現役世代がかかえる、漠然とした老後不安。その解決のためには「いくら」あればいいのでしょうか? 現役世代への意識調査と、実際の高齢世帯の暮らしぶりを比較してみていきます。
老後資金「夫婦で最低22万円」「ゆとりを考えて36万円」…本当にそんなに必要か? (※写真はイメージです/PIXTA)

「いくらあれば老後は安心できる?」に現役世代の回答は

不安が先行する老後の生活に対して、いったいいくらあればいいのでしょうか。同調査で最低限の老後資金を尋ねたところ、平均月22.1万円。さらにゆとりある老後生活のためにいくら必要か尋ねたところ、平均は14.0万円。つまり平均36.1万円あれば、ゆとりある生活が送れると考えています。「定年を迎えたら……」とどこの家庭でも一度はしたことのある会話。その実現のためには、36万円は必要と考えているわけです。

 

【老後の最低日常生活費】

「15万円未満」5.9%

「15万~20万円未満」13.0%

「20万~25万円未満」29.4%

「25万~30万円未満」13.1%

「30万~40万円未満」17.0%

「40万円以上」1.9%

「わからない」19.6%

 

【老後のゆとりのための上乗せ額】

「10万円未満」20.6%

「10万~15万円未満」33.9%

「15万~20万円未満」4.9%

「20万~25万円未満」8.3%

「25万~30万円未満」2.1%

「30万円未満」10.6%

「ゆとりある老後生活を送るつもりはない」1.5%

「わからない」18.1%

 

出所:公益財団法人生命保険文化センター『令和元年度生活保障に関する調査』より

余裕ある老後に36万円…いったい何に使うつもりなのか?

――余裕のある老後を送るなら36万円

 

いったいゆとりのために、何をしようと(したい)と考えているのでしょうか。同調査でその使い道を尋ねたところ、6割が「旅行やレジャー」、5割が「趣味や教養」と回答。

 

【老後のゆとりのための上乗せ額の使途】

「旅行やレジャー」60.7%

「趣味や教養」51.1%

「日常生活費の充実」49.6%

「身内とのつきあい」48.8%

「耐久消費財の買い替え」30.0%

「子どもや孫への資金援助」22.4%

「隣人や友人とのつきあい」15.5%

「とりあえず貯蓄」3.7%

 

出所:公益財団法人生命保険文化センター『令和元年度生活保障に関する調査』より

 

総務省『家計調査家計収支編』(2020年)で高齢者夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上のみの無職世帯)の平均的な家計をみていくと、実収入は23万7,659円、そのうち公的年金は21万5,288円。また実支出は27万0,929円、そのうち消費支出は23万9,947円。黒字額は-3万3,269円でした。

 

赤字かどうかはさておき、支出27万円のなかには、旅行や趣味のための支出である「教育娯楽費」、月2万4,804円も含んでいます。高齢夫婦の平均的な家計が余裕があるのか、それとも余裕がないのか、判断は分かれるところですが、余生を楽しんでいる様子が家計収支からもみてとれます。

 

老後、余裕がある暮らしを考えるなら36万円はほしい……は、あくまでも現役世代のイメージ。それよりも10万円ほど老後資金が少なくても、十分楽しい余生を過ごせている、というのが現状です。