「そんなにきちんと片づけができる子どもっていますか?」
「うちの子は片づけができないんです。よいしつけ方はありますか?」
ママからこんな相談を受けることがあります。あいさつができない。片づけができない。時間を守れない。学力以外にも多くのママさんが不満を持ち、イライラの誘因となるのが「あいさつ」「片づけ」「時間」の3点セットです。
こんなとき、私は決まって聞き返します。
「そんなにきちんと片づけができる子どもっていますか? 子どもって、みんなできないものですよ」
多くのママは「うちの子はできない」と嘆いて、できないことをすぐに問題視しがちです。しかし、そもそも子どもって、片づけができないものなんです。
片づけが早い子どもをときどき見かけますが、その子は「片づけ上手」が長所なのでしょう。そんな子どものママは、しっかり長所を褒めてあげるのがよい。とはいえ、大半の子どもは、片づけができません。
子どもは大人とは違って、発展途上の未熟な生物です。空気を読まず、よけいな忖度もせず、好きなことや楽しいことだけに向かってエネルギーを注ぎます。やりたいことだけをやり、イヤなことはやりたくない、正直だけで生きています。片づけやあいさつ、時間を守ることだって、できないのが子どもの当たり前=スタンダードなのです。
そんな「できなくて当たり前の子ども」に向かって、今日もお小言をぶつけていませんか?
「どうしてあいさつができないの!」
「いつになったら宿題をやるの!」
「また、靴下が脱ぎっぱなし!」
大人でもそうですが、自分の短所(できないこと)は、だれに言われなくたって自分でよくわかっています。
「あいさつってちょっと面倒」
「どうやって片づけたらいいのかわからない」
「時間を守るのってむずかしい」
よく自覚しているからこそ、自分の「できないこと」を他人に指摘されると、腹が立つのです。
「そんなこと、言われなくたってわかってるよ、毎日うるさいな!」
子どもは、心のなかでこんな言葉を反芻しています。
ほら、短所是正をしたところで、子どもが自分の思うとおりにはならないことが、よくわかるでしょう。立腹しているとき、他人の言うことを素直に受け入れられないのは、大人だって同じです。
子どもはできないのが当たり前なのだ、そう意識を変えて、今日から子どもを見直してみてください。イライラした風景が、ずいぶん変わって見えませんか?
石田 勝紀
教育評論家