1. 不動産投資クラウドファンディングの基本説明
不動産クラウドファンディングとは、インターネット上で応募・契約が完結できる不動産投資のことです。
複数の投資家が1つの不動産に対して投資し、その資金を元に事業者が不動産の運営や管理をします。投資家は、その不動産運用によって生まれた収益から事業者を経由して、分配金を得られます。
インターネットを用いて少額で投資できる案件が多数あり、期間も短く設定されています。また、不動産管理の手間もなく、投資してからは入金を待つだけでよい手軽な投資方法です。
2. 不動産投資クラウドファンディングの2つの分類
不動産投資クラウドファンディングには、主に2つの型があります。種類によって副業としてのおすすめ度が異なるため、投資の際はどちらであるかを確認しましょう。
2.1. 投資するだけの「匿名組合型」
匿名組合型とは、お金を投資するだけで完結する、登記手続きの発生しない契約方法です。登記されないため、投資家に物件の所有権はありません。
匿名組合型では、複数の投資家がお金を出資し、その資金を元に事業者が不動産の管理と運営をします。そこで発生した利益を投資家へと還元する仕組みです。
現状、不動産投資クラウドファンディングのほとんどがこの形式を採用しています。
投資家が実際に不動産を保有することはないため、後述する副業禁止の原則に引っ掛からない範囲で投資できます。そのため、副業としては匿名組合型がおすすめです。
2.2. 実質保有する「任意組合型」
任意組合型は、投資家が不動産の一部を保有する形式です。複数人の投資家と事業者が連名して不動産の保有者になり、事業者が代表して管理します。
登記簿に投資家の名前も記名されるため、実際に投資家自身が不動産の保有をしている扱いとされます。
副業として、任意組合型はおすすめしません。特に公務員の人は、500万円以上の売上を伴う不動産運営は禁止されているか、あるいは許可を得る必要があります。
たとえ1人分の収入が低くても、共有名義での不動産運営においては、物件全体での収入が考慮されます。任意組合型は500万円のボーダーに引っ掛かる可能性が高く、原則副業禁止の組織では高リスクな投資法です。
不動産クラウドファンディングとして公開されている案件に任意組合型はほとんどないため、以降では匿名組合型に絞ってご紹介します。
3. 不動産投資クラウドファンディングを副業にするメリット
投資を副業とするうえで、不動産投資クラウドファンディングを選択するメリットはさまざまです。ここでは、5つのメリットを紹介します。
3.1. 少額から投資できる
不動産投資クラウドファンディングには、最も安い案件で1万円から投資できるものがあります。高額な投資に抵抗がある方には、特におすすめです。普段働いて得たお金で、少し浮いた分を投資に回せるため、投資を気軽に開始できます。
また前述のとおり、運用期間も数ヵ月〜1年以内の案件が多いため、短期的な運用でも利益を得られます。
もちろん、案件によっては数万円から10万円単位の高額なものも存在し、高額な分だけ得られるリターンは大きくなります。そのため、自分の投資スタイルにあった規模を選択できます。
3.2. 管理の手間がかからない
不動産クラウドファンディングの投資家は物件を所有するわけではないため、管理の手間がかかりません。投資先を選択して金額を振り込んだあとは、利益が還元されることを待つだけです。
入居者の募集や建物の清掃など、不動産の運用・管理は事業者がすべて行います。匿名組合型では、投資額以外の初期費用や運用費も発生しません。
また、投資の流れをすべてスマートフォンやパソコンの操作だけで完結できます。投資する行程も時間と手間がかからないため、副業として非常におすすめです。
3.3. 公務員でも許可なしで投資できる
匿名組合型においては、基本的に副業禁止のルールに引っ掛かりません。そのため、公務員でも許可なく投資可能です。
ただし、運用の仕方によっては規則に抵触する可能性があります。特に、任意匿名型は規定に触れる可能性が高いため、副業禁止の職に就いている人は避けることをおすすめします。
3.4. 流動性の低さが副業のメリットにつながる
不動産投資クラウドファンディングでは基本、運用期間中には換金ができません。そのため、資産価値が下がってもリスク回避が不可能です。
逆に考えると、株式やFXと比較して、価格変動を常にチェックする必要がありません。
そもそも不動産投資クラウドファンディングには、資産価値の下がりにくい商品が多く出品されています。相場確認に時間を取られず、本職に影響が出づらい安定した投資方法といえます。
3.5. 投資自体が社会貢献へつながる
不動産投資クラウドファンディングの案件は、運営している事業者によって多種多様です。案件によっては、社会貢献性の高いものも存在します。
- 地方の旅館や施設:地域復興の手助け
- 海外の学校:貧困国の教育支援
特に公務員の人が社会貢献できれば、公益のために勤務すると定められている国家公務員法96条に準ずる結果になります。
よって、社会貢献も可能であるこの投資方法は、公務員の副業向きといえます。
4. 確定申告の必要性について
雑所得が年間20万円を超えた場合は、確定申告をしなければなりません。
不動産投資クラウドファンディングで得る利息分は、雑所得に含まれます。また、FXや株式の取引で得た金額、年金収入なども雑所得の対象です。年間の雑所得を合計して、20万円を超えるかどうかを確認しましょう。
ふるさと納税を受ける人や青色申告の人は、確定申告が必須です。投資で得た利益の金額に関係なく必要なため、各自怠らないようにしましょう。
5. 民間企業における副業の取り扱い|就業規則
民間企業における副業の取り扱いは、就業規則によって定められています。各自勤め先で定められている規則を確認することで、不動産投資クラウドファンディングが禁止されているかどうかの確認が可能です。
また、厚生労働省からは「モデル就業規則」が公開されています。モデル就業規則とは、各事業者が就業規則を制定する際に参考となるよう作られたものです。その第14章の副業・兼業において「本職に支障をきたさなければ、原則副業を可能にする」といった旨が記載されています。
6. 公務員は不動産投資クラウドファンディングを副業にできるのか?
公務員は原則、副業が禁止されています。一方で、株式やFXなどの資産運用における投資は認められています。
そのため、不動産投資クラウドファンディングも資産運用の範囲であれば可能です。匿名組合型であれば、許可を取る必要もありません。
ただし、運用の仕方によっては公務員のルールに抵触する可能性があります。気になるようであれば、就業先の人事に問い合わせることが最も確実な方法です。
7. 公務員における副業の取り扱い|国家公務員法と地方公務員法
公務員は不動産投資クラウドファンディングをしても問題ないと今まで記載してきました。
では、具体的に公務員において副業はどう取り扱われているのでしょうか?
ここでは、副業の取り扱いについて法的根拠を元に解説します。
7.1. 副業禁止の根拠
公務員が副業禁止とされている法的な根拠は、国家公務員法と地方公務員法の2つの法によって確認できます。
- 国家公務員法第103条:営利目的の私企業経営、および兼職禁止
- 国家公務員法第104条:非営利の事業に従事するときは内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要
- 地方公務員法第38条:許可なしに営利企業の私企業経営、および兼職禁止
以上3つの記載から判断され、公務員の副業が禁止されています。
7.2. 副業禁止の3原則
副業禁止の法的根拠とは別に、副業を禁止する名目として3つの原則が定められています。
また、以下の3原則は国家公務員法、地方公務員法どちらにも同じ内容が記載されています。
- 国家公務員法第99条・地方公務員法第33条:信用失墜行為の禁止
- 国家公務員法第100条・地方公務員法第34条:守秘義務
- 国家公務員法第101条・地方公務員法第35条:職務専念の義務
公務員は以上の原則を守るために、副業が禁止されています。
8. 公務員の副業が許可される例
前述のように、公務員は原則副業が禁止されている一方で、一部の副業は認められています。ただし、本職と利害関係がなく、副業禁止の3原則に抵触しない場合のみです。
この項目では、副業が許可される例を具体的に挙げます。
8.1. 株式やFXなどの投資
株式やFXなどの投資は、資産形成の範囲であればそもそも副業扱いになりません。基本的に、積極的な資産形成は国を挙げて推奨されています(参考:金融庁『「職場つみたてNISA」の取組みの現状』)。
不動産投資クラウドファンディングの匿名組合型は、この部類に属すると考えられています。
8.2. 小規模な農業
規模の小さな農業であれば、副業であっても認められています。具体的には、自分たちの食べる分だけ作物を育てているようなケースです。
営利目的の運用や、大規模な農業は不可です。また、家族の農業を手伝う範囲でも問題ありません。
8.3. 一定範囲内の不動産経営
年額収入500万円以内の不動産系であれば、申請の必要なく経営が可能です。
ただし、実際の運営を他の事業者に任せるか、本職に影響の範囲でなければなりません。500万円を超える、もしくは一定規模以上の不動産経営は認められません。
もしも大きな不動産を遺産相続した場合、勤め先の上長に申請しましょう。申請したうえで、運営を誰かに任せなければなりません。
8.4. 太陽光電気の販売
太陽光電気の販売は、副業として認められています。ただし、一定規格内でなければなりません。
収入が大きい、もしくは大規模な販売は副業として認められていません。
8.5. 単発の講演会
単発で行われた講演の謝礼や原稿料の受領は禁止されていません。労働した対価として継続的に収入を得る場合は許可されていませんが、継続性がないものは認められています。
一方で、一定以上の役職に属する人は、5,000円以上の講演料を受領した際には報告義務があります。
8.6. 雑誌掲載や自筆の出版
雑誌掲載や、自筆の出版をした際、原稿料や印税を受け取ることも原則認められています。ただし、公務員の守秘義務に違反してはならないため、上長へ事前に確認することが万全です。
また、連載を持つと定期的に対価を得る行為とみなされるため、許可が必須です。
9. 副業扱いされ禁止される例
不動産クラウドファンディングを中心に副業として認められる例を挙げてきました。では実際に、禁止される副業はどのような例があるのでしょうか。
9.1. 別の事業者で被雇用者となる
本職の勤め先とは別の事業者で雇われるような働き方は、兼職禁止のルールにより不可能です(前述した副業禁止の根拠)。
たとえば、公務員の仕事帰り、夜の空き時間にコンビニやファストフード店でアルバイトすることは禁止されています。また、公務員でなく民間企業であっても、禁止されている事業者はあります。
雇われバイトをする際は、念のため許可を取ったほうがよいでしょう。
9.2. 自営業を営む
公務員は、自営業を営むことも禁止されています。ただし、自営業と認められない範囲であれば問題はありません。
たとえば、個人の食料を賄う程度の小規模農園や、実家の手伝いが挙げられます。新しく企業を立ち上げて経営することも、私企業経営に該当し違反になります(前述した副業禁止の根拠)。
親から大規模な農場を引き継いだときには、申請のうえで誰かに経営を任せなければなりません。
9.3. 共有名義により不動産賃貸を経営する
副業であっても、年間500万円以内の不動産経営であれば認められると前述しました。
一方で、その基準を満たしていても認められない例が、不動産を共有名義で経営しているケースです。
たとえば、複数人でマンションを共同管理し、1人年間100万円、全体で600万円の家賃収入があるとします。500万円のボーダーは物件全体で考えられているため、600万円の収入とみなされ基準を超えてしまいます。
遺産で不動産を引き継ぎ、親族内で共有名義の運用になったときは基準を超えている可能性があるため、申請をしましょう。
また、不動産投資クラウドファンディングの任意組合型も、この例に該当する可能性があります。
10. 一部地方公務員は副業を解禁
公務員は副業禁止が原則である一方、近年、副業解禁の動きが見られつつあります。
兵庫県神戸市、奈良県生駒市、長崎県新富町の各自治体で、それぞれ副業を認めると報じられました。働き方改革の影響を受けた名目もあり、各地方の活性化を目的としたものです。
一方で、認められた副業は公益性の高い職のみに留まっています。例を挙げると、NPO団体、スポーツのコーチや教育に携わる職です。
まだ解禁の例は少なく、職も限られていますが、これからさらに解禁の動きは広がる可能性があります。
11. まとめ
不動産投資クラウドファンディングは、副業とすることに向いた投資方法です。インターネットで手軽に行えて、少額で投資ができます。投資後の手間も一切かかりません。公務員と民間企業の社員、どちらであってもおすすめできます。
一方で、形式によっては副業禁止ルールに抵触する可能性があります。
投資方法や投資先がどのような案件であるかを確認しながら、不動産投資クラウドファンディングを利用してはいかがでしょうか。