日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、「現役時代と定年後の収入ギャップ」を考えていきます。
年金だけじゃ暮らせない…平均受給額「14万4064円」に高齢者の苦悩 ※画像はイメージです/PIXTA

現役時代と定年後の収入ギャップ…日本は世界的に見ても差が大きい

このように現役時代の収入と年金給付額とのギャップによる不満ですが、世界的にはどうなのでしょうか。OECDの資料から「退職前の所得と年金給付額の比率」を見ていくと、主要な50ヵ国中、最もギャップが少ないのが「インド」で94.80%。引退前と後と、ほとんど同じだけの収入を得ているといえます。「トルコ」は93.80%、「アルゼンチン」が92.80%と続きます(関連記事:『世界主要国「退職前と退職後の収入ギャプ」ベスト20』)。

 

【退職前所得に対する年金給付額の比率】

1位 インド(94.80%)

2位 トルコ(93.80%)

3位 アルゼンチン(92.80%)

4位 イタリア(91.80%)

5位 ルクセンブルク(90.10%)

6位 オーストリア(89.90%)

7位 ポルトガル(89.60%)

8位 ブルガリア(89.30%)

9位 ハンガリー(84.30%)

10位 スペイン(83.40%)

 

出所:OECD

※所得は手取り額、年金は強制加入年金と加入率が85%以上になる準強制加入の年金が対象

 

先進七ヵ国で見てみると、4位「イタリア」91.8%、14位「フランス」73.6%、31位「ドイツ」51.9%、34位「カナダ」50.7%、35位「米国」49.4%、43位「日本」36.8%、48位「英国」28.4%。

 

現役時代の収入が多ければ年金額とのギャップは大きくなると考えられますが、「ルクセンブルク」や「オーストリア」などの国が上位にはいっているので、一概にそうはいえませんし、それぞれ政策が異なるので、単純に現役時代の収入とのギャップで、老後の生活状況を評価することはできません。ただ日本は現役時代と年金生活時代の収入ギャップが激しい国のひとつ、ということは確かなようです。

 

前述の総務省『家計調査家計収支編2020年』で、無職高齢者世帯の黒字額は月々2394円とありましたが、同調査で「世帯主60~64歳の勤労世帯」を見ていくと、「月々の実収入」が48万7267円で「消費支出」は29万3806円、「黒字額」は月々10万4197円。このようなギャップもまた、「こんなに年金が少ないなんて」という驚きに繋がっているのでしょう。

 

現役時代と定年後のギャップにより生まれる老後不安。少子高齢化が進む日本で、これ以上、年金額が増える見込みはありませんから、不安解消のためには現役時代にどれだけコツコツと資産形成にはげめるかにかかっているといえそうです。