(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年4月現在、急激な円安と世界的なドル高が進行していますが、どのような影響を与えるものなのでしょうか。みていきましょう。

円安の急激な進行と世界的に加速するドル高傾向

ここ最近の円安の急激な進行を気にされている方は多いかもしれません。2021年4月時点では1ドル=108円前後だった水準が、2022年4月19日には129円台となり、たった1年で2割弱ほど円の価値が下落した結果となっています。

 

この円安の問題は、対ドルに限った話ではありません。対ユーロにおいても6年10ヶ月ぶりに一時140円台(2022年4月21日時点)に突入したほか、対ポンドも6年2ヶ月ぶり一時168円台(2022年4月20日時点)に乗るなど、全方位的に円が弱くなっています。

 

これとは対照的に、ドルは対外的な強さを高めており、円に対しては言わずもがな、対ユーロにおいてもここ1年で約13%上昇。過去2年間の最高値に達しています。このような急速なドル高には一体どのような理由があるのでしょうか。

いち早く利上げに踏み切ったことがドル高の要因に?

日本の論調では、「日本円に下落要因があったから円安に陥ってしまった」という分析が一般的です。

 

その具体理由としては、慢性化する貿易赤字や、他国と比べての程成長率などが挙げられます。ユーロ安も同様で、EUの弱体化の結果だとする分析が主流です。エネルギー価格が上昇するなかで、資源を輸入に依存していたことがその要因として挙げられることが多く、その潜在的リスクが、ウクライナ危機によって一気に可視化されたとする見方も多いようです。

 

一方、アメリカの専門家は少し違った評価をしています。彼らの主張に見られるのが、円やユーロが弱くなったこと以上に、ドルが強くなった、すなわちドルがより多く買われるようになったのだ、という論調です。

 

そのロジックを見てみましょう。コロナ禍による世界的な金融緩和のなかで、アメリカはいち早く利上げを敢行。利上げを行うとドル建ての各種金融商品の金利も上昇します。実際に米国債券10年物の利回りは、2022年初頭の1.60%から2022年4月22日時点で2.90%へと急上昇しました。

 

こうしたことによって「預金金利も上昇するのでは?」という期待感も市場に生まれ、利回りのいい商品を好む投資家の買いがドル建て商品に集まり、結果としてドルが高くなったという分析です。

過度なドル高が日本やEUの経済に与える影響

では、このドル高は、はたして他国にどのような影響を与えるのでしょうか?

 

かつての日本では、輸出産業に有利な点から適度な円安が好まれていました。

 

しかし、貿易赤字国となった現在では、円安はデメリットのほうが大きくなっています。特に問題なのが、日本が非資源国である点。日本は原材料の供給のほとんどを輸入に依存しているため、ドル高になると仕入れ原価が上昇してしまうのです。その結果、物価自体も上昇せざるをえず、消費者への圧迫にもつながります。企業も同様で、かつては円安の恩恵を受けていた輸出産業ですら、この円安によって原材料の価格高騰に苦しむ事態となっています。

 

ちなみに、EUも日本と同様にエネルギー資源を輸入に頼っていますが、ウクライナ危機によって、資源の供給源として重要な位置を占めていたロシアと取引ができなくなっています。EU各国は新しい供給路の確保に動いていますが、その取引がドル建てで行われることはまず間違いなく、EU圏におけるドル高は今後ますます進行することが予想されます。

アメリカにとってもデメリットは存在する

とはいえ、ドル高によってアメリカの一人勝ち状態が生まれるかというと、決してそうではありません。

 

なぜなら、アメリカにもまた、輸出企業や海外で事業を展開する会社が数多く存在し、それらの企業はドル高によって海外売上の数字も下がります。そうなると必然的に株価も下がるため、投資家たちにも悪影響を及ぼす可能性が大いに考えられます。企業側も、多少の為替変動に対してはリスクヘッジを行なっているものの、個々の企業の自衛策には限度があるため、ドル高が行き過ぎるとアメリカの産業構造に亀裂が走る可能性も考えられるでしょう。

 

しかし、ドル高の主な要因と考えられている利上げをストップすることは当面は難しいと思われます。なぜなら今回の利上げは、アメリカ市民を苦しめるインフレを食い止めるための施策としてあるからです。特にアメリカは今年11月に中間選挙を控えており、低迷している支持率を少しでも回復させたいと考えているバイデン政権は、市民からの支持を獲得するためにも、インフレ抑制の手をゆるめるわけにはいかない事情もあります。

 

ドルの強さを大きく左右するアメリカの金融政策ですが、不動産投資に関わる方も、今後の動向をぜひ注視しておきたいところです。

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。