日米、1,500ドル(約18万円)で借りられる部屋は?
新生活が始まる4月は引っ越しシーズンでもありますが、特に遠距離の引っ越しをする場合、以前住んでいたエリアと引っ越し先エリアの家賃の「差」を感じる人も多いのではないでしょうか。
某大手賃貸メディアによると、日本国内でもっとも賃貸相場が高価格帯なエリアは東京都港区(2022年4月7日時点)。一つの指標として1,500ドル(約18万円台)を基準に見てみると、港区で同価格で借りられる最も狭い部屋は25㎡。最も広い部屋は約68㎡でした。
一方、政令指定都市の中で特に家賃が安いと言われる札幌市や福岡市では、同価格でそれぞれ約56〜117㎡程度、約49㎡〜200㎡程度の部屋を見つけることができました。
日本国内でも都市によって家賃にこれほど大きな差があるわけですが、アメリカの都市間における家賃の幅はどの程度のものなのでしょうか?
1,500ドルで借りられる面積が最も広いのは?
米国全土の賃貸を検索できるサービス「RentCafe」が公開した興味深い記事があります。
タイトルは「How Much Apartment Space Does $1,500 Get You in America’s 100 Largest Cities(米国100大都市で、1,500ドルでどれだけの広さの家が借りられるか比較してみた)」という記事*。「RentCafe」掲載中の物件データのなかから、50戸以上の集合住宅の情報を抜粋し、都市ごとの平均家賃と平均面積から1平方フィート(約0.09㎡)あたりの家賃単価を算出し、比較した記事です。
* RentCafe「How Much Apartment Space Does $1,500 Get You in America’s 100 Largest Cities」2022-03-24
https://www.rentcafe.com/blog/apartmentliving/rental-space-for-1500/
この記事を読むと、アメリカの各都市間における家賃相場には、港区と福岡市をはるかに超える大きな「差」が存在していることがわかります。
調査対象の都市のうち、1,500ドルで借りられる面積が最も広かったのはカンザス州ウィチタの1,597平方フィート(約148.36㎡)。ウィチタは、アメリカのほぼ中央に位置するカンザス州最大の都市で、2020年時点の人口は約40万人。日本でいうと千葉県柏市や宮崎県宮崎市と同程度の人口規模です。
かつては牧畜産業に支えられ「カウタウン」とも呼ばれていた都市ですが、現在はそこから派生した食品加工業や、小型航空機の製造なども盛んで、交通の要所としても知られています。決して田舎とはいえない都市ですが、アメリカの都市のなかではリーズナブルな家賃水準を保っています。
2~5位にランクインしたのは、オハイオ州トレド(1,482平方フィート)、オクラホマ州タルサ(1,447平方フィート)、オクラホマ州オクラホマシティ(1,431平方フィート)、インディアナ州フォートウェイン(1,356平方フィート)。いずれもアメリカ中部の内陸州の都市で、内陸エリアは総じて家賃相場がリーズナブルであることがわかります。
最も狭いのはマンハッタン、価格差はウィチタの約6倍
一方、1,500ドルで借りられる面積が最も狭かったのは、世界一地価の高い都市としても知られるニューヨーク州マンハッタンです。
月1,500ドルを支払って借りられる面積はわずか262平方フィート(約24.34㎡)で、ウィチタと比較するとその差はなんと6倍以上。同じ国とは思えないほどの価格差・面積差となっています。
さらに驚くのは、この価格はマンハッタンにおける平均の面積単価であること。港区で1,500ドルで借りられる部屋の最低面積が25㎡であると冒頭で述べましたが、言い換えるならこれは、「もっとも面積単価が高い」部屋が25㎡ということでもあります。つまり、マンハッタンの平均面積単価は、港区の最高値と同水準レベルであることを表していると言えるでしょう。
1,500ドルで借りられる面積が狭い都市の2〜5位は、マサチューセッツ州サンフランシスコ(345平方フィート)、マサチューセッツ州ボストン(340平方フィート)、ニューヨーク州ブルックリン(357平方フィート)、ニューヨーク州クイーンズ(399平方フィート)。共通するのは、いずれも沿岸部の人気都市であること。マンハッタンほどではなくとも、いずれの都市も400平方フィート(約37.16㎡)を割り込んでいます。
コロナ禍を機に都市部から郊外へ、海から山へ、というような新たな住宅ニーズが高まりを見せていますが、この傾向がさらに続けば、沿岸部と内陸部の家賃差は少しずつ縮まっていく可能性も考えられます。とはいえ、最大6倍の家賃差を覆すのは、なかなか難しいことでもあり、依然としてアメリカにおける「海高山低」の家賃傾向は引き続き、継続することになりそうです。