(※画像はイメージです/PIXTA)

オフマーケット(Off Market)は直訳すると「市場から離れた場所」という意味の言葉ですが、市場の外で行われる取引を指す用語として金融業界で広く使われています。今回はオープンハウスのウェルス・マネジメント事業部が、不動産における頻出用語「オフマーケット」について解説します。

オンマーケットとオフマーケットの違いとは?

金融商品をオープンに取引できる場所のことをマーケットと呼びますが、一般的にマーケットのなかで行われる取引を「オンマーケット」、外で行われる取引を「オフマーケット」と呼びます。

 

株式市場でたとえるなら、東京証券取引所やNASDAQなどがマーケット。そのような証券取引所を通しての売り買いがオンマーケットで、それ以外の取引(創業して間もないスタートアップに資金を提供するエンジェル投資や、相続などによる株式譲渡など)がオフマーケットということになります。

 

不動産取引の場合は、不動産事業者たちの物件情報共有ネットワークがマーケットの役割を果たします。

 

日本ではレインズ(REINS:Real Estate Information Network System)がそれに当たり、不動産事業者は自社に持ち込まれた不動産情報をレインズに登録し、全国の不動産事業者とその情報を共有。そうすることで、買い手がスピーディーに見つかったり、人気物件の場合は価格上昇も期待できたりと、売り手にとっても仲介する不動産会社にとっても、さまざまなメリットが得られます。

 

つまり、不動産におけるオンマーケット取引とは「物件情報共有ネットワークに掲載された物件の取引」を指すといって差し支えないでしょう。

掘り出し物の物件も集まる「オフマーケット」

一方、不動産におけるオフマーケット取引は、ネットワークに情報を掲載しないクローズドな取引になります。仲介会社が自社の顧客リストを元に、買い手にコンタクトを取るようなケースが多いようです。

 

一見、物件情報共有ネットワークに情報を掲載した方が取引の効率性は高いようにも思えますが、あえてクローズドで行うオフマーケット取引には、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

売り手の立場になって考えると、オフマーケット取引の利点がわかります。ネットワークに情報を公開することで、物件を売りに出している事実や、おおよその金額が公開されてしまうデメリットもあり、とりわけ大きな金額が動く不動産取引において、そうした情報が公開されることを忌避する人も多いのです。

 

また、家のなかの写真を公開することに抵抗感を感じる人や、そのために行う掃除やメンテナンスを手間と感じる人も多く、こうしたことから、プライバシーを守りながら、最小限の手間で家を手放したいと思う人が、オフマーケットでの取引を希望すると考えられます。

 

もちろん、オフマーケットでの取引は、オンマーケットに比べて圧倒的に売りづらいため、それを補う魅力を備えた物件でないと成約に至りにくいのがネック。逆にいうとオフマーケットには、他の類似物件に比べて大幅に安かったり、通常はなかなか見つからないユニークな物件が見つかることも多く「買い手目線で掘り出し物件を探すならオフマーケット」という人もいるようです。

粗悪な物件があることも…オフマーケット取引は慎重に

オフマーケット取引は不動産投資初心者が安易に手を出すには、リスクがある側面もあり、特にアメリカのオフマーケットは日本以上にリスキーといわれています。

 

アメリカにもレインズのようなサービスがあり、最もよく知られているのはMLS(Multiple Listing Service)です。これは全米で800以上の不動産事業者が利用するサービスで、加盟事業者は自社の扱う物件に情報更新があった場合、24時間以内にMLSに登録することを義務付けられています。

 

不動産事業者しか閲覧できないレインズとは違い、MLSは「Zillow」や「Redfin」などのサービスを通して広く公開されています。また、不動産売買が活発なアメリカでは、「売りに出していることを知られたくない」という売り手は日本ほど多くはないようです。

 

こうした事情から、アメリカではオフマーケットの取引比率が日本よりも少なく、抵当権が複雑な物件や、メンテナンスをしても付加価値が出ないような物件など、オープンなマーケットでは取引しづらい“傷物”のような物件と出会うケースもしばしばあります。

 

「一般市場に出回らない秘密の物件」などと謳われると、魅力的に感じてしまいがちですが、粗悪な物件を買ってしまわないようオフマーケット取引を行う場合は十分に注意を払いたいものです。

 

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。