本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年11月25日に公開したレポートを転載したものです。
北米・英国の子どもの誕生日パーティー事情…お子さんの誕生日会はいくらかかりましたか? (写真はイメージです/PIXTA)

3―日本の誕生日会は?

では、日本の家庭では子どもの誕生日会にいくら費やすのだろうか。米国や英国と比べて調査自体が少ないためあくまで参考値ではあるが、育児情報サイト「あんふぁん」※1が読者150人を対象とした「誕生日会の規模」の調査※2をみると、全体の82%が家族だけで祝うと回答しており、友達を招待する家庭は18%であった。そのため、開催するパーティー自体も北米や英国と異なり、ピエロや過度な装飾も必要もないことから、“0~3,000円”が25%、“3,001~5,000円”が42%、“5,001~10,000円”が27%、10,001~15,000円“が6%と、5,000円代が最も多い。また、株式会社ベネッセコーポレーションが1,323人を対象にした「家族のお祝いとは別に「誕生会」をしますか?」という調査※3では、全体の92%が友達と誕生日会を開催しないと回答している。

※1 幼稚園で配布されているフリーマガジンであるため、主な読者層は3~6歳児をもつ保護者である。

※2 あんふぁんWeb「子どもの誕生日、友だち招待派は2割以下!? 費用1万円以上は少数派!?」2015/11/09

https://enfant.living.jp/mama/mamnews/hayashimika/305530/

※3 株式会社ベネッセコーポレーション「92%が「誕生日会」を友達とはやらない、と回答」2009/03/19

https://benesse.jp/kyouiku/200903/20090319-2a.html

 

[図表1]家族のお祝いとは別に「誕生会」をしますか? (N:1,323, 単位%)

 

この背景には、「共働きの家庭が増えた」、「放課後は習い事や塾などで友達同士が集まりづらくなった」など、家庭(生活)環境が要因にあると考えられるが、そもそも私たちの生活を振り返った時、あなたは年間何回のホームパーティーを開催しているだろうか?

 

私自身は全く開くことはないし、呼ばれることもない。読者の皆さんもそうではないだろうか。そうです。我々日本人はホームパーティー慣れしていないのだ。例えば北米ではクリスマス、感謝祭、復活祭などのイベントはもちろん、幼少期からSlumber party(パジャマパーティ)や、教会や地域コミュニティでのPotluck party(持ち寄り型パーティー)、両親が不在の時の羽目を外しすぎるホームパーティーなど、パーティーを開くという文化の中で子どもたちは育っていく。

 

また、その親も日々の生活の中でパーティーをしながら育ってきたのである。家庭環境の違いはもちろんあるが、パーティー慣れをしているか、いないかという文化の違いが大きな要因なのである。

4―なぜ子どもは豪華な誕生日パーティーを開きたいのか

もちろん、保護者の子どもの誕生日を祝いたいという気持ちが大前提にあるが、それ以外の要因もあると筆者は考える。まず、子どもにとっては「プレゼントをたくさんもらえる」、「豪勢な方が楽しい」といった直接的な効用が動機にあるのは確かであるが、誕生日パーティーの質が自身のスクールカーストの階層に直結するため、人より豪華に、人より楽しいパーティーを開きたいと考える子どもも多いのではないかと、筆者は考える。

 

残念ながら日本にもイケてるグループとイケていないグループといった形でスクールカーストと呼ばれる学校内やクラス内における人気の序列が存在している。しかし、特に北米におけるスクールカースト(英語ではSchool clique)はより顕著なもので、カーストが上位であるほど学校生活は充実したものとなり、カーストが下の者ほどイジメの対象となってしまう。

 

Jock(ジョック)と呼ばれるアメフトやバスケットボールのスター選手が学校の中心で、Queen bee(クイーン ビー)と呼ばれるチアリーダーやお洒落な女の子がその周りにいて、Nerd(ナード)やTarget(ターゲット)と呼ばれる人気のない学生が彼らにいじめられるという、学校内の人間関係模様を洋画やドラマで見たことのある読者もいるのではないだろうか。

 

子どもたちにとっては、如何に人気者と仲良くするか、如何に自分をイケてるやつだと他の生徒たちにアピールできるかが重要であり、誕生日パーティーはこれをアピールできる絶好の機会なのである。

 

従って、人気者ほど呼ばれる誕生日会の数は多く、誕生日会のクオリティを比較することができるため、子どもたちは人気者にアピールできるように他の子どもよりもいっそう豪華に、楽しいパーティーを開催することを親にねだる。また、親世代にとっても自身も同様の経験をしてきたことであり、子どもの気持ちがわかることから、極力叶えてあげたいと思うわけである。