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よく耳にする言葉「卵は1つのカゴに盛るな」の通り、リスク分散のため、多くの投資家から「分散投資」が推奨されています。しかし、その一方で「分散投資には意味がない」とその有効性に疑問を唱える人も一定数存在します。分散投資に疑問を唱える否定派の主張は、どのようなものなのでしょうか。 本記事では、オープンハウスのウェルス・マネジメント事業部が「分散投資」の有用性について考察します。

「分散投資」否定派の主張は一体どのようなものなのか

投資をしている人、あるいは投資に興味を持っている人なら「卵は1つのカゴに盛るな」という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。

 

卵を1つのカゴに集めて入れると、そのカゴを落としたときにすべて割れてしまう可能性があります。一方、複数のカゴに分けて入れておくとリスク分散になることから、それを引き合いに、分散投資を推奨する格言として知られています。

 

この言葉は、投資の世界で古くから語り継がれている言葉でもあり、それだけ分散投資の考え方が長い歴史を持ち、多くの人に支持されていることを示しているといえるでしょう。

 

しかし、その一方で「分散投資には意味がない」とその有効性に疑問を唱える人も一定数存在します。分散投資に疑問を唱える否定派の主張とは、一体どのようなものなのでしょうか? また、それは果たして正しい主張といえるのでしょうか?

分散投資「リスクもリターンも小さい」は本当だが…

分散投資に疑問を唱える多くの人が主張するのが、分散投資はリスクも小さくなるが、その分リターンも小さくなるという点。この意見は一面では正しいといえるでしょう。

 

たとえば、全資産の100%を投資商品Aに集中させている人は、Aの価格が半分に下落すれば資産も半分になってしまいますが、価格が2倍になれば資産も2倍になります。

 

一方、全資産の50%を投資商品Aに投資した人は、Aの価格が半分に下落しても資産は25%しか減りません。しかし、Aの価格が2倍になっても資産は1.5倍にしか増えないことにもなります。

 

実際の分散投資においては、逆の値動きをする商品を組み合わせて買うのが定石なので、実際の資産変動はもっとゆるやかになる傾向があります。こうした資産の変動が小さい点は分散投資のメリットであり、同時にデメリットでもあるので、短期的に大きなリターンを狙う人には確かに向かない投資方法です。

 

しかし、投資には必ずリターンとリスクの両面があり、資産を築くには「増やす」だけでなく「減らさない」ということも両立する必要があります。つまり「増やす」という一側面からのみジャッジするのは、いささか短慮な見方だと言え、特にそこまで豊富な知識を持たない一般投資家にとっては、それはなおさらです。

一般の投資家にとっては現実的かつ安全な運用手段

もうひとつ、分散投資への否定的な意見として特に玄人投資家が主張するのは、多くの投資先(銘柄)を持つことで、自分の資産を細かく管理することが難しくなるという点です。

 

“投資の神様”とも称されるウォーレン・バフェットも「分散投資にはほとんど意味がない」という意味の言葉を残しています。数十にも及ぶ複数の銘柄を持つより、数銘柄を大量に持つのがバフェット氏の投資スタイルの特徴です。

 

こうした主張自体は確かに正しく、常に最新の市場情報を収集し、状況に応じて利にかなった投資を行おうとするなら、その分、時間やリソースを割く必要があるため、そう多くの銘柄は扱えないでしょう。しかし、そこまでの徹底したリサーチと、数多ある銘柄のなかから将来有望な銘柄を見抜くことができるのは、豊富な知識を持つ専業の投資家だからこそとも言えます。

 

本業の合間に資産運用を行うような一般の人にとっては、銘柄の数が多かろうが少なかろうが、プロの投資家並みに精度の高い分析をするのは難しく、下手に少数銘柄に集中投資する方が、かえってリスクとなることもあります。そういった意味で、ある程度放っておいてもリスクが少ない分散投資は、一般の投資家にとって現実的かつ安全な運用手段だと見ることもできるでしょう。

分散投資のデメリットはメリットとみなすこともできる

分散投資に否定的な人が主張する代表的なデメリットをここまで2つ取り上げてきましたが、そこで指摘されている分散投資のデメリットは、いずれもメリットの裏返しと見ることもでき、長所と捉えるか短所と捉えるかは、投資を行う人次第とも言えます。

 

ひとつ確実なのは、投資の腕に確かな自信がある人以外には、分散投資は堅実かつ無難な投資手法であるということ。投資初心者や、損をしたくない人、投資に多くの時間をかけられない人などには、分散投資は有効な投資戦略だといえるでしょう。

 

本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。