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統計に見る、“この10年間で「賃金が増加した人」”
近年の賃金の推移をたどっていけば、賃金が増えないという主張は必ずしも現状を正確に表したものとはいえない。賃金が増えていないことをもって日本の未来に対して鬱屈とした気持ちを持つ人もいるが、未来はそこまでに暗くはないのである。
さらに、属性別に賃金の変化を丁寧にみていけば、その人の有する属性によって様相がだいぶ変わることがわかる。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」は、10人以上の事業所に勤める労働者の賃金の動向を調査している。現在の年齢区分で賃金が集計されるようになったのが2008年。その2008年から2018年までの10年間における性・年齢別の賃金の動向を分析してみよう([図表1]参照)。
なお、2009年にはリーマンショックによる景気悪化を受けて賃金が急減していたため、ここではその前の年である2008年と2018年の10年間での比較としている。
[図表1]を見ると、労働者がどの性・年齢の区分に該当するかによって、賃金の変化が大きく異なっていることがわかる。
この10年間で賃金が増加したのは女性である。女性の賃金変化をみると、45〜49歳で10.3%増、50〜54歳で13.1%増、55〜59歳で17.7%増、60〜64歳で12.9%増など、特に中堅から高齢にかけての層で大きく増加している様子が認められる。区分によっては、この10年間で10%以上賃金が上昇しているのだ。
この結果から、現代日本においても、十分に賃金増加の恩恵にあずかっている人がいることが確認できる。現代の女性が過去の女性と比較して多くの収入を稼いでいるということは多くの会社で広範にみられる現象だ。実感としても、この結果に違和感を持つ人はおそらくいないであろう。