利回りとは、投資額に対するリターンの比率です。「利回り」は債券投資で使うことが多いものの、株式投資や投資信託、不動産投資でも利回りの考え方を知っておく必要があります。ただし、金融商品によって使い方が異なるので、この記事を読んでしっかり理解しましょう。
「利回り」とは?「利率」との違いや計算方法について解説 (※画像はイメージです/PIXTA)

投資するときは「利回り」を考えることが大切です。ただし、株式や債券などの金融商品によって利回りの考え方が異なります。

 

この記事では、金融商品ごとの利回りの違いについて解説します。

1. 利回りとは
2.「利回り」と「利率」との違い
3. 債券の利回り
3.1. 世界の国債の比較
3.2. 直接利回り
3.3. 所有期間利回り
3.4. 応募者利回り
4. 投資信託の利回り
4.1. 投資信託の利回りの計算式
4.2. 投資信託の利回りと騰落率の違い
5. 株式の利回り
6. 不動産投資の利回り

1. 利回りとは

(※画像はイメージです/PIXTA)
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利回りとは、投資額に対するリターンの比率を指す言葉です。一般に1年間の年利回りのことを利回りといい、利息だけでなく、商品の売却損益も含まれます。利回りの計算式は、次の通りです。

 

利回り(%)=(分配金+売却益)÷当初の投資元本×100

 

たとえば、元本100万円の商品を1年間運用し、4万円の分配金を受け取り、102万円で売却したとします。

 

この場合、「(4万円+2万円)÷100万円×100=6%」と計算でき、利回りは6%となります。

 

ただし、実際の利回りを計算する際には手数料や税金を考慮する必要があるため、あくまで目安の数字として考えるようにしてください。

2.「利回り」と「利率」との違い

(※画像はイメージです/PIXTA)
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「利回り」は、しばしば「利率」と混同されますが、利回りと利率は別ものです。

 

利率とは、定期預金や国債の金利など、預金や額面に対して発生する金利などのことです。銀行預金の例として、200万円を利率1%の定期預金に預けると、200万円の1%なので2万円の利息がつくことになります。つまり利率は、額面や元本に対して受け取れる利息の割合を表します。

 

一方、利回りは利息を含めた総合的な収益のことで、利息と資産を売却して得られる利益(または損失)のリターンです。

 

なお、一般的に、資産運用では利回り(リターン)が高いほどリスクも高くなります。リスクが低ければリターンも低くなりますし(=ローリスク・ローリターン)、リスクが高ければリターンも高くなります(=ハイリスク・ハイリターン)。

3. 債券の利回り

(※画像はイメージです/PIXTA)
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次は、債券の利回りについて解説します。

 

3.1. 世界の国債の比較

債券の利回りの一例として、各国の国債の利回りを比較してみます(2022年7月28日時点)。

 

指標

利回り

日本国債10年

0.208%

米国10年国債

2.800%

ドイツ10年国債

0.987%

ユーロ圏10年国債

0.987%

 

日本に比べて、米国や欧州の国債利回りが高いことがわかります。

 

ちなみに国債とは、国が発行する債券のことです。政府が財政支出を税収で賄えない場合や、公共事業費などの投資資金を調達するために発行されます。

 

投資家は国債を購入することで、政府にお金を貸していることになります。国債を購入後、満期まで保有すれば、投資家は当初投資した元金に加え、追加で利息を受け取ることができるので「無リスク資産」とも呼ばれています。

 

債券の利回りは通常、最終利回りを指しますが、その他にも以下のような利回りがあります。

 

3.2. 直接利回り

直接利回りとは、購入価格に対して1年間に受け取る利息収入の割合のことです。表面利率が額面に対する1年分の利率であるのに対し、直接利回りは購入価格に対する利率です。

 

この直接利回りは、買い付け価格と償還価格の差額は考慮しません。単年度の損益を見るときに利用されます。直接利回りの計算式は、以下の通りです。

 

直接利回り(%)=1年間の利息収入÷債券の取得価格×100

 

3.3. 所有期間利回り

所有期間利回りとは、債券を満期日(償還日)まで保有せず、期間の途中で売却した場合の利回りのことです。

 

一般的に債券の収益には、インカムゲインである「利息収入」とキャピタルゲインである「売却益」の2種類があります。所有期間利回りは、「投資元本」に対して投資家が得る「利息収入」と「売買損益」の合計の年率を示す指標で、計算式は次の通りです。

 

所有期間利回り(%)={表面利率+(売却価格-購入価格)÷所有期間}÷購入価格×100

 

3.4. 応募者利回り

応募者利回りは、新規に発行された債券を発行価格で購入して満期まで保有した場合に得られる利回りで、計算式は次の通りです。

 

応募者利回り(%)={クーポン+(額面金額-発行価格)÷期間}÷発行価格×100

 

応募者利回りは、償還期限までに売却しない長期投資家がチェックすることが多いです。

4. 投資信託の利回り

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

投資信託では、債券や預金に使われるような利率を使うことはありません。その代わり、投資信託には「分配金」という仕組みがあります。分配金は、投資信託の運用期間中に変動した基準価額(投資信託の価格)に応じて、運用会社の裁量で支払われます。

 

4.1. 投資信託の利回りの計算式

投資信託の利回りの計算式は、次の通りです。

 

利回り(%)=(分配金+売却損益)÷運用年数÷投資金額×100

 

たとえば、100万円の投資信託を購入し、1年後に5万円の分配金を受け取り、103万円で売却したときの利回りは、次のようになります。

 

(分配金5万円+売却益3万円)÷運用年数1年÷投資金額100万円×100 =8%

 

ただし、収益(分配金+売却損益)から手数料や税金が引かれます。先ほどの8%というのは、手数料や税金を引く前の利回りになります。

 

4.2. 投資信託の利回りと騰落率の違い

投資信託を始めると「騰落率(とうらくりつ)」という言葉を目にすることがあると思いますが、「利回り」と混同しやすいので注意が必要です。

 

騰落率とは、投資信託の基準価額が一定期間にどれだけ変動したかを、パーセントで表したものです。たとえば、基準価額が1万円の投資信託が1年後に1万500円に値上がりした場合、騰落率は5%になります。

 

一方、利回りは「分配金を含めた基準価額に対する騰落率」です。

 

投資信託の銘柄を評価する場合は、騰落率も重要ですが、利回りも考慮するようにしましょう。

5. 株式の利回り

(※画像はイメージです/PIXTA)
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株式投資をすると、銘柄によっては配当金を受け取ることができます。株式の配当利回りとは、購入した株価に対して1年間にどれだけの配当金を受け取れるかを示す数値で、計算式は次の通りです。

 

配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金÷1株当たりの購入価格×100

 

配当金額が同じでも、株式の購入価格が高ければ配当利回りは下がり、購入価格が低ければ配当利回りは上がります。また、購入価格が同じでも配当金額が高ければ配当利回りは高くなり、配当金額が低ければ配当利回りも低くなるのです。

 

投資信託の分配金利回りと同じように、どちらかというと利率に近いです。株式投資の利回りを求める場合、利回り計算方法に従って「売却損益」と「配当金」で評価します。株式の利回りの計算式は、次の通りです。

 

株式の利回り(%)=(株式の売却損益+配当金)÷投資元本÷運用年数×100

 

6. 不動産投資の利回り

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

利回りとは、投資額に対するリターンの割合のことです。そして、不動産投資の場合、物件の取得費用に対する1年間の家賃収入の割合と言い換えることができます。ただし、不動産の利回りには「表面利回り」「実質利回り」の2種類があります。

 

不動産広告や情報サイトに掲載されている利回り(一般的には表面利回り)が高いからといって、その物件に興味を持つべきではありません。利回りの意味を理解し、あくまでも目安として利用し、利回りの根拠を確認するプロセスを経て、慎重に物件を選ぶことが大切です。

 

表面利回りとは、物件価格に対して1年間に得られる家賃収入の割合など、収益性を示す指標で「グロス利回り」と呼ばれることもあります。

 

これに対し、実質利回りは、購入にかかる諸費用や年間の維持費などを考慮(減算)したあとの収益率です。「ネット利回り」「NOI利回り」とも呼ばれます。

 

不動産投資では、物件取得時、運用時ともに様々な費用が発生するため、表面利回りだけを見て物件に飛びつくと、あとで「こんなはずじゃなかった」と気づくこともあります。そのため、物件を購入する際には、実際の利回りを自分でシミュレーションして確認することが大切です。