1. 不動産クラウドファンディングとは
不動産クラウドファンディングとは、インターネットを通じて少額から不動産に投資できる新しい投資手法です。一般的なクラウドファンディングの仕組みを不動産投資に活用した投資手法であり、投資家は資金を出し不動産の収益を配当金として受け取ることができます。
不動産クラウドファンディングには、以下のような特徴があります。
- 平均的な利回りは約3〜8%
- 分配金がもらえる頻度は、「1年に1回」「半年に1回」「償還時のみ」などファンドによって異なる
- 運用期間は数か月〜数年
1.1. 不動産クラウドファンディングの仕組み
不動産クラウドファンディングの仕組みは以下のとおりです。
- 不動産クラウドファンディング事業者が不特定多数の投資家から資金を募る。
- 不動産クラウドファンディング事業者が集めた資金で不動産を購入し運用する。
- 売却益や家賃収入などの利益を投資家へ分配する。
ファンド選びから契約・入金、配当金の受け取りまで、取引はすべてオンラインで完結します。一口1万円からはじめられるファンドも多く、不動産の購入・運用・管理も事業者が行うため、投資家は運用状況をチェックしながら配当金の分配を待つだけです。
1.2. 他の投資手法と異なる点
不動産投資には他にも、「現物不動産投資」と「J-REIT」などの種類があります。
現物不動産投資は、不動産クラウドファンディング同様、自分で物件を選べます。購入する不動産を担保に融資の借り入れができる点は、不動産クラウドファンディングにはないメリットです。しかし、最低でも数百万円の投資金が必要です。修繕・管理や入居者管理の手間もかかります。
J-REITは、不動産クラウドファンディング同様、少額から投資できます。アパートやマンションだけでなくホテルやオフィスなど、多様な物件に投資できる点も特徴です。ただし、物件の選定はプロがするため、どの物件に投資するかまでは自分で選べません。
不動産クラウドファンディングは、自分で選んだ物件のみの投資です。しかし、J-REITは複数の物件に投資できるため、リスク分散が可能です。
J-REITは、証券市場が開いている時間中はいつでも売買できます。一方、不動産クラウドファンディングは、運用期間中、売却や中途解約できません。
2. 不動産クラウドファンディングのメリット
不動産クラウドファンディングには、主に8つのメリットがあります。
- 小額から始められる
- 比較的高い利回りを期待できる
- リスクを減らせる仕組みがある
- 価格変動が少ない
- 自分で投資物件を選べる
- 現物不動産投資と比較して手間がかからない
- 社会貢献につながる
- 投資家同士でつながりが生まれる
詳しくご紹介します。
2.1. 小額から始められる
不動産クラウドファンディングのメリットは、1万円という少額から不動産投資ができる点です。J-REITも数万円から始められる銘柄もありますが、半数以上の銘柄は数十万円以上であるため、予算が少額の場合は選択肢が多くありません。
不動産クラウドファンディングは、一口1万円から投資できる物件がたくさんあります。そのため、「不動産投に興味はあるが、投資に使えるお金があまりない方」「いきなり大金を投資することが不安な投資初心者」におすすめの投資方法です。
2.2. 比較的高い利回りを期待できる
不動産クラウドファンディングは、銀行の普通預金と比べて高い利回りが期待できます。
普通預金の平均年利率は、大体0.001%程度です。100,000円預けても、1年でわずか1円の利息しかもらえません。
一方、不動産クラウドファンディングの想定利回りは、ファンドによって異なりますが約3〜8%が一般的です。仮に想定利回りが5%、運用期間1年のファンドに100,000円投資したとすると、5,000円の利回りを期待できます。
2.3. リスクを減らせるシステムがある
不動産クラウドファンディングは、「優先劣後出資」や「マスターリース契約」というリスクを軽減できるシステムがあります。ファンドによっては設定されていないこともあるため、ファンド選びの際に確認しておくとよいでしょう。
2.3.1. 優先劣後出資
優先劣後出資とは、投資家の資金が元本割れするリスクを軽減するためのシステムです。
優先劣後出資において、投資家だけでなく事業者も一定の出資をします。万が一、不動産運用で損失が出た場合、事業者の出資金から先に損失に充てられ、それでも足りない場合にのみ投資家の出資金が使われるため、元本割れするリスクが低減します。
また、収益が見込みよりも少なくなっても、賃料や売却による利益は優先して投資家に配当されることも特徴です。
ちなみに、優先劣後出資の出資割合は、事業者や案件によって異なります。
2.3.2. マスターリース契約
マスターリース契約は、投資物件の入室状況に左右されず、毎月一定の収益を得られるシステムです。
マスターリースとは、「一括借り上げ」を意味し、投資家と事業者の間で結ばれる賃貸借契約です。事業者は第三者に転貸することを目的に不動産オーナーから不動産を借ります。
マンションやアパートなどの不動産投資には借り手・買い手が見つからない「空室リスク」があります。空室になると賃料収入が減少し、投資家の配当も減ることになります。しかし、マスターリース契約を結べば、そのようなリスクを回避し、安定した配当を得ることができます。
2.4. 価格変動が少ない
不動産クラウドファンディングは、不動産の価格は株式投資や投資信託に比べて日々の価格変動が少ないことも特徴です。
ただし、確実に元本を保証するものではありません。 リーマンショックのように不動産価格が暴落したときは、元本割れするリスクもあります。
また、万が一事業者が倒産した場合は、投資金が返還されないリスクがあることも理解しておきましょう。
2.5. 自分で投資物件を選べる
不動産クラウドファンディングは、不動産のプロが選んだ募集案件から投資する物件を自分で選べます。
住居用マンションから大型商業施設・空き家対策事業などさまざまな案件があります。自分の投資したい案件を自分で選べることは、不動産クラウドファンディングの魅力です。
また、一つの物件だけでなく、複数の募集案件から複数応募できるため、分散投資によってリスクが軽減できる点もメリットです。
2.6. 現物不動産投資と比較して手間がかからない
不動産クラウドファンディングの取引はすべてオンラインで完結するため、手間がかかりません。ファンド事業者選びから、物件選び、契約、配当の受け取りまですべてスマートフォンやパソコンから簡単にできます。
現物不動産投資のように銀行の融資に申し込んだり、入居者を募集したりする必要もありません。
また、投資した物件の管理・運用は不動産クラウドファンディング事業者が行います。ハウスクリーニングや設備の修理・建物の修繕など、現物不動産で必要なことをすべて任せられる点は大きなメリットでしょう。
2.7. 社会貢献につながる
全国で社会問題になっている空き家や遊休不動産に投資することで社会貢献できる点も、不動産クラウドファンディングの特徴です。
遊休不動産として使われなくなった古民家をファンドで集めた資金を基にリノベーションし、宿泊施設や地域交流の場として再生させたケースもあります。
幼稚園や保育園に投資し、少子化対策に貢献することもできます。他にも災害復興や発展途上国の貧困、環境問題など社会に貢献できる案件はさまざまです。
2.8. 投資家どうしでつながりが生まれる
不動産クラウドファンディングは、不特定多数の投資家が同じ物件に投資するため、投資家同士でつながりが生まれることもあります。
SNSで不動産投資に関する情報共有したり、実際に集まって情報交換したりできます。
特に不動産投資初心者は、不動産投資の悩みは多いでしょう。そのため、同じ物件に投資した投資家仲間や先輩投資家に悩みを共有・相談できることは、心強いはずです。投資家同士のつながりは、必ず投資家としての成長につながります。
3. 不動産クラウドファンディングのデメリット
メリットが多い不動産クラウドファンディング。しかし、メリットばかりではありません。
3.1. 元本割れのリスク
不動産クラウドファンディングの価格変動は他の投資と比べて安定していますが、元本割れのリスクがあります。不動産価格が下がったり、空室で家賃収入が減少したりすれば、「利回りが想定より少なくなる」「元本割れが発生する」可能性もあります。
3.2. 収益性が低い
少額投資ができる反面、収益性がそれほど高くないこともデメリットです。そのため、ハイリターンを望む人にとっては物足りない投資といえるでしょう。
3.3. 途中で解約できない
不動産クラウドファンディングは、運用期間が最初から決められています。運用期間中に解約・譲渡したくなっても、多くのファンドでは中途解約を認めていません。事業者によっては解約できますが、多くのケースで解約手数料がかかります。
3.4. 人気の案件は応募できない
人気の案件には応募が殺到し、すぐに募集金額に達して応募が締め切られることがあります。人気の案件は応募開始前から告知されるため、応募開始前からチェックしておくとよいでしょう。
4. 不動産投資クラウドファンディング業者を選ぶポイント
投資する案件を選ぶ前に、事業者を選ばなければなりません。ここでは、事業者を選ぶ4つのポイントを紹介します。
4.1. 信頼性があるか
不動産クラウドファンディング事業者が信頼できるかどうかは、選ぶうえで重要なポイントです。万が一、投資した事業者が倒産した場合、出資金が返金されないリスクがあります。確実に信頼できる事業者を選びましょう。
信頼性がある会社か見極めるポイントは、以下の5つです。
- 証券取引所に上場している会社、またはそのグループ会社
- 大手企業から出資を受けている
- 経営状態や財務状況がよい、または安定している
- 不動産クラウドファンディングの実績が多い
- 元本割れ・貸し倒れの実績がない
4.2. 取扱件数の多さ
取扱件数や物件の種類の豊富さも選ぶポイントの一つです。
申込み方法には「先着順」と「抽選」があります。案件数が少ないと「すぐに募集金額に達して応募できない」「なかなか抽選に当たらない」という場合もあります。投資しようとしても応募できない・当選せず投資できない状況が続くと、モチベーションも下がってしまいます。
投資の選択肢を増やすために、案件数が多い事業者を選びましょう。
4.3. 情報開示は適切か
適正な案件を選ぶためにも、情報開示が適切かどうかも事業者選びのポイントの一つです。案件の情報は物件のメリットだけでなく、リスクを把握する材料として使えます。
「住所」「築年数」「面積」「建ぺい率」だけでなく、「周辺環境」「立地」「都市計画」「建物の現状」なども投資案件を決めるうえで重要な要素です。利回りや運用期間だけでなく、適切に情報開示している業者を選びましょう。
4.4. 問題発生時の対応
比較的安定した投資の不動産クラウドファンディング。しかし、不動産投資であるためリスクはあります。万が一、貸し倒れや延滞などの問題が発生した場合に、迅速に対応してくれる事業者を選ぶこともポイントです。貸し倒れが起きたときに売却などによって資金を回収できる担保付きの案件もあります。
過去にトラブルが起きた際にどのようなサポート体制があったか、迅速に対応したか、あらかじめ調べておくことをおすすめします。
5. メリットから見るおすすめの不動産クラウドファンディング業者3選
不動産クラウドファンディングを扱う事業者の数は年々増えています。数が多すぎてどこを選べばよいのかわからないという方に、オススメの事業者を3つ紹介します。
5.1. COZUCHI|中途解約ができる
1999年創業のLAETOLI株式会社が運営する不動産クラウドファンディング「COZUCHI」。
優先劣後方式が採用されており、不動産価値が下がったとしても、プロの出資分から損失を補填してくれる仕組みが備わっています。劣後出資割合平均55.27%は、不動産クラウドファンディング業界でもトップクラス。
ファンドの途中解約が可能であるため、いつでも換金できます。また、利回り上限が設定されておらず、フェアに利益を分配するため、高い利回りを期待できることも嬉しいポイントです。
5.2. 利回り君|社会貢献できるプランが豊富
不動産投資で社会貢献や地域創生を応援できる案件が豊富な、株式会社シーラが運営している「利回りくん」。堀江貴文氏が立ち上げたベンチャー企業のロケット開発事業など、著名人とのコラボ案件も扱っています。
利回りくんは、優先劣後出資方式を採用しているため、損失が出たとしても5%までは事業者が負担してくれます。
不動産投資をしながら誰かの夢を応援したい方、社会貢献したい方にオススメの不動産クラウドファンディング事業者です。
5.3. FANTAS funding|案件数が豊富
FANTAS technology株式会社が運営する不動産クラウドファンディング「FANTAS funding」。
FANTAS fundingの特徴は、募集案件が多いことです。多くの事業者は募集案件が年10件未満に対し、FANTAS fundingは年平均50件を超えます。そのため、多くの選択肢から自分にあった案件を見つけられる、複数の案件に応募できる、などのメリットがあります。
優先劣後出資方式を採用しており、すべての案件で20%の出資をしているため、元本割れのリスクが低いことも特徴です。
6. まとめ
本記事で紹介した重要な点をまとめます。
- 不動産クラウドファンディングは一口1万円からはじめられる新しい不動産投資の仕組み
- 元本割れのリスクはあるため「優先劣後出資方式」の仕組みがある事業者を選ぶ
- 現物不動産投資に比べて手続きや運用にかかる手間が少ない
- 事業者は「信頼性」「物件数」「情報開示の適切さ」「問題発生時の迅速な対応の有無」をポイントに選ぶ
不動産クラウドファンディングを始めるときに参考にしてください。