日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は「平均年金受給額」について見ていきます。
夫婦の年金額「2040年に25万円、2060年に32万円」…国の試算に疑問符 ※画像はイメージです/PIXTA

政府による将来年金額のシミュレーション…そんなに順調にいくこと、ある?

ケースⅠ~Ⅵのうち、Ⅰ、Ⅲ、Ⅴの3つのケースについて、夫婦の年金額を見ていきましょう。なお下記の予想年金受給額は、40年間、夫に男性の平均的な収入が継続してあり、妻は専業主婦という夫婦で試算しています。

 

実質経済成長率0.9%とするケースⅠの場合、2040年、現役男子の手取り収入は46.1万円で、夫婦の年金額は25.0万円。2060年、現役男子の手取り収入は62.9万円で、夫婦の年金額は32.7万円と試算しています(関連記事:『20年後、30年後の年金額は?「夫婦の年金額」政府によるシミュレーション』」。

 

実質経済成長率0.6%とするケースⅢの場合、2040年、現役男子の手取り収入は43.7万円で、夫婦の年金額は23.4万円。2060年、現役男子の手取り収入は27.6万円で、夫婦の年金額は32.7万円と試算しています。

 

実質経済成長率0.4%とするケースⅠの場合、2040年、現役男子の手取り収入は40.5万円で、夫婦の年金額は20.8万円。2060年、現役男子の手取り収入は46.7万円で、夫婦の年金額は20.8万円と試算しています。

 

2040年であれば、いま40代の人たちの年金受給が始まるころ、2060年であれば、いま20代の人たちの年金受給が始まるころ。

 

――自分たちの年金、うまくいけば25.0万円くらいかあ(40代夫婦)

――私たちの年金、順調にいけば30万円を超えそうね(20代夫婦)

 

そう考える人がいる一方で、疑問を覚える人もいるでしょう。

 

――そもそも手取り収入はそんなにあがるのだろうか。

 

ケースⅤでは、男性の手取り給与が、20年で月額5万円、40年で月額10万円、増えた場合を想定します。国税庁『民間給与実態統計調査』によると、2001年454万000円だった会社員の平均給与は、以降、ITバブルやリーマンショックなどにより、前年比マイナスを連発。2009年に405万9000円にまで下落。その後、アベノミクスの効果もあり、平均給与は増加傾向になりますが、直近の2019年は前年比99.0%で436万4000円。20年で3.8%のマイナスを記録しています(関連記事:『戦後70年…会社員の平均年収の推移』)。

 

特に、大卒新入社員のころから「給与がなかなかあがらない」とぼやいてきた40代会社員にとって、「給与があがる」ということに懐疑的に見る人も多いでしょう。だからこそ、上記のシミュレーションが、あまりに甘い見通しだと、疑問を抱く人がいても当然です。

 

今回見てきた資料は、あくまでもシミュレーションであり、現実は異なることに留意しなけばなりません。新型コロナウイルス感染のように、想定外のことは意外と頻繁に起こるもの。そのような不測の事態に常に備えて将来設計しておくことが重要です。