本稿では税務調査を専門とする税理士法人松本が、YouTuberをはじめとするインターネットビジネスの収入情報がどこまで税務署に知られているのか、税務調査の対象になる可能性などについて解説します。
YouTubeの収入は税務署にモロバレ!?「ネット収入」の確定申告・税務調査の実態【税理士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

国税庁は「ネット収入」をどこまで把握できるのか?

近年、YouTuberは憧れの人気職業として確立されてきています。YouTuberに限らず、ネットオークションやウーバーイーツなど、インターネットを介したサービスを利用するだけでなく、ビジネスや気軽な副業としても定着してきている印象です。こうしたインターネット上の取引は、税務署においてどのように捉えられているのでしょうか。

 

■YouTuberの収入情報を把握するのは意外と簡単!?

YouTuberの収入について、税務署ではどのように扱われているのでしょうか。

 

結論から言うと、YouTuberの収入情報は実は意外と掴みやすいと言えます。YouTubeでは、収益化できる条件などが公開されているため、税務署でなくてもある程度収入を予想することは可能です。

 

■YouTubeの動画収益は他のネットビジネスよりもわかりやすい

売れっ子のYouTuberともなれば、有名芸能人並みに収入があり、事務所へ所属してTV出演やタイアップ広告などの仕事を受けている場合もありますが、そうしたインフルエンサーと呼ばれるYouTuberは、全体のわずかひと握りに過ぎません。

 

その他大勢のYouTuberであっても、YouTubeのチャンネル登録者数と投稿している動画の本数、視聴回数などから、およその収入を割り出すことは可能です。YouTubeで確定申告の必要がある程収益が出ているにも関わらず無申告状態にしている場合、既に税務署が調査対象としてマークしている可能性もゼロではないのです。

 

YouTubeというメディアに露出しているYouTuberという職業は、ある意味他のインターネットビジネスよりも収入がわかりやすいと言えるでしょう。

 

■国税局には「インターネットビジネス専門の調査チーム」がある

YouTubeに限らず、ネットオークションやシェアリングエコノミーなど、インターネットを介したビジネスに従事している人は増えてきています。特にウーバーイーツなど、気軽な副業として始めている人は多く「実店舗やオフィスを構えているわけではないため、無申告でもバレないのではないか」と考えている人も少なくないようです。国税局が発表しているデータでは、ネット通販やオークションに伴う事案の約7割が無申告となっていることがわかっています。

 

1件あたりの申告漏れ額も900万~2,000万円前後と大きいため、国税当局では「電子商取引専門調査チーム」を設置し、情報収集や調査に力を入れています。

 

オンライン取引で収益が見える化しやすい点と、無申告数の多さから国税庁が情報収集を強化していることから、今後YouTuberやウーバーイーツの収益を申告していない人の元へ税務調査がやって来る可能性は高いと言えるでしょう。

「ネット収入を確定申告すべき人」とは?

YouTuberに限らず、確定申告が必要となる収入の目安は以下のようになっています。

 

■年間所得が20万円を超えたら確定申告が必要

副業であっても、年間の所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要となります。もしYouTubeによる収益が20万円以上あった場合でも、そこから必要経費や各種控除額を差し引いた額が20万円を下回る場合には、所得税の確定申告はしなくて良い場合もあります。

 

ただし、YouTube以外のSNSによる広告収入や、ネット通販、アフィリエイトといった収入も含める必要があります。

 

■YouTuberが「必要経費として認められる支出」の内訳

YouTuberの場合、以下のような支出は経費として認められるでしょう。

 

●動画編集ソフト

●カメラ、ライトなどの撮影機材

●動画で使用した備品、消耗品類

●撮影時にのみ着用した衣装

●その他撮影にかかる通信費、交通費など

 

しかし、プライベートで使用していないと言い切れない場合には、税務調査の際に経費と認めてもらえない場合もあるため注意が必要です。

 

また、自宅で撮影している場合は、撮影スタジオとして使用しているスペース分の家賃を按分して地代家賃として計上することも可能な場合があります。

 

確定申告や会計に関する知識で迷った場合は、YouTuberや個人事業主のサポートに強い税理士へ相談してみると良いでしょう。

確定申告が必要なYouTuberの具体例

最後に、確定申告が必要となるYouTuberのケースについて、いくつか例を挙げて確認してみましょう。(※わかりやすく説明するために控除額は加味しておりません。)

 

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例1:

本業はサラリーマンで、インターネットビジネスの副業をしている。

YouTubeの年間所得が5万円、ネット通販の年間所得が18万円=23万円

副業で20万円以上の所得があるため、確定申告が必要です。

 

例2:

個人事業主として、実家でYouTuberを専業にしている。YouTubeの年間所得が35万円

個人事業主の場合、YouTubeで得た所得は事業所得として確定申告が必要となりますが、年間の所得が48万円以下の場合は、所得税の確定申告は不要となります。

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確定申告が不要なケースでも、申告することで税金の還付が受けられる場合があります。自身に現在確定申告が必要となるか、所得の計算方法がわからない場合は、税理士事務所の無料相談などを利用してアドバイスを受けてみましょう。

 

「バレないだろう」と無申告状態を放置していても、税務署がすぐに指摘して来ることはありません。税務調査では3年以上前まで遡って調査し、追徴課税することができるため、税務調査の連絡が来た頃には多額の課税が発生していたというケースも決して珍しくないのです。

まとめ:「無申告でもバレない」は危険な考え

インターネットビジネスは電子送金が基本のため全て記録が残ります。また再生回数等である程度予想ができてしまうため誤魔化すことは難しいものです。YouTubeによる収益やその他インターネットによる収入が年間どの位になっているか、所得がいくらになるかによって、確定申告が必要かどうか決まります。

 

最近はとくにインターネットビジネスの調査に国税庁が力を入れているため、無申告を放置していても良いことはありません。逆に言えば、正しい申告ができていれば、税務署を必要以上に怖れる必要もないのです。

 

不安な場合はネットビジネスや個人事業主の確定申告のサポートに実績を持つ税理士に相談するなど、早めに正しい申告を行うようにしていきましょう。

 

 

税理士法人松本