いま、子どもには、自分のやりたいことへの「探求力」が必要とされています。終身雇用・年功序列のレールに乗っていれば安心、という時代は過ぎ去ったためです。学校教育でも注目されている「探求」について、教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「優秀な大学を出ているのに…」呆れられるワカモノ頻出も当然のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

しかし…これまでの教育を受けてきたワカモノの悲惨

しかし、これまで学校で行われてきたのは、このAIに取って代わられるような人間を育成する教育でした。

 

教科書に書かれている正しいとされる知識を覚えて、テストでそれを正確に再現できるかに偏りがちで、答えが一つではない問題に対して、「なぜ?」を繰り返し、異なる意見を持つ人と対話しながら、自分なりの答えを導き出す訓練をする機会は、学校教育の中にはほとんどありませんでした。

 

もちろん、全国どこでも一定のレベルの教育が受けられる日本の学校教育は世界でも高く評価されていて、すばらしい面もたくさんあります。

 

しかし、変化のスピードが加速している今、4年に1回しか改訂されない教科書の内容は、すでに古くなっている可能性が高いですし、知識だけなら検索すればいくらでもでてきます。これからは、そこにある情報を活用して、自分の考えを持ち、それを人とシェアしながら納得できる解を導き出すことが求められるのです。

 

一方、社会に出てくるワカモノたちはというと、「優秀な大学を出ていても、自分で考えて行動できなくて困る」などといわれている現実があります。

 

でも、自分で行動できないのは、そのワカモノたちのせいではないですよね。だって、これまで、「本当は何をしたいのか」を考える機会も十分に与えられないまま、目の前の受験を突破する勉強に追われ、正解が決まってない問いについて、意見を出し合いながら考えるなんていう練習もできず、大人になってしまったのですから。

 

でも、それではVUCAな時代を生き抜いていくことはできませんし、国の維持すら危うい……。

 

そんな社会の変化と学校教育のギャップを解消するために、2000年代にはいってから「教育を変えよう」という動きが起きてきて、ようやく日本の教育も変わろうとする中で「探究」がクローズアップされているのです。

 

 

中曽根 陽子

マザークエスト 代表/教育ジャーナリスト