすることも大切です。ここでは「先取り貯金」「つみたてNISA」「iDeCo」の3つの方法を紹介します。
4.1. 先取り貯金
先取り貯金とは、毎月の貯蓄額を給与から先に引いておく方法です。「毎月生活費から余ったお金を貯金に回そう」という方法を採ると、つい使いすぎてしまいなかなか計画的に貯金ができないことがあります。
先取り貯金は、あらかじめ決めた貯蓄額を差し引いた金額を生活費とするため、毎月着実に貯金が行えることがメリットです。
たとえば、年間の手取り収入が350万円で、そのうち15%を貯金に回すケースを考えてみます。年間52万5,000円を貯金に回すためには、毎月約4万3,000円の貯金が必要となります。先取り貯金では、毎月給与を受け取った時点で4万3,000円を別の口座に移しておきます。
先取り貯金をするために、勤務先の「財形貯蓄制度」を活用するのもよいでしょう。財形貯蓄とは、給与からあらかじめ貯蓄額が天引きされる仕組みです。天引きされたお金は銀行の財形預金へ預けられるため、ATMで簡単に引き出しができない点も貯金に向いています。
4.2. つみたてNISA
つみたてNISAの活用も貯蓄に有効な方法です。NISAは「少額投資非課税制度」と呼ばれる制度で、金融商品への投資で得られた利益や分配金を非課税とするものです。
このNISA制度には「一般NISA」と「つみたてNISA」がありますが、つみたてNISAの特徴としては「積立投資に限定していること」と「非課税期間が20年間であること」の2点が挙げられます。
つみたてNISAの概要は、以下の通り。
非課税の対象となる金融商品 |
金融庁の定めた基準をクリアした投資信託とETF |
非課税の対象となる税金 |
投資信託から得た分配金や譲渡益に対する所得税・住民税 |
非課税枠 |
毎年40万円(20年間で最大800万円) |
非課税期間 |
最長20年間 |
投資可能期間 |
2018年~2042年 |
通常、金融商品への投資で得られた利益には20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。しかし、つみたてNISAではそれらの税金が非課税となるため、利益をそのまま受け取れる点が大きなメリットです。
ただし、上限が決まっていることや金融商品への投資はリスクも伴うため、「先取り貯金とつみたてNISAを併用する」など、他の貯蓄方法を合わせて利用するようにしてください。
4.3. iDeCo
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」と呼ばれる制度で、将来の年金を自分で準備しておく制度です。掛金(毎月の積立金額のこと)を自分で決めた金融商品で運用し、その成果を60歳以降に年金として受け取る仕組みです。
iDeCoでは、「掛金が所得控除となる」「運用益が非課税となる」「受取時も控除が利用できる」の3つのタイミングで非課税の恩恵を受けられます。年金の準備をしながら、税制上でも優遇が受けられるのは大きな魅力です。
ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出しができないため、住宅の購入資金や子供の教育資金などに充てることはできません。あくまで老後資金のための貯蓄として利用するようにしてください。
5. まとめ
この記事では、年代別の貯金額を平均・中央値で解説しました。同年代の貯金額を参考にする際は平均値だけでなく、中央値も参考にすることが大切です。
また、計画的にお金を貯めるためには「先取り貯金」や「つみたてNISA」「iDeCo」といった仕組みを利用する方法も有効です。それぞれ特徴が大きく異なるため、自分に合った方法を選びましょう。