早期退職をして悠々自適な暮らしを送りたい……。そう思ったことのある会社員は多いのではないでしょうか。しかし早期退職後にはバラ色の日々が待っているのでしょうか。55歳で早期退職制度に応募したという男性を例に、定年前に自由を手に入れた会社員のその後を見ていきます。
年収1200万円・55歳会社員…「退職金1000万円上乗せで早期退職」のキツい現実 ※画像はイメージです/PIXTA

55歳で早期退職を実現するには、いくらあればいいのか?

――世界中を旅するのが夢だった

 

現在、東京都内に在住の66歳の男性。さかのぼること10年ほど前、55歳で早期退職をしたといいます。当時、大学新卒から働き続けたという会社で部長職、年収は1200万円ほどだったとか。会社の業績は悪くなかったものの、従業員の高齢化、管理職のポスト不足が顕在化。人材の若返りを図ることを目的に、51歳以上の従業員を対象として早期退職者を募集することになったといいます。男性がその制度に応募することになった決め手は、1000万円の退職金の上乗せでした。

 

――55歳で会社を辞めたとしたら、年金がもらえるようになるのは10年後……貯蓄額を考慮すると、5年早く会社を辞めても夫婦でやっていけると判断しました。

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和2年』によると、50歳代の平均金融資産保有額は1684万円。男性の貯蓄はそれ以上だとして、さらに1000万円上乗せされた早期退職金がプラスされたと考えると、確かにお金まわりの不安はなく、世界を旅する夢も年金生活が始まる前に叶えられそうな水準だったのかもしれません。

 

【年代別「金融資産平均保有額」】

20歳代 平均値292万円/中央値135万円

30歳代 平均値591万円/中央値400万円

40歳代 平均値1012万円/中央値520万円

50歳代 平均値1684万円/中央値800万円

60歳代 平均値1745万円/中央値875万円

70歳代 平均値1786万円/中央値1000万円

 

出所:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和2年』

 

実際にどれくらいの貯蓄があれば、55歳で早期退職が実現するのでしょうか。総務省『家計調査 家計収支編 2020年』2人以上・世帯主無職世帯の家計の状況から考えてみましょう。

 

世帯主無職・59歳以下世帯の実支出は28万6219円、60~64歳では30万9511円。単純計算、年金を受け取るまでの10年間で、3574万3800円が必要となります。貯蓄と退職金でそれ以上の資産があることが、55歳で早期退職をするひとつの条件といえるでしょう。

 

【「世帯主無職・59歳以下」世帯の家計収支】

■実収入 22万5217円

■実支出 28万6219円

「消費支出」2万52397円

 食料 6万0420円

 住居 3万2007円

 光熱・水道 2万0277円

 家具・家事用品 1万0639円

 被服及び履物 7615円

 保健医療 1万3686円

 交通・通信 3万0201円

 教育 1万0535円

 教養娯楽 2万2784円

 その他の消費支出 4万4233円

「非消費支出(直接税、社会保険料等」3万3822円

 

【「世帯主無職・60~64歳」世帯の家計収支】

■実収入 23万7313円

■実支出 30万9511円

「消費支出」2万72108円

 食料 7万6604円

 住居 2万0957円

 光熱・水道 2万2274円

 家具・家事用品 1万1516円

 被服及び履物 7794円

 保健医療 1万6765円

 交通・通信 3万6863円

 教育 2059円

 教養娯楽 2万3823円

 その他の消費支出 5万3451円

「非消費支出(直接税、社会保険料等」3万7403円

 

出所:総務省『家計調査家計収支編2020年』二人以上世帯/勤労世帯より

※数値はそれぞれの項目の平均値。加算しても実収入、実支出にはならない

※(かっこ)ない数値は全国平均