(※画像はイメージです/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻で、世界の体制は大きく変わろうとしています。なかでも、それまで中立を保ってきた北欧2ヵ国への注目が集まっています。みていきましょう。

ウクライナ、EU加盟に前進か

EU加盟を目指すウクライナのゼレンスキー大統領は、6月11日、EC(欧州委員会)のフォン・デア・ライエン委員長と会談を行いました。会談後、フォン・デア・ライエン氏はECが同国のEU加盟を推薦するかどうかを来週までに評価すると発表。その判断に注目が集まっています。

 

ウクライナは今年4月に加盟基準に関するアンケートに回答して加盟意志を示した後、EU加盟への準備を進めてきました。6月10日にはゼレンスキー氏がフランスのマクロン大統領と電話会議を行うなど、徐々に進展が見られ始めています。

 

一方で、ウクライナの加盟に反対するEU加盟国もあります。デンマークは、ウクライナが民主主義、法治主義、人権保証に関する基準を十分に満たしていないことを警告する外交ノートを発行。特にマイノリティーの権利の保護と尊重が不十分であるとの見方を示しています。また、詳細は報じられていませんが、オランダも反対意見を表明しているようです。フォン・デア・ライエンン氏も、「法の支配を強化する取り組みが多く成されたが、汚職対策などの改革が必要だ」と指摘。加盟にはまだ課題がありそうです。

スウェーデン、フィンランドはNATO加盟へ

動きがあるのはEUばかりではありません。5月18日、スウェーデンとフィンランドとがNATO(北大西洋条約機構)への加盟を正式に申請しています。

 

両国はロシアからほど近く、特にフィンランドは国境を1,300kmもの長さに渡って接していることから、侵略に対する備えとしてNATO加盟を目指すことを決断。翌5月19日には、ジョー・バイデン米大統領がアメリカとして「全面的に、全て、完全に支持する」と述べたことで、加盟は一気に前進すると見られていました。

 

ところが、1ヶ月が経とうとする現在も、加盟に至っていません。障壁となっているのは、NATO加盟国であるトルコの反対です。NATOには全会一致原則があり、反対する国が一カ国でもあれば加盟は実現しません。トルコはこれを利用し、両国への要求を通そうとしています。両国には、トルコ国内でテロリストと指定されているクルド人政治活動家らが亡命しており、その引き渡しを要求しているのです。しかし、人権意識が高く、少数民族への人道支援を行ってきた両国としてはこれを拒否しています。

 

スウェーデンとフィンランドはともに高い軍事力を持ち、軍事同盟であるNATOとしては両国の加盟は歓迎すべき申し出です。そのため、加盟が承認されることはまず間違いないと見られていますが、トルコの出方次第でその進捗は大きく遅延しそうです。

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。